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舞踏会
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その侯爵令嬢の舞踏会には秘密がある。
そこにやってくる貴族たちは、どうもこの令嬢と婚約したがる、いや、そういう風になっていくのだ。
一度、興味をもって参加してみるとよくわかる。そこには、アンと名付けられた辺鄙な侯爵令嬢が一人座っていて、舞踏会を主催しているのだ。
「ああ、ようこそいらっしゃいましたね。あなた様は……失礼ですが、初めてですか???」
「ええ、噂を聞きましてね、やって来たんですよ。お邪魔でしたかね???」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。初心者の方も大歓迎ですから!!!」
それを聞いて、僕は安心した。舞踏会というたいそうな名前がついているものだから、ほかにもたくさんの仲間がいて……その中にうずもれてしまったら、僕はとても嫌な心地がするのではないかと想像してしまうのだった。
「それでは……まずはこのエキスを吸っていただきましょうか???」
そう言って、アンが取り出したのは奇妙な香辛料……ああ、僕はなんとなくわかった。
そうだ、この世界にはもう一つあって、それが幻影なのだ。
この幻影に流されてしまうと……もう何も考えることができなくなる。
世の中がどれくらい広いのか、あるいは狭いのか……そんなことは大した問題ではないのだ……。
「ひどいですわ!!!私のことを嫌いになったの???もう婚約なんてやめてやりますわ!!!」
そうヒステリックに、アンは叫んでみる。いや、最初から誰も彼女と婚約した人間なんていないのだ。
そんな話が……このまま続くと、世間の人々は端的に述べれば被害者になってしまうのだ。
だから……それを避けるにはまた別の方策を考えるしかないのかもしれないのだ。
「だったら、こっちから婚約破棄してやる!!!」
「ええええっ??????どういうことですか????」
「どうもこうもないです!!!このまま終わりだ!!!!」
どうにも意味不明な世界……でも、しばらくは続くのかもしれない。
だから、僕はとりあえず、アンの住まう屋敷を壊しておいた。
そして、アンはもう一つの世界に閉じ込めておいた。
外の景色のいい平原で、僕は鉛のように一晩中踊り続けた。
これがなかなかいい塩梅だったりするのだ。
そこにやってくる貴族たちは、どうもこの令嬢と婚約したがる、いや、そういう風になっていくのだ。
一度、興味をもって参加してみるとよくわかる。そこには、アンと名付けられた辺鄙な侯爵令嬢が一人座っていて、舞踏会を主催しているのだ。
「ああ、ようこそいらっしゃいましたね。あなた様は……失礼ですが、初めてですか???」
「ええ、噂を聞きましてね、やって来たんですよ。お邪魔でしたかね???」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。初心者の方も大歓迎ですから!!!」
それを聞いて、僕は安心した。舞踏会というたいそうな名前がついているものだから、ほかにもたくさんの仲間がいて……その中にうずもれてしまったら、僕はとても嫌な心地がするのではないかと想像してしまうのだった。
「それでは……まずはこのエキスを吸っていただきましょうか???」
そう言って、アンが取り出したのは奇妙な香辛料……ああ、僕はなんとなくわかった。
そうだ、この世界にはもう一つあって、それが幻影なのだ。
この幻影に流されてしまうと……もう何も考えることができなくなる。
世の中がどれくらい広いのか、あるいは狭いのか……そんなことは大した問題ではないのだ……。
「ひどいですわ!!!私のことを嫌いになったの???もう婚約なんてやめてやりますわ!!!」
そうヒステリックに、アンは叫んでみる。いや、最初から誰も彼女と婚約した人間なんていないのだ。
そんな話が……このまま続くと、世間の人々は端的に述べれば被害者になってしまうのだ。
だから……それを避けるにはまた別の方策を考えるしかないのかもしれないのだ。
「だったら、こっちから婚約破棄してやる!!!」
「ええええっ??????どういうことですか????」
「どうもこうもないです!!!このまま終わりだ!!!!」
どうにも意味不明な世界……でも、しばらくは続くのかもしれない。
だから、僕はとりあえず、アンの住まう屋敷を壊しておいた。
そして、アンはもう一つの世界に閉じ込めておいた。
外の景色のいい平原で、僕は鉛のように一晩中踊り続けた。
これがなかなかいい塩梅だったりするのだ。
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