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「あなたは……嘗ての第二王子……ロールス様ですか???」

「はい、その通りです」

私は全て思い出した。ロールス様が王室から追放されたということを。あれは当時大ニュースとなった。

「どうして……あなた様がこんなところに???」

「王室から追放された人間の逃げ場なんて……こんなところしかないでしょう???」

「まあ、そうでしょうけれど……」

一時は処刑される可能性もあったというが、その真相を知っている者は多くない。リンゲル様も弟にあたる彼のことを多くは語らなかった。

「リンゲル氏にとって、私は邪魔だった。それだけのことですよ」

「ロールス様……貴方が彼にとってなにか不都合なことをしたのですか???」

「いいえ、私が何かしたということはありません。まあ、彼がある種病的なのでしょう。アリもない噂を信じ込み、私が次期皇帝の座を狙っている、そのために自分を殺そうとしている……全部妄想なんですよ。私は皇帝なんて地位に興味はありません。それよりも……私は自分が惚れ込んだ女性と愛を育みたいと思っていたのです……」

王室のメンバーとしては案外純粋……私はそう思った。

「でもね……それは中々難しいんですよ。私が惚れ込んだ女性……それは間違いなくあなたなのですが、それは叶わなかった……」

どうして……私のように魅力のない女をどうして……彼はでたらめを言っているのか???時折、不信感がよぎった。

「あなたは自分のことを卑下しすぎです。あなたの心優しい翼に触れてみて……私はそれから一目惚れでした……」

「一目惚れ……???」

私はやはり分からなかった。私の行動……何が、彼をそのような気持ちにさせたのか???

「ロールス様……あなた様がマリア様を愛して下さるんだったら、私は命を差し出してでも、お二人を守りたいのです……」

ファニーも突然意味の分からないことを言いだした。さあ、どういうことなのか???

「ファニー殿……貴方もこれほどの方に仕えたことを誇りに思うでしょう」

「それはそうですよ。ええ、これほど名誉なことはございませんわ!!!」

ますます分からなかった。どういうこと???
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