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エリーゼが来てからも、この日常的な風景にあまり変化は無いように感じました。

と言うよりか、エリーゼの方が私よりも下品でしたので、その分話が盛り上がるようにも感じました。結果としては良かったのではないでしょうか。スミス様はいつも私の方を見ていました。でも、エリーゼがぴったりとくっついておりますから、接触の機会はどんどん減っていきました。

「ねえ、スミス様???」

いやらしい下着を身にまとって、エリーゼはいつもスミス様のことを誘惑していました。

「そういう格好、恥ずかしくないのかね???」

スミス様は意外と堅実でした。なかなか落ちないと思いました。普通、このような色仕掛けで男が落ちてしまうものなのでしょうけれども。そこの点については、誤算だったかもしれません。

「ああ、もっと私の相手をしてくださいよ。そしたら、その疲れきった体を慰めて差し上げますわよ。もちろん……男女の仲ももっと深まると言うことでしょう……」

エリーゼは終始笑っておりました。絶好のチャンスを狙っていたのです。でも、いつまでたってもスミス様はエリーゼに手を出しませんでした。やはり、私のことを意識していたのでしょう。そうだとすると、少し申し訳なくも思いました。

「スミス様……」

申し訳なさがどんどん高まっていって、私はスミス様に声をかけてしまいました。

「どうしたんだい、マリア。ひょっとして、エリーゼにいじめられたのかい???」

スミス様はある意味喜んでいるようでした。もしも、エリーゼが私のことをいじめてしまったら、それこそこの王宮から追い出す口実になるとでも思ったのでしょう。

「いいえ、そんな事はありません。よくも悪くも、私たちは昔からお互いのことを知っております。そんな事は無いはずですよ」

信じていました。エリーゼがそんなことをするとは思いませんでした。

「そうなのか。それにしても、元気がなさそうだけど。やっぱり、エリーゼがここに来てしまったのが影響しているのかな???」

「ある意味、そういうことかもしれません」

スミス様は再び元気になりました。

「だったら、やっぱりエリーゼを追い出してしまったらどうだろうか???」

でも、私はいまひとつ納得いきませんでした。そんな姑息なことをしてしまったら、皇帝陛下に悪いのではないかと思いました。

「スミス様、それはさすがにまずいんじゃないでしょうか???」

「そんな事は無いさ。私は誰よりも君のことを愛しているんだ。君は正妻じゃないか。君を悲しませるようなことがあるんだとしたら、その原因を早く取り除かないといけない。その原因がエリーゼなのだとしたら、迷うことなんてないんだよ」

スミス様の言葉を聞くたびに、励まされるような思いがしました。でもね、実際のところ私が悪かったのです。ここまで愛されているのに、スミス様と子作りできない、この私がね……。

「スミス様…」

いつものように、エリーゼの声がかかりました。もちろん、あからさまに相手をしないわけにはいきませんでした。

「なんだね……」

スミス様は少し呆れていました。と言うよりか、このまま彼女と一緒に過ごさなくてはならないと思うと、ますます憂鬱な気分になってしまったのです。

「今日の夜は一緒に寝て下さいますか???」

派手な衣装で男を誘惑するエリーゼでした。でも、スミス様は応じませんでした。

「いいや、今日も1人で寝ることにするよ」

私に触れることもなく、そしてエリーゼと子作りするわけでもなく。時間だけが無造作に過ぎていきました。
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