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そして、スティーブンは私の腕を掴んだ。
「さあ、アンナ。もう一度やり直そうじゃないか!こんな田舎男のことは忘れて!!」
あれほど威勢よく守ってくれたバートンはしばらくの間、固まっていた。
「離してよ……どうして、こんなことに……」
「そもそもは君が悪いんじゃないか!」
スティーブンが吠えた。
「私のところから逃げた君が悪い……私は君のことを愛していたんだ!それなのに……」
だめだ、どうすればいいんだろう。スティーブンに殴りかかってもいいんだけど……スティーブンがずっと大声で叫んでいたものだから、人々が湧いて来た。中には……私のことを知っている令嬢もいたかもしれない。
こんな状況で、私がスティーブンを殴ることは出来ない……完全に負けたと思った。スティーブンに人生を狂わされて、再び狂った人生が続くのか……それならいっそのこと……。
「だったら……もういっそのこと死んでしまいます!」
そう言って、テーブルの上に置かれたハサミを自ら胸に突き当てた。
「おいおい、どうしてなんだ?そんなバカな真似はやめて……一緒に来てくれっ……」
「あなたと一緒になるくらいなら、このまま死んでしまった方がマシなのよ!!」
私の叫び声で、再びバートンが目を覚ましたようだった。
「おいっ、何をしているんだ!!」
バートンは私の腕からハサミを取り上げた。
「どうして……もうやめよう、こんなことは……」
「それは……私のセリフなんだけど……」
みんながそれぞれ叫びまくって、野次馬が出来て……誰しもが病院であることを忘れていた。
「皇帝陛下がいらっしゃるぞ!!!!!!」
野次馬の一部が叫んだ。私はもちろん、スティーブンも気にしていなかった。皇帝陛下が来るわけないし、そうだとしても私たちの喧嘩を解決することは出来ないのだと思ったから。
「お控えなさーい!!!!!!」
「何がお控えなさい、だ。話はまだ終わっていない……」
次の拳を振り上げた瞬間、スティーブンは男に軽く投げ飛ばされた。恰幅のいい男はこの寸劇を憐んでいた。
「まだまだ修行が足りないようだな……」
スティーブンは戦おうとしたが、男を確認して畏まった。
「皇帝陛下……ではございませんか……」
「ああ、嘘はついていないぞ?」
男はニヤリとスティーブンを見つめた。ええっと……本当に皇帝陛下なのか?
「話はなんとなく聞かせてもらったぞ、そこのお嬢さんよ……」
男は私にもニヤリと笑った。正直怖かった。バートンは圧倒されて、とうとう私の背後に隠れてしまった。
「さあ、アンナ。もう一度やり直そうじゃないか!こんな田舎男のことは忘れて!!」
あれほど威勢よく守ってくれたバートンはしばらくの間、固まっていた。
「離してよ……どうして、こんなことに……」
「そもそもは君が悪いんじゃないか!」
スティーブンが吠えた。
「私のところから逃げた君が悪い……私は君のことを愛していたんだ!それなのに……」
だめだ、どうすればいいんだろう。スティーブンに殴りかかってもいいんだけど……スティーブンがずっと大声で叫んでいたものだから、人々が湧いて来た。中には……私のことを知っている令嬢もいたかもしれない。
こんな状況で、私がスティーブンを殴ることは出来ない……完全に負けたと思った。スティーブンに人生を狂わされて、再び狂った人生が続くのか……それならいっそのこと……。
「だったら……もういっそのこと死んでしまいます!」
そう言って、テーブルの上に置かれたハサミを自ら胸に突き当てた。
「おいおい、どうしてなんだ?そんなバカな真似はやめて……一緒に来てくれっ……」
「あなたと一緒になるくらいなら、このまま死んでしまった方がマシなのよ!!」
私の叫び声で、再びバートンが目を覚ましたようだった。
「おいっ、何をしているんだ!!」
バートンは私の腕からハサミを取り上げた。
「どうして……もうやめよう、こんなことは……」
「それは……私のセリフなんだけど……」
みんながそれぞれ叫びまくって、野次馬が出来て……誰しもが病院であることを忘れていた。
「皇帝陛下がいらっしゃるぞ!!!!!!」
野次馬の一部が叫んだ。私はもちろん、スティーブンも気にしていなかった。皇帝陛下が来るわけないし、そうだとしても私たちの喧嘩を解決することは出来ないのだと思ったから。
「お控えなさーい!!!!!!」
「何がお控えなさい、だ。話はまだ終わっていない……」
次の拳を振り上げた瞬間、スティーブンは男に軽く投げ飛ばされた。恰幅のいい男はこの寸劇を憐んでいた。
「まだまだ修行が足りないようだな……」
スティーブンは戦おうとしたが、男を確認して畏まった。
「皇帝陛下……ではございませんか……」
「ああ、嘘はついていないぞ?」
男はニヤリとスティーブンを見つめた。ええっと……本当に皇帝陛下なのか?
「話はなんとなく聞かせてもらったぞ、そこのお嬢さんよ……」
男は私にもニヤリと笑った。正直怖かった。バートンは圧倒されて、とうとう私の背後に隠れてしまった。
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