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「べつにやましい気持ちはなくてだな…純粋に君とお近づきになりたくて…」
まあ、いいや。そういうことにしておこう。
「まあ、いいですよ。それで…あなたのお名前はなんて言うの?」
「ああっ、私の名前はモリソンだ。一応これでも公爵家なんだけど…」
私は家柄に興味ない。公爵家の数なんてそんなに多くないから、どこかで会ったことがあるかもしれない。まあ、みんなお姉様目当てなんだけどね。彼もそうに決まっているのだ。
「ああ、そうなんですね。ところで、今日家に来ますか?」
こう尋ねると、さらに動揺したようだった。
「そんなこと…出来るのか?」
「だって、私の友達になりたいのでしょう?だとすれば…別に私の家に行っても問題ないでしょう?」
「まあ、それはそうだろうが…本当にいいのかい?」
「じれったいわね。最初からそれが狙いなんでしょう…深く考えないで!」
モリソンは平穏を装ったが、内心喜んでいるのはバレバレであった。
「そうかそうか…いきなり友人になった公爵令嬢の家に招かれるだなんて…名誉なことだなぁっ!」
モリソンは完全に棒読みだった。
「それじゃ…放課後にこの広場で待ち合わせをしましょう…」
「よし、分かった!ありがとう!」
そう言って、モリソンは元気よく駆け出して行った。
プラトーな学院生活…お姉様に少しでも追いつく、なんて目標もすっかり消えてしまい自堕落な日々。そんな日々に少しだけ刺激を追加したかったんだ。そう…お姉様のように絢爛豪華な人生にはならないけれども、少しは面白い人生にしたいと思った。
しばらくして、広場に段々と人だかりができ、騒がしくなった。ああ、お姉様が到着したんだ、と即座に分かった。当のモリソンは…いなかった。いきなりお姉様のご尊顔を拝むのが恥ずかしいのか、なんて思った。
「マーガレット様が到着されたぞ!」
歓声の渦に飲み込まれるお姉様…学院でもスターだった。姉妹でこれほどの違いが出るのはどうしてか…真面目に考えたこともある。でも、今は深くは考えない。考えても結局無駄だから…。
「皆様、ご機嫌よう…」
四方八方をお姉様のファンが囲んでいた。ファンに向けて笑顔を見せる…学院の華であった。やがて、私のいる辺りまでやって来た。学院内での私の認知度が低すぎて、私が公爵令嬢マーガレットの妹ローズであると認識されることはない。だから、姉妹が一瞬横に並んでも、世間的には学院の華とたまたま居合わせた通行人のペアと捉えられる。まあ、お姉様に近づく作戦としてモリソンのように情報を辿り私が妹ローズであると気づく者もいることにはいるようだが。
「ご機嫌よう…可愛いお嬢さん」
お姉様はにこやかに声をかけた。私は特に返事もせず、お姉様とは反対方向に歩いた。その場に居合わせた学生たちは、不思議がったに違いない。お姉様に声をかけられて平然と立ち去る者なんていなかったのだから。
結局のところ、ローズは特別?
まあ、いいや。そういうことにしておこう。
「まあ、いいですよ。それで…あなたのお名前はなんて言うの?」
「ああっ、私の名前はモリソンだ。一応これでも公爵家なんだけど…」
私は家柄に興味ない。公爵家の数なんてそんなに多くないから、どこかで会ったことがあるかもしれない。まあ、みんなお姉様目当てなんだけどね。彼もそうに決まっているのだ。
「ああ、そうなんですね。ところで、今日家に来ますか?」
こう尋ねると、さらに動揺したようだった。
「そんなこと…出来るのか?」
「だって、私の友達になりたいのでしょう?だとすれば…別に私の家に行っても問題ないでしょう?」
「まあ、それはそうだろうが…本当にいいのかい?」
「じれったいわね。最初からそれが狙いなんでしょう…深く考えないで!」
モリソンは平穏を装ったが、内心喜んでいるのはバレバレであった。
「そうかそうか…いきなり友人になった公爵令嬢の家に招かれるだなんて…名誉なことだなぁっ!」
モリソンは完全に棒読みだった。
「それじゃ…放課後にこの広場で待ち合わせをしましょう…」
「よし、分かった!ありがとう!」
そう言って、モリソンは元気よく駆け出して行った。
プラトーな学院生活…お姉様に少しでも追いつく、なんて目標もすっかり消えてしまい自堕落な日々。そんな日々に少しだけ刺激を追加したかったんだ。そう…お姉様のように絢爛豪華な人生にはならないけれども、少しは面白い人生にしたいと思った。
しばらくして、広場に段々と人だかりができ、騒がしくなった。ああ、お姉様が到着したんだ、と即座に分かった。当のモリソンは…いなかった。いきなりお姉様のご尊顔を拝むのが恥ずかしいのか、なんて思った。
「マーガレット様が到着されたぞ!」
歓声の渦に飲み込まれるお姉様…学院でもスターだった。姉妹でこれほどの違いが出るのはどうしてか…真面目に考えたこともある。でも、今は深くは考えない。考えても結局無駄だから…。
「皆様、ご機嫌よう…」
四方八方をお姉様のファンが囲んでいた。ファンに向けて笑顔を見せる…学院の華であった。やがて、私のいる辺りまでやって来た。学院内での私の認知度が低すぎて、私が公爵令嬢マーガレットの妹ローズであると認識されることはない。だから、姉妹が一瞬横に並んでも、世間的には学院の華とたまたま居合わせた通行人のペアと捉えられる。まあ、お姉様に近づく作戦としてモリソンのように情報を辿り私が妹ローズであると気づく者もいることにはいるようだが。
「ご機嫌よう…可愛いお嬢さん」
お姉様はにこやかに声をかけた。私は特に返事もせず、お姉様とは反対方向に歩いた。その場に居合わせた学生たちは、不思議がったに違いない。お姉様に声をかけられて平然と立ち去る者なんていなかったのだから。
結局のところ、ローズは特別?
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