上 下
16 / 17

16

しおりを挟む
「これでは全く意味がない!!!!!」

再び皇帝陛下がやって来ることになりました。つまり、いくらエリーゼがスミス様に近づいたとしても、全く相手にしませんでした。

エリーゼが全く相手にされないとなると、子供はできないと考えたのでしょう。私の相手をしているだけでは、永遠に子供ができない。そこで、皇帝陛下はいよいよ動き出しました。

「エリーゼとスミスは必ず一緒に夜を共にすること、これは命令だ」

つまり、スミス様は今まで避けてきたのですが、さすがに皇帝陛下から命令されてしまったら逆らうわけにはいきませんでした。

「まったく、皇帝陛下は何を考えているんだ」

スミス様はずっと不満を言っていました。でも、これ以上待つことができなかったのでしょう。いよいよ、エリーゼがやってきました。

「スミス様!!」

「おいおい、鬱陶しいから近寄らないでくれるか。今は君の顔を見たくないんだ」

何とかして、エリーゼを遠ざけようとしていました。でも、今度は彼女の方が上手になっているようでした。

「スミス様、そんなことを言って大丈夫なんですか。皇帝陛下の命令を破るおつもりなのですか」

それを言われてしまうと、スミス様は反論することができませんでした。

「君と、これから暑苦しい夜を過ごすことになるのか」

「スミス様。それは違いますわ。私はあなた様を心地よい空間へ送れる自信があります」

「そんなことはできない。君と一緒に過ごす時間なんて、どれだけ苦痛だろうか」

最初から苦痛と定義していました。実際のところはわかりませんでした。でも、スミス様には私しかいなかったんです。

できることならば、私だってスミス様を見逃したくはありませんでした。でも、仕方がなかったんです。みんなが決めたことでした。だから、私が諦めるしかなかったんです。少なくとも、世界にとってはこの方が望ましかったのでしょう。私1人の望みよりも、世界の都合が優先されるべきでした。

「マリア⁈」

夜になると、エリーゼはスミス様を引っ張っていきました。

「さぁさぁ、夜も更けてきたことですし、今日も一緒に眠りましょう」

「もう少しマリアの顔を見ていたいんだ」

「昼間見ていらっしゃるじゃありませんか。夜のお勤めは私にしかできないですよ」

エリーゼはすっかり勝ち誇っていました。どこから、その余裕がやってくるのでしょうか。ひょっとして、エリーゼの計画はもう成功してしまったのでしょうか。

そんなに早く?やっぱりわかりませんでした。でもね、仕方ないと思いましたよ。私の予想が当たったとして、今更何も出来ませんでしたからね。何か行動するといっても、どうにもならなかったのです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王命を忘れた恋

水夏(すいか)
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です

朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。 ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。 「私がお助けしましょう!」 レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

やっぱり貴族なんてのはクソだった。唯一の宝物を壊された平民は、彼等の真実を公にする。

下菊みこと
恋愛
理由があっても立場が己より上の人にであろうとも虐めはダメ絶対 とはいえ性悪にはそれなりの目にあってもらうお話。小説家になろう様でも投稿してます。

婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空
恋愛
 ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……

死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。

拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。 一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。 残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。

侯爵令嬢とその婚約者のありきたりな日常

四折 柊
恋愛
 素敵な婚約者に相応しくありたいと一生懸命な侯爵令嬢アンネリーゼと、アンネリーゼを溺愛する眉目秀麗な公爵子息ジークハルトのお話です。アンネリーゼが彼に思いを寄せる令嬢を無自覚に撃退?したりしなかったり……の予定です。視点が頻繁に変わります。ちょっとシリアス入りますがハッピーエンドです。全18話。(誤字脱字が多くて申し訳ございません)

処理中です...