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「追いつけない……そうなんですよ、私はどこまでやってもやっぱり、追いつかないんです……」

「あなたは……」

「お姉さま……もう何も言わないでください。私は……もう引き返すことのできないスイッチに触れてしまったようですわ。ねえ、ほら、サンダー様も殺気立ってる……そうなんですね。私はもうダメですね……」


「ソフィア殿……覚悟はできているんですね???」

私の背後からサンダー様がそう言った。

「お待ちください、サンダー様。もう少しお話を……」

「マリア殿。あなたが自分の妹を大切に思う気持ちは分かります。ですがね……それは私も同感なのです。ねえ、自分の妹を傷つけられてしまったら……どうしますか???」

「サンダー様!!!」

私はここまできて、もう一度大きな声になってしまった。

「ですから……もう止めましょう。全て……この私が悪かったことなのでしょう。だから……ソフィアを裁く前に、私のことを裁いてください。私が……全ての責任を背負いましょう……」

「そんな……あなたになんの責任がありましょうか???全てはソフィアの悪行……あなたに責任はありません」

「ならば、そう言うことにして下さい」

「それは出来ません。あなたは……私にとって大切なパートナーなのですから」



「本当にそう思っているのですか???」

私は思わず聞き返してしまった。

「当たり前でしょう。思っていないわけがない……」

「だって……でもそれは、魔法で私を操作した後の話でしょう???」

あてはなかった。もちろん、私の主張が全てはったりになる可能性もあった。でも、これまでの経緯を考えると、あながち間違っていないように思えた。

「結局は……私を使って、魔法を使って……都合のいい伴侶を作りたかっただけなんじゃないんですか???」


「マリア様!!!あなた様まで、お兄様と敵対するおつもりですか!!!」

アンネ様が怒った。怒りたい気持ちは分かる。でも、私の怒りはそれ以上だった。


「そもそも、あの懐かしい日常を失ってしまったのは……それが悲劇となってしまったのは……私たちが姉妹として生まれてきたこと……そして、男たちに利用され続けたこと……なのかもしれません」


ここまでしてソフィアを擁護しようと思ったのは……単純に私がソフィアの姉であるから、ってだけのことじゃなかった。多分……今まで生きてきたたくさんの令嬢が、同じことを考えてきたのだと思った。

でも、それに関して声を大にして主張する機会がなかなかないから……仕方なく埋もれていくってことだったんだろう。もう吹っ切れた。全てが……。

誰かのためじゃない。自分のために戦えば……そして、勝ち目がなかったら、この粗末なゲームを終わらせてしまえばいい。私らの人生なんて、恐らくはそれほどの価値しかないものだと思うから。

いつ終わってもいいようにできているんだ。この都合のいい社会の中で……。
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