15 / 17
15
しおりを挟む
私はとりあえず、自分の進むべき道を選択しました。彼が本当に私のことを愛しているか、それを確かめようと思いました。
「アンソニー様はどこにいらっしゃいますか」
もちろん反応はありませんでした。ですから、王宮の方へ向かって歩き始めたわけです。
「あれって、ひょっとするとお妃様じゃないかしら」
私の姿を見て気づく人もいたようでした。でも、私は何も答えませんでした。もしも、正確に正体がばれてしまったら、このまま歩き続けることが不可能なのではないかと考えたからです。
「確かに、どこかで見たことがあると思ったけど。あれは確かにお妃様でしょう」
噂であれば、それは問題ないようです。彼ら彼女たちの妄想の世界で終わってしまうから。でも、私が認めてしまったら、そこで人だかりができてしまいます。そして、私は引き返すしか選択肢がなくなってしまうわけです。
「どちらにいかれるのだろうか」
人々の関心を忘れることにはなりました。でも、私が過ぎ去ってしまったら、彼らにとってはまた日常が待っているだけなのです。
大部分の人にとっては、私はどうでもいい存在なのです。でも、私の正体を本当に知っている人にとってみれば、これは大変な問題であり、私の足を止める必要があったわけです。
「恐れながら、お妃様!!!!!」
これはちょっとまずいと思いました。最初はとぼけようと思いました。向こうがかわしてくれれば、それで問題ないと思ったからです。
「なんのことでしょうか。人違いではないですか。私はお妃様なんかではありませんよ」
「いいえ、そのような事は決してございません。あなた様はどこから見てもお妃様でございます……」
「そんなわけないですよ。お妃様がこんなところ歩いているわけないじゃないですか」
「普通に考えればそういうことになるでしょう。ですが、世の中には普通でないことも十分にあるわけです」
「そうだとしても、私はお妃様ではありませんよ。単なるさすらい人です」
「さすらい人だとしたら、これからどこへ行くんですか???王宮を警備する人間として確認する義務があります」
いちいちめんどくさいと思いました。ですが、これが彼らの仕事なわけです。ある意味、彼らの仕事を邪魔しているようなものですね。
「分りましたよ。では、正体をあかしましょう」
もちろん、名乗るつもりはありませんでした。何とかして、この場所から逃げようと思っておりました。
「公爵令嬢のマリアと申します。王宮会議メンバーであられるエッシェンバッハ公爵と面会するために参りました」
エッシェンバッハ公爵と言うのは、実在する貴族でした。アンソニー様の側近として絶大なる権力を持ってんだと言われております。実際、私は彼のことを知っておりました。もちろん、マリアと言う女はなかったでしょうけれど。
「エッシェンバッハ公爵と面会……わかりました。どうぞお通り下さい」
この程度のことで通してくれるんだとしたら、ずいぶん甘い警備だと思いました。もちろん、簡単に済めばそれで良いと言うわけなんですけれどもね。
「ひょっとして、あれはお妃様ではありませんか」
「そうかもしれないな。でも、本人が否定しているから、多分違うじゃないか。エッシェンバッハ公爵に会うと言っていたし」
「なるほど。それにしても、今日の会議はずいぶんと長いですね」
「確かに、本来ならとっくに終わっている時間だよな」
「何か紛糾しているんですかね」
「あの会議に限ってそんな事はないと思う」
「まあ、確かに。アンソニー様の独壇ですからね」
私はどんどん道を進みました。そして、会議の場所までようやくたどり着くことができました。そこには、たくさん知っている人たちがいました。彼女たちは私のことを見て驚いたはずです。
「クレア様???どうしてこちらに???」
メイドたちは驚いておりました。あの部屋から抜け出せたこと、そして、ここにいること。全てが不思議で仕方なかったのでしょう。皆さんが想像しているほど弱い人間では無いんですよ。
「アンソニー様はどこにいらっしゃいますか」
もちろん反応はありませんでした。ですから、王宮の方へ向かって歩き始めたわけです。
「あれって、ひょっとするとお妃様じゃないかしら」
私の姿を見て気づく人もいたようでした。でも、私は何も答えませんでした。もしも、正確に正体がばれてしまったら、このまま歩き続けることが不可能なのではないかと考えたからです。
「確かに、どこかで見たことがあると思ったけど。あれは確かにお妃様でしょう」
噂であれば、それは問題ないようです。彼ら彼女たちの妄想の世界で終わってしまうから。でも、私が認めてしまったら、そこで人だかりができてしまいます。そして、私は引き返すしか選択肢がなくなってしまうわけです。
「どちらにいかれるのだろうか」
人々の関心を忘れることにはなりました。でも、私が過ぎ去ってしまったら、彼らにとってはまた日常が待っているだけなのです。
大部分の人にとっては、私はどうでもいい存在なのです。でも、私の正体を本当に知っている人にとってみれば、これは大変な問題であり、私の足を止める必要があったわけです。
「恐れながら、お妃様!!!!!」
これはちょっとまずいと思いました。最初はとぼけようと思いました。向こうがかわしてくれれば、それで問題ないと思ったからです。
「なんのことでしょうか。人違いではないですか。私はお妃様なんかではありませんよ」
「いいえ、そのような事は決してございません。あなた様はどこから見てもお妃様でございます……」
「そんなわけないですよ。お妃様がこんなところ歩いているわけないじゃないですか」
「普通に考えればそういうことになるでしょう。ですが、世の中には普通でないことも十分にあるわけです」
「そうだとしても、私はお妃様ではありませんよ。単なるさすらい人です」
「さすらい人だとしたら、これからどこへ行くんですか???王宮を警備する人間として確認する義務があります」
いちいちめんどくさいと思いました。ですが、これが彼らの仕事なわけです。ある意味、彼らの仕事を邪魔しているようなものですね。
「分りましたよ。では、正体をあかしましょう」
もちろん、名乗るつもりはありませんでした。何とかして、この場所から逃げようと思っておりました。
「公爵令嬢のマリアと申します。王宮会議メンバーであられるエッシェンバッハ公爵と面会するために参りました」
エッシェンバッハ公爵と言うのは、実在する貴族でした。アンソニー様の側近として絶大なる権力を持ってんだと言われております。実際、私は彼のことを知っておりました。もちろん、マリアと言う女はなかったでしょうけれど。
「エッシェンバッハ公爵と面会……わかりました。どうぞお通り下さい」
この程度のことで通してくれるんだとしたら、ずいぶん甘い警備だと思いました。もちろん、簡単に済めばそれで良いと言うわけなんですけれどもね。
「ひょっとして、あれはお妃様ではありませんか」
「そうかもしれないな。でも、本人が否定しているから、多分違うじゃないか。エッシェンバッハ公爵に会うと言っていたし」
「なるほど。それにしても、今日の会議はずいぶんと長いですね」
「確かに、本来ならとっくに終わっている時間だよな」
「何か紛糾しているんですかね」
「あの会議に限ってそんな事はないと思う」
「まあ、確かに。アンソニー様の独壇ですからね」
私はどんどん道を進みました。そして、会議の場所までようやくたどり着くことができました。そこには、たくさん知っている人たちがいました。彼女たちは私のことを見て驚いたはずです。
「クレア様???どうしてこちらに???」
メイドたちは驚いておりました。あの部屋から抜け出せたこと、そして、ここにいること。全てが不思議で仕方なかったのでしょう。皆さんが想像しているほど弱い人間では無いんですよ。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉
海林檎
恋愛
※1月4日12時完結
全てが嘘でした。
貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。
婚約破棄できるように。
人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。
貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。
貴方とあの子の仲を取り持ったり····
私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
一体だれが悪いのか?それはわたしと言いました
LIN
恋愛
ある日、国民を苦しめて来たという悪女が処刑された。身分を笠に着て、好き勝手にしてきた第一王子の婚約者だった。理不尽に虐げられることもなくなり、ようやく平和が戻ったのだと、人々は喜んだ。
その後、第一王子は自分を支えてくれる優しい聖女と呼ばれる女性と結ばれ、国王になった。二人の優秀な側近に支えられて、三人の子供達にも恵まれ、幸せしか無いはずだった。
しかし、息子である第一王子が嘗ての悪女のように不正に金を使って豪遊していると報告を受けた国王は、王族からの追放を決めた。命を取らない事が温情だった。
追放されて何もかもを失った元第一王子は、王都から離れた。そして、その時の出会いが、彼の人生を大きく変えていくことになる…
※いきなり処刑から始まりますのでご注意ください。
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです
あなはにす
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」
伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる