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その3

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リチャード様と言うのは、身分的には伯爵なわけでございますが、私はそんなことを全く気にする事はありませんでした。私のお父様やお母様は、典型的な古い貴族でございますから、そーゆー身分とかと言うものを全部気にするわけでございますが、私にとっては、そんなものは何も価値がないと思いました。私よりも身分が低かったとしても、ずっと友達でいてくれるのだとしたら、それは人生においては非常に貴重な出会いと言えるわけでございました。

「王子様から婚約破棄されたと聞きましたよ。あれは本当なのですか」

普通、こーゆー話を面と向かってしてくれる人なんてほとんどいないわけでございます。貴族は体裁を重んじるわけでございます。

ですから、仮にそれが疑いのない事実だったとしても、相手を尊重すると言う立場から、不都合なことに関しては直接聞かないと言うのはある種のエチケットになっているわけでございます。

ですが、リチャード様にはそういう考え方が通用しないわけでございます。気になった事は何でも口に出してしまう。それはまるで子供のようかもしれません。ですが、私にとってはそんな子供っぽいリチャード様にかえって好感を持てるわけでございました。

「おっしゃる通りです。私は婚約破棄されてしまいました」

私がこう言いますと、リチャード様は随分と意外そうな顔をしているわけでございました。

「へー。ほんとに婚約破棄されたんですか。それにしても、ずいぶんと輝いていらっしゃるじゃありませんか。あなた様は」

輝いている、私はその言葉の意味がわかりませんでした。ですが、後になって気がつきました。それは、私が今回の婚約をもともと望んでいないと言うことでした。

だから、別に悲しいなんて思う事はなかったのでしょう。
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