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それからというもの、スミス様は事あるごとに私のもとを訪れるようになりました。

「いつまで私の周りにいらっしゃるつもりですか」

私は思わず質問してしまうことがありました。正直言って、鬱陶しいと思った時もありました。こんなことを言ってしまうのは失礼を承知で。

「君が私の妻になってくれる時、そう言ってくれる時かな」

王子様は本気のようでした。それにしても、私が特別魅力ある女だとは思えませんでしたし、いくら父親の影響が及んでいるのかは知りませんが、王子様にだって選ぶ権利はあるはずです。

「少し考えさせてくれませんか」

「同じセリフを聞いてもうすでに5年くらい経っているんじゃないのかな」

王子様は言いました。いや、そんなには経っていなかったと思います。王子様は随分とオーバーでした。

とまあ、こんな具合に私と王子様の惚気話はどんどん進んでいきました。そして、学校でも王宮でも、私たちの関係に関する噂がどんどん広がっていきました。

「もしも、マリアが王子様の妻になるんだとしたら、それはすごい珍しいことじゃないかしら」

ある友人が言いました。

「珍しい……やっぱりそう思う???」

「だって、公爵令嬢は何もあなた一人だけじゃないでしょう。正直言って、あなたは目立たない方じゃない???それに比べると、私なんか……」

つまり、自分の方が私よりも美しいと言いたかったのでしょう。自分の方が王子様の婚約者としてふさわしいと言いたかったのでしょう。いや、正直なところ友人の方が美しさと言う点では勝っていると思いました。ですから、別に友人に限らず、他にも候補はたくさんいたわけなんです。私を選ぶ理由なんて、大してなかったはずなんです。それに、これも噂話ではありますが、王子様はコネとか、そう言った古い形式の根回しを好まないんだとか。だとすると、私の父親がやったことに対しても非常に反発すると思いました。いや、明確に反発してくれれば、私との婚約は無くなってしまうと思いました。その方が、どれだけ気が楽だったことでしょうか。

「話をしていくうちに、私はますます君のことを好きになってしまったんだ。君は貴族のはずなのに、裏と表がないんだ。常に正直なんだ。私の周りにいる人はみんな嘘つきなんだ。私のことを鬱陶しいと言う人間は君が初めてだった。確かに、自分でもそういう性格なのはわかっている。でもね、みんな遠慮してさ、本当は気づいているのにそういうことを言ってくれないじゃないか。でも君は、まっすぐ私の方を見て迷うことなく言ってくれたよね。そういう素直なところが、私は好きなんだ」

なるほど、そういう話になると、王子様の言っていることは当たっていると思いました。
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