第一王子と見捨てられた公爵令嬢

22

皇帝陛下が亡くなったことは、すぐさま王宮の中を駆け巡った。犯人捜しという名目なのか、王宮は閉ざされた。この広い世界に犯人がいると考えたため……それは必然だった。

「なんだか騒がしいわね……」

私は図書館に向かった。そこには共犯であるローレンスの姿があった。

「それは……皇帝陛下が亡くなったのですから、当然のことでしょう」

結局、私はメイドたちに知らせなかった。つまり、私が皇帝陛下のもとを去ってから一人で倒れた、というストーリーになったのだ。すぐさまして、王宮専属の警察隊が私のところにやってきた。

「こちらにいらっしゃいましたか、アナトール公爵令嬢のマリア様」

「あら、随分と早いご到着ですわね。ひょっとして……皇帝陛下の件ですか？？？」

「ええ、その通りでございます」

警察隊を率いるのは、隊長のシュード子爵だった。

「あなたと会ったのは……いつ以来だったかしら？？？」

「無駄話は結構でございます。マリア様。状況をお聞かせ願いましょうか？？？」

中々の切れ者と評判で、ひょっとしたら私たちの犯罪が見破られるかもしれない……そう考えると逆に興奮した。

「ええっと……どこから話せばいいかしら？？？」

「私どもの質問に答えてくだされば、それで結構です……」

そう言って、色々な質問をされた。でも、決定的に問題なのは証拠がないということだった。

「ねえ、私に質問をするのは結構ですけれども、私がやったという証拠、そして、私が犯人なのだとしたら、その動機はなんでしょうか？？？」

私がこう質問すると、さすがのシュード子爵も答えることができないようだった。当然のこと……私が何を考えているのか……そんなことは誰にもわからないのだから。はるか奥底に眠っている私の毒に近づける者はどこにもいないはずだから。