上 下
6 / 12

その6

しおりを挟む
本当にいたんだ。絶対にいたんだ。
「……リリアナ!!!!!!!」
「はいいいいいっ」
「……お願いがあるの」
「何でしょう???????」
「……一緒に来て」
「どこへですか?」
「……あいつがいた場所」
「え? しかし、もう」
「いいから、早く」
「は、はあ。かしこまりました」
「……」
「……」
……わたしは、リリアナと一緒に小屋を出た。辺りを見回す。もちろん、何も見えない。
「……」
「姫様」
「……」
「姫様!」
「……」
「しっかりして下さいませ」
「……あ、あああああ??????」
……いけない。少しパニックになっていたみたいだ。……深呼吸をして気持ちを静める。
「……大丈夫です」
「よかった」
「……行きましょう」
「はい」
「……確か、この辺だったと思うのだけど」わたしは、目を閉じて、感覚を研ぎ澄ました。
……感じる。微かに、魔力を感じる。本当に小さな力……かもしれないが、これから世界を脅かすことになりそうな気配を内に秘めている……。さて、どうしたものだろうか?????そんなことを考えている内に、新しい声が現れる。
「……リリアナ」
「はい」
「……多分、ここからそんなに遠くない」
「そうですね」
「……行こう」
「はい」……それから、しばらく歩くと、開けた場所に出た。
「……ここだわ」
「間違いありませんか?」
「……うん」
「では、ここで何を?」
「……わからない」
「……そうですか」
「……でも」
……あれは夢じゃない。わたしは確信していた。
「……姫様?」
「……ねえ、リリアナ」
「はい」
「……わたし、これからどうなるのかしら?」
「それは」
「……わかっているわ」
「……」
「……わたしは、魔王の娘なのよね」
「……」
「……わたしは、人間ではないのね」
「……」
「……わたしは、化け物なのね」
「違います」
「……違わないよ」
「いいえ。あなたは、私と同じ人族ですよ」
「……」「……姫様」
「……ありがとう。慰めてくれて」
「いえ」
「……そろそろ戻りましょう」
「姫様」
「なに?」
「……私は、姫様にお仕えできて幸せでした」
「……リリアナ」
「……どうか、ご自分を卑下なさらないでください。あなた様は……少なくとも私が見てきた中では最も素晴らしい方であると信じとります……」
「……わかった。そうかそうか……」
「……さあ、帰りましょう」
「……うん」……わたしは、リリアナの手を握って歩き出した。
小屋に戻ると、わたしはベッドに横になった。そして、暫くの間、時々星でも眺めながら眠りにつこうと思った。まだ、夜が長いと感じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は、いつでも婚約破棄を受け付けている。

ao_narou
恋愛
 自身の愛する婚約者――ソレイル・ディ・ア・ユースリアと平民の美少女ナナリーの密会を知ってしまった悪役令嬢――エリザベス・ディ・カディアスは、自身の思いに蓋をしてソレイルのため「わたくしはいつでも、あなたからの婚約破棄をお受けいたしますわ」と言葉にする。  その度に困惑を隠せないソレイルはエリザベスの真意に気付くのか……また、ナナリーとの浮気の真相は……。  ちょっとだけ変わった悪役令嬢の恋物語です。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

王子に婚約を解消しようと言われたけど、私から簡単に離れられると思わないことね

黒うさぎ
恋愛
「エスメラルダ、君との婚約を解消させてもらおう」 フェルゼン王国の第一王子にして、私の婚約者でもあるピエドラ。 婚約解消は私のためだと彼は言う。 だが、いくら彼の頼みでもそのお願いだけは聞くわけにいかない。 「そう簡単に離したりしませんよ」 ピエドラは私の世界に色を与えてくれた。 彼の目指す「綺麗な世界」のために、私は醜い世界で暗躍する。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

彼はもう終わりです。

豆狸
恋愛
悪夢は、終わらせなくてはいけません。

婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。

藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」 婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで← うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

婚約破棄されたおっとり令嬢は「実験成功」とほくそ笑む

柴野
恋愛
 おっとりしている――つまり気の利かない頭の鈍い奴と有名な令嬢イダイア。  周囲からどれだけ罵られようとも笑顔でいる様を皆が怖がり、誰も寄り付かなくなっていたところ、彼女は婚約者であった王太子に「真実の愛を見つけたから気味の悪いお前のような女はもういらん!」と言われて婚約破棄されてしまう。  しかしそれを受けた彼女は悲しむでも困惑するでもなく、一人ほくそ笑んだ。 「実験成功、ですわねぇ」  イダイアは静かに呟き、そして哀れなる王太子に真実を教え始めるのだった。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

処理中です...