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「ああああああああっ……アンソニー様!!!!!」
アンソニー様を求めて叫ぶソーニャの声が聞こえました。
「いい加減あきらめたらどうだ。彼はもう君のことを忘れている」
エッシェンバッハ公爵がソーニャの相手をしているようでした。すごい、あんな大きなものが、ソーニャを貫いていると思うと……女はイチコロだと思いました。
「そんなことよりさぁ、私のものになってしまえばいいんじゃないかな」
エッシェンバッハ公爵は言いました。
「どうして、そんなひどいことが言えるの!!!!!」
「だって、この方が君だって満足できるんじゃないのかな???」
「そんなことはない!!!!!」
「もっと、素直になりなって……」
エッシェンバッハ公爵は言いました。
「いや、本当にもう止めて……」
「そこまでにしたらどうですか、エッシェンバッハ公爵……」
わたしはついに声をかけてしまいました。
「誰だ、わたしに声をかけているのは……」
エッシェンバッハ公爵が振り返ると……わたしがおりました。
「あなたは誰だ???」
最初は分からなかったのかもしれません。確かに昔何回か会ったことはありますが、随分と前のことですから、忘れてしまうのは当然だったのです。
「お忘れですか???公爵令嬢のクレアです」
「クレア???ああ、クレアか……」
ようやく思い出したようでした。
「待てよ……君は確か……!!!!!」
「ええ、その通りです。いまはアンソニー様の元に嫁いでおります」
エッシェンバッハ公爵はその場にひれ伏しました。皇帝陛下の妃という地位、これは揺るぎないものだったのです。
「公爵、お止め下さい。妃と言っても、そんなに偉くはないのですから」
「いいえ、とんでもございません!!!今までの不貞を……どうか、お許しくださいませ!!!!!」
エッシェンバッハ公爵は言いました。
「まあ、いいんですけど。じゃあ、これ以上ソーニャを傷つけませんか???」
「はい、いくらアンソニー様の命令とはいえ、もうこれ以上のことはいたしません!!!」
「そうですか、分かって頂けたのなら、何よりです……」
わたしはこう言って、今度はソーニャの方に歩み寄りました。
「あなた、どういうつもりなの???どうして、わざわざここまでやって来たの???」
「どうしてだと思う???」
「そんな余裕そうな顔をされると……一発殴りたくなってしまうわ……」
「あらあら……見かけによらず随分と狂暴なのね???」
「狂暴ですって???あなたのほうがよっぽど力持ちだと思うんだけど???」
「まあ、いいわ。わたしはね、恐らくあなたと同じようなことを考えている……要するにね、確かめたいのよ。アンソニー様が本当に私のことを愛しているのか、だってさ、私だって疑問を感じてしまうからね。あなたもそうだと思うけど、ええっと、アンソニー様!!!!!」
今度は、アンソニー様のいる方向に向かって叫びました。アンソニー様はと言うと、若いメイドたちを取り囲んで、ある種のハーレムを形成しておりました。
「クレア様、どうしてここに???」
彼を外側から取り囲んでいたのは、ベテランのメイドたちでした。彼女たちはアンソニー様の言いなりですから、自分たちの考えを持っておりません。命令された通りに生きているだけなのです。生きろと言われれば生きているし、死ねと言われたら死んでいく……王家に仕えるメイドとはそういうものなのです。
アンソニー様から与えられた仕事は、わたしをあの部屋に閉じ込めておくことだったはず……そのために万全の策をこうじたはずだったのでしょう。それが……こうしてすんなりと出てこられたものですから、まあ驚くのは当然のことでした。
「あなたたちには悪いけど……わたしは直接アンソニー様とお話がしたいのよ。悪いけど、そこをどいてくれるかしら???」
「それは、いくら妃様のご命令であっても、アンソニー様を守る観点から聞き入れることは出来ません!!!」
「あなたたちが守っている主人は、この場で一体何をしているのかしら???若いメイドたちと戯れているだけなんでしょう???くだらない……本当に私のことを愛しているって、言えるのかしら???ソーニャを相手にしているだけだったらまだ許せたかもしれない……でもね、ここまで多方面に手出ししていると考えると……いよいよ見過ごすわけにはいかないわよね……」
私は言いました。ベテランのメイドたちは、私の殺気じみた視線を感じて怖くなっているようでした。
「さあ、ここまで言ってもどかないとなると……あなたたちは相当バカってことになってしまうわよ。アンソニー様のことを心配するのは結構だけど、もう彼はすっかりダメになってしまった……ただ単純に私に対して安い愛を囁くだけのへなちょこ機械に代わってしまったのよ……」
女ならだれでもいい、魅力ある若い女なら、誰でも相手をする。
安い愛の犠牲になったのが、私やソーニャ……そして、若いメイドたち。ここまで来て、許すことが出来るでしょうか???私としては、許したくありませんでした。だとすれば、やることは一つしか残っておりませんでした。
「アンソニー様。直接話しましょう。さあ、この場で決着を付けようじゃないですか……」
私の提案に果たして乗って来るのか……不透明に見えましたが、アンソニー様は、
「何か言ったか???」
と一瞬私の方を見たのでした。
アンソニー様を求めて叫ぶソーニャの声が聞こえました。
「いい加減あきらめたらどうだ。彼はもう君のことを忘れている」
エッシェンバッハ公爵がソーニャの相手をしているようでした。すごい、あんな大きなものが、ソーニャを貫いていると思うと……女はイチコロだと思いました。
「そんなことよりさぁ、私のものになってしまえばいいんじゃないかな」
エッシェンバッハ公爵は言いました。
「どうして、そんなひどいことが言えるの!!!!!」
「だって、この方が君だって満足できるんじゃないのかな???」
「そんなことはない!!!!!」
「もっと、素直になりなって……」
エッシェンバッハ公爵は言いました。
「いや、本当にもう止めて……」
「そこまでにしたらどうですか、エッシェンバッハ公爵……」
わたしはついに声をかけてしまいました。
「誰だ、わたしに声をかけているのは……」
エッシェンバッハ公爵が振り返ると……わたしがおりました。
「あなたは誰だ???」
最初は分からなかったのかもしれません。確かに昔何回か会ったことはありますが、随分と前のことですから、忘れてしまうのは当然だったのです。
「お忘れですか???公爵令嬢のクレアです」
「クレア???ああ、クレアか……」
ようやく思い出したようでした。
「待てよ……君は確か……!!!!!」
「ええ、その通りです。いまはアンソニー様の元に嫁いでおります」
エッシェンバッハ公爵はその場にひれ伏しました。皇帝陛下の妃という地位、これは揺るぎないものだったのです。
「公爵、お止め下さい。妃と言っても、そんなに偉くはないのですから」
「いいえ、とんでもございません!!!今までの不貞を……どうか、お許しくださいませ!!!!!」
エッシェンバッハ公爵は言いました。
「まあ、いいんですけど。じゃあ、これ以上ソーニャを傷つけませんか???」
「はい、いくらアンソニー様の命令とはいえ、もうこれ以上のことはいたしません!!!」
「そうですか、分かって頂けたのなら、何よりです……」
わたしはこう言って、今度はソーニャの方に歩み寄りました。
「あなた、どういうつもりなの???どうして、わざわざここまでやって来たの???」
「どうしてだと思う???」
「そんな余裕そうな顔をされると……一発殴りたくなってしまうわ……」
「あらあら……見かけによらず随分と狂暴なのね???」
「狂暴ですって???あなたのほうがよっぽど力持ちだと思うんだけど???」
「まあ、いいわ。わたしはね、恐らくあなたと同じようなことを考えている……要するにね、確かめたいのよ。アンソニー様が本当に私のことを愛しているのか、だってさ、私だって疑問を感じてしまうからね。あなたもそうだと思うけど、ええっと、アンソニー様!!!!!」
今度は、アンソニー様のいる方向に向かって叫びました。アンソニー様はと言うと、若いメイドたちを取り囲んで、ある種のハーレムを形成しておりました。
「クレア様、どうしてここに???」
彼を外側から取り囲んでいたのは、ベテランのメイドたちでした。彼女たちはアンソニー様の言いなりですから、自分たちの考えを持っておりません。命令された通りに生きているだけなのです。生きろと言われれば生きているし、死ねと言われたら死んでいく……王家に仕えるメイドとはそういうものなのです。
アンソニー様から与えられた仕事は、わたしをあの部屋に閉じ込めておくことだったはず……そのために万全の策をこうじたはずだったのでしょう。それが……こうしてすんなりと出てこられたものですから、まあ驚くのは当然のことでした。
「あなたたちには悪いけど……わたしは直接アンソニー様とお話がしたいのよ。悪いけど、そこをどいてくれるかしら???」
「それは、いくら妃様のご命令であっても、アンソニー様を守る観点から聞き入れることは出来ません!!!」
「あなたたちが守っている主人は、この場で一体何をしているのかしら???若いメイドたちと戯れているだけなんでしょう???くだらない……本当に私のことを愛しているって、言えるのかしら???ソーニャを相手にしているだけだったらまだ許せたかもしれない……でもね、ここまで多方面に手出ししていると考えると……いよいよ見過ごすわけにはいかないわよね……」
私は言いました。ベテランのメイドたちは、私の殺気じみた視線を感じて怖くなっているようでした。
「さあ、ここまで言ってもどかないとなると……あなたたちは相当バカってことになってしまうわよ。アンソニー様のことを心配するのは結構だけど、もう彼はすっかりダメになってしまった……ただ単純に私に対して安い愛を囁くだけのへなちょこ機械に代わってしまったのよ……」
女ならだれでもいい、魅力ある若い女なら、誰でも相手をする。
安い愛の犠牲になったのが、私やソーニャ……そして、若いメイドたち。ここまで来て、許すことが出来るでしょうか???私としては、許したくありませんでした。だとすれば、やることは一つしか残っておりませんでした。
「アンソニー様。直接話しましょう。さあ、この場で決着を付けようじゃないですか……」
私の提案に果たして乗って来るのか……不透明に見えましたが、アンソニー様は、
「何か言ったか???」
と一瞬私の方を見たのでした。
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