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「マリア、早く起きるんだ!!!」

今日は日差しがポカポカ……いつまでも寝ていられる、なんて思った矢先のことだった。

「いつまで寝ているんだ!!!」

この声は……想像通りお父様だった。随分と血相を変えて……別に最近悪いことはしたないんだけど、何か問題だっただろうか。

「ごめんなさい……なにかしましたか、わたし???」

「何を寝ぼけているんだ!!!大事な話がある!!!」

声がどんどんどんどん大きくなるので、私はやっとのことで目を覚ました。

「大事な話???それは一体なんですか???」

「ようやく目が覚めたか。ああ、それにしてもお前の顔ときたら……もう少し何とか収まりよく出来ないものかねええっ」

お父様はいつも、私の容姿を見て嘆いている。まあ、公爵令嬢の娘は大抵美しいものだが、私はどうやら例外の方だ。全く美しくない。

「私も……ときどき考えるのですが、やっぱりこの問題はどうもならないんでしょうねえ……」

「おいおい、そこで開き直られても困るんだよな……」

お父様は随分と困惑しているようだった。まあ、当然か。

「それはそうと、大事な話って、なんですか???」

まだ本題に入っていなかった。

「ああ、そうだな。マリア!!!お前はこれからザイツ様の妃になるのだ!!!」

「へええっ???」

「まだ寝ぼけているのか???」

「いいえ、そう言うわけではございませんで……あの、お父様にこのような言い方をするのは大変失礼であることを承知の上で申し上げますが……私のことを揶揄っていらっしゃるのですか???」

だって、そうとしか思えなかった。確かに私は公爵令嬢で間もなく成人を迎えるわけで、婚約者を決める段階になっているのは事実である。ただ……うん、公爵令嬢の相手として、それ相応の身分ある貴族様の元へ嫁ぐことになるんだけど……それがあのザイツ様だなんて……そんなことをいきなり言われてしまうと、信じることができないってわけなのだ。

「揶揄う???私がお前に冗談を言って、なんの得があると言うんだ???何も無いだろう???」

お父様は終始真面目だった。

「まあ、それもそうですが……」

「だから、お前は第一王子ザイツ様の妃になるんだ!!!」

「あの……どうして私なんですか???」

最大の疑問……だって、女としてなんの魅力もないこの私が、将来の皇帝になる第一王子ザイツ様の元に嫁ぐだなんて……やっぱりおかしいと思ったのだ。

「それは……このまま国家を維持するのに、お前のような女のほうが都合がいいからだ」

都合がいい……そうそう、大人たちは自分たちの都合だけで勝手に話を進めたがるものなのだ。私たちに決定する権利はないんだ。でも、そのおかげで生かされていると考えれば、それはそれで仕方のないことなのだ。

お父様の決定に口を挟むことはできない……でもやっぱり、その理由は知りたかった。

都合がいいとは、一体どういうことなのだろうか???

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