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ティアが死んだという事実を告げられて、それでも私はあまり深い悲しみを抱かなかった。

そして、ボリス様もまた、私のことを時々慰めてくれたわけだが、ボリス様も最初から私のことを本気で気遣っているようではなかった、要するに、私があまり悲しんでいないことを知っているからだろう。

「ナターシャ、もうすぐ君は死ぬことになるのかな???」

ボリス様は何回も質問した。

「少なくとも、私はその答えを知りません。ボリス様こそ、その答えを知っているんじゃないですか???」

「私かね???まあ、知っているような知らないような……できるものなら回避したいところではあるがね」

「回避したいですって???そんなことは出来ないでしょう。私は仮にも犯罪者、しかもたくさんの人々の命を奪った殺人者ですからね……死刑を免れたとしたって、一生牢屋生活になることは、間違いないでしょう」

「まあ、普通ならばそういうことになってしまうか……」

当たり前のことを質問するボリス様の態度が、私には不思議でたまらなかった。

「でもね、どちらにしても、このまま君を失ってしまうのは、なんとなく悲しいんだよな」

「それは、単なる哀れみですか???」

私はいよいよ、ボリス様が心の底で何を考えているのか、分からなくなってきた。

「哀れみ……そういうものなのかねえ……」

「まあ、いいさ。どちらにしても、私にはなかなか決められない問題だから……」

ボリス様はそのまま去っていった。私は不思議だけ残った。



「ティアの件はどこまで進捗したのかしら???」

エリスは捜査員たちに質問したが、明確な答えは返ってこなかった。

「早く見つけなさい!!!そうじゃないと、安心できないから!!!」

安心できないって言うのは、彼女にとっては単なる個人的な理由なのだ。だとしても、結局はエリスの思惑で動いているようなものだから、まあ、実際のところ誰も歯向かうことは出来なかった。


「あのお嬢さんはうるさい人だよな……」

捜査員たちは、エリスがうるさくするのを嫌った。そして、愚痴を時々溢すようになった。

「全く……犯人の目星なんて、すぐ着くでしょうに……」

そんなエリスに悪魔のささやきが訪れた。

「だったら、この件もまとめて、ナターシャがやったことにしちゃえばいいんじゃない???」

もちろん、その時私は既に監禁されているわけで、ティアを殺すことなんて出来ないのだが……そんなものはいくらでも捏造のしようがあるってものだ。

こうして、私はティア殺害の罪まで背負うことになりそうだった……らしい。

だが、そんなバカげた考えに思わぬ方向からストップが働いたんだとか。そして……私の前に再びボリス様が現れて……???

「やあ、ナターシャ。いい朝だね」

彼はいつものやり方で私に挨拶をした。

「私にとっては、いい朝なんてもうとっくの昔に置いてきてしまいましたけどね……」

「そうかそうか、仮にそうだとしても、今日の朝は久しぶりにいい朝になると思うんだ……」

ボリス様のテンションが今日もまた、いつもと違うようで、また何か新しい情報があるんじゃないかって、考えてみた。ひょっとしたら、本日このまま処刑されるのかもしれない、まあ、それならそれでいいのだ。裁判とかそういうまどろっこしいものは必要ない。どうせ、処刑される運命にあることは変わりないのだから。

「君にとっては、いや、俺にとっても人生の変わる日になりそうだ……」

そう言って、懐から文書を取り出した。
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