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それでも、なかなか後継ができないことにしびれをきらした皇帝陛下は、私を呼び出しました。

「なかなか進んでいないようだね」

別に怒っているわけではありませんでした。でも、やはり期待しているものですから、なかなか子供ができないことにもどかしさを感じていたのかもしれません。

「申し訳ございません」

私はただ謝ることしか出来ませんでした。その必要が本当になるのか、心の中では投げかけてみました。もちろん、そんなことを直接言うことはできませんけれども。

「いやいや、謝る必要はないんだけどね。でも、やっぱり孫の顔が早く見たいよね」

「がんばります!!!!!」

こう答えるしかありませんでした。


「ああ、マリア!!!!!君はいつも美しい。美しすぎて、壊れてしまうのが怖いんだ。だから、なかなか君に触れることができないんだ!!!!!」

大切にしていただくと言うのは、非常にありがたいことでした。ですが、スミス様に触れてもらわないと、私はいつまでたっても子作りをすることができないと思いました。2人の間で育まれていく特別な愛情、でも残酷なことに世間はそれを認めてくれませんでした。形がなければいけなかったのです。

そんな感じで1年ぐらいが経過しました。普通、婚約してから1ヵ月くらいで身籠るそうです。この事態を非常に恐れた皇帝陛下はいよいよ側室の制度を復活させようとしました。

「お言葉ですが皇帝陛下。私はマリアしか愛しておりません。側室など不要でございます!!!!!」

「その気持ちはよくわかる。でもな、世継ぎがいないと言うのは大問題なんだよ」

「どうして、世継ぎばかりにこだわるのですか」

スミス様の質問は、皇帝陛下を始めとした貴族たちの間で話題になりました。もちろん、明確な答えを出すのは不可能でした。なんとなく昔からそうなっているから、王家の安泰のために……という理由を持ち出すしかありませんでした。

「皇帝陛下、どうして……」

結局、側室制度が復活することになりました。そして、相手として白羽の矢が立ったのが、エリーゼでした。

「よりにもよってあの女なのか……」

スミス様は嘆きました。皇帝陛下に言わせれば、よくも悪くも顔なじみであり、私よりも魅力ある女だと言う訳でした。そして、私と違ってそこまで愛されていないわけですから、エリーゼの方から誘惑することによって夜の営みが進むのではないかと、こういう発想のようでした。

「エリーゼ……とうとう来てしまったのか……」

「スミス様、これも何かのご縁でございますか!!!!!」

エリーゼは非常に喜んでおりました。一方の私はと言うと、正直驚いておりましたが、だからといってエリーゼを追い出そうとは思いませんでした。これはもう決まってしまったことだし、私とスミス様の間で子作りが進まないことを世界が許さないとしたら、エリーゼがその役に回るのはある種の必然だったのでしょう。

「これから末永くよろしくお願いしますね!!!!!」

「はあああっ……」

エリーゼはクスクスと笑い……スミス様はため息をつくばかりでした。

「マリアも……これからよろしく……」

「あああっ……よろしくね……」

なんとかことを荒げないよう、わたしは静かにしていようと思いました。
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