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その1

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第一王子のボリス様というのは、非常に有名な方でありまして、侯爵の長女であります私ベーラーが婚約できるようになったのは、ある意味奇跡的と言えましょう。まあ、私は結局のところ、お父様の出世の道具にされているわけではございますが、私も令嬢の一人として、これほど高貴なお方に嫁ぐことができるというのは、それはそれで素晴らしいことなのでした。

ボリス様は非常にハンサムな方でございまして、私を含め、多数の令嬢の憧れとなっていたわけでございます。そんなわけで、私が特別不足というわけではありませんでしたが、何度かお話をするうちに、いくつか気がかりなことが出てくるわけでございました。

というのも……これは私がなんとなく感づいたことではございますが、どうやら、私に近づいてきたのは、私と婚約したいから、という理由ではなくて、恐らく妹のタバチエールに興味があるのではないか……なんてわけなのです。

いや、証拠なんてないんですよ。まあ、私もまだ正式にボリス様と婚約したわけではないですから、仮にですが、ボリス様が妹のタバチエールと何かしたとしても……少なくとも私にそれをとがめる権利なんてものはないわけでございます。まあ、確かに、私よりもタバチエールのほうが美しさの面では勝っているのかもしれません。でもね、彼女には華やかさがないんですよ。社交界に顔を出すこともほとんどなくて、一人ぽつんとお庭に備え付けの椅子に座って本を読んでいる少女……そして、白馬の王子様がすっと通りかかるのを待っている……なんて、ロマンチックを追い続ける女なのだと、私は思っておりました。

「タバチエール殿というのは……ベーラー殿とはまるで対照的なのですな……」

ボリス様はこんな話を時々しました。会ったこともないはずなのに、詳しいのは不可解でした。

やはり、二人はすでに会っているのでしょうか???そして、ボリス様はその物静かな妹にかえって憧れを抱いたのでしょうか???

私の妄想は膨らむ一方でした。まあ、私もタバチエールのことを妬むことはありません。これでも妹ですからね。姉として、妹の幸せを考えるっていうのも、神様の教えにはきちんとのっとっていることなのですから。

「だとすると、すぐさまタバチエールに話したほうがよさそうねえ……」

妄想が膨らみ続け、結果として私はタバチエールにこの件を話そうと思い、彼女の部屋に自然と足が動くのでございました。すると…………???
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