悪役の妹は姉の婚約者候補を葬り去る

岡暁舟

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「君はそういうのに慣れているのかい?」

 道すがら、男は私に質問してきた。

「慣れている…と言いますと?」

「いや、君の対応を見ていると…こうして男をコントロールするのが上手いと思ってな…」

「いいえ、別にそんなことはないと思いますけど…」

「そうなのか?まあ、いいけれど…。ああ、月がきれいだな…」

 この日は満月だった。男がお姉様と一緒にこの道を歩いたら、いい絵柄だったのかもしれない。生憎、男と一緒に歩いているのは私である。お姉様と比べ物にならない不細工な…この私。

 奥座敷までは歩いて5分程度の距離だった。男は準備万端…女を抱くことを考えると、相手が私だとしても少しは興奮するものなのか…なんて色々考えた。少なくとも、私を見つめる目はギラギラと輝いていた。

「さあ…僕を慰めてくれるんだね?」

「ええ、もちろんでございます…」

 奥座敷に入って男が先に寝っ転がった。それはまるで赤ん坊のように。私は男を受け入れる準備をして…思い返せばどのタイミングで消しても良かったのだ。そういう営みをする時、男は大抵無防備になる。だから、どのタイミングでも消すことは出来る。わざわざ男女の交わりを演じる必要は本来ないのだ。

 それをするのは…一種の憐れみだろうか。この男は他の女を抱いたことがあるだろう。名門なのだから、女は知らずと寄って来る…いわゆる敗北を知らないってやつだ。それでも…お姉様に受け入れてもらえずに…ここで人生を終えるのは可愛そうなのか?

 フンボルトよりかはまともだと思った。このまま生き続けても、社会の害悪にはならない。でもね…私はやはりこの男を消すことになる。

 高慢なお姉様をいつか屈服させるため…絶対に勝てないお姉様を負かす日まで。私はこの愚行を続けることになるのだ。それにしても…今のところ、お姉様は何も感じていない。寧ろ、私が汚い仕事をやってのけるから有難いのだろう。精神は全く歪んでいない。



 2人目の犠牲者…そう言えば、モリソンは?

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