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「マリア様!!!!!」

わたしのメイドたちはすぐさま私のもとに駆けつけてきました。主人が一大事であるわけですから、当然のことでした。

「エリーゼ様、いくらなんでもいたずらが過ぎますわよ」

メイドたちは彼女に注意しました。

「あなたたち、私に注意できる身分かしら???」

「身分、そういう問題ではありません」

「まあ、いいわ。それよりも……危うく死ぬところだったわね???」

私はこの時、まだ死ぬと言う概念がよくわかっていませんでした。

「エリーゼ様、まさか最初から狙っていらしたのですか!!!!!」

メイドたちはすごい剣幕でした。

「まさか……それにどうして私がこんな女の子を殺す必要があるのかしら???」

「それは……」

死ぬとか殺すとか、なんとなく物騒な響きだとは思いました。ですが、やはりこの時はわかりませんでした。

「だって、同じ公爵令嬢でも、血筋的には我が家の方がよっぽど王家に近いというのに。あなたの家みたいな成り上がりとは違うのよ……」

「エリーゼ様!!!!!」

「ああ、怖いわ。これだから下等な貴族は困っちゃう……まあ、いいわ。そこの生意気なマリアと話す機会はまた今度、と言うことで!!!!!」

こういったやり取りはその後も何度か繰り返されました。確かに思い返してみれば、彼女は最初から私の命を狙っていたのかもしれません。彼女が言った通り、当時の権力構想としては、エリーゼの家が圧倒的に強く、将来王家とより深いパイプで結ばれることを確実視されていました。それこそ、まさに彼女だったのです。私たちのことを成り上がりとエリーゼは言いました。たしかに我が家は元々伯爵家だったのです。父親が優秀な教育者であり、王子など王家の人々の教育係として長年仕えた功績を讃えられて、公爵に昇格した、というわけなのでした。

ところが、これも後から聞いた話ではございますが、王子様、つまり、スミス様は最初から私のことを狙っていたようでした。エリーゼのことはあまり眼中にないようでした。もちろん、噂話のレベルですから詳細はわかりません。ですが、それがもし本当だったとしたら、エリーゼが私のことを殺そうとしていた、というのもなんとなく納得がいくわけでございます。

でも、この時私には全く興味がありませんでした。まさか、王子様と婚約するなんて、考えられないじゃないですか。王家に最も近い家……つまり、エリーゼが将来スミス様の婚約者になると、これはすでに世界が決めていることでした。誰も異議を唱えることができない、明確な事実だったと言うことです。

ところが、この後思わぬ展開が私たちを待ち受けていました。


「グラント氏が逮捕ですって???」


突然舞い込んできた事件でした。グラント氏とはエリーゼの父親だったのです。
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