上 下
2 / 27

2

しおりを挟む
「マリア殿!!!!」

そして、なにを隠そう、婚約者であるロンメル公爵もまた、彼女の元に駆けよるのだった。まあ、表向きは主催者として客人に配慮する、ということだろうか。

「おい、カレン。何をぼさっとしているのだ。さあ、マリア殿のフォローをしないか!!!」

こうして、ロンメル公爵に怒られるのは、謎なのだ。

彼もまた、私のことを悪だと思っているのだろうか。婚約者であれば、世間の噂を鵜呑みにするのではなくて、事実を客観的に捉える必要があるのでは???

「ロンメル公爵様……ああ、本日はお招きいただきありがとうございます。そして……せっかくのパーティーを台無しにしてしまいまして……本当に申し訳ございませんわ……」

ここでも、マリアは演技をする。自分が悪いだって???

その通り、全て彼女が悪いんだ!!!

そんなことは、私しか知らない……本当はみんなが知っているはずなんだ。でもね、婚約者を含め、やはり世間はマリアの味方をするんだ。

「おい、カレン。いつまでぼさっとしているんだ!!!ああ、仕方がないな。私がフォローしよう……」

そう言って、ロンメル公爵はマリアの元に歩み寄った。男たちは皆、軽く会釈し、ロンメル公爵のために道を譲った。

「君たちもご苦労だったな……」

そう声をかけ、男たちに一礼をした。

「お怪我はございませんか???マリア殿……」

「ええ、大丈夫です。でも、少し足を捻ったようで……」

「おお、それはいけませんな。どれっ……見して御覧なさい……」

そう言って、ロンメル公爵はマリアの靴を脱がす。足が明らかになる。捻っている……本当にそうなのか???

「ああっ、痛いですわ……」

「痛いのか……上手く立てませんか???」

「はい、非常に申し訳ないのですが……」

「立てないとなると……少し部屋でお休みいただくのがよろしいでしょうね。さあ、私につかまってください……」


これは、お姫様抱っこ的なやつだろうか???どうして、こんなことになるのだろうか???

「そんな……ロンメル公爵様……恥ずかしいですわ!!!!!」

赤面するマリアが本当に憎たらしい……と思っているのは、やはり私だけなのだろう。世間はこの二人の営みを称賛している。

あの……私って本当に婚約者でしたっけ?????

そんなことを考えながら、ロンメル公爵がマリアを抱えて別室に向かうのをそれとなく見守っていた。この後、二人がどうなるのか、なんとなく想像してみたが、段々めんどくさくなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者が幼馴染のことが好きだとか言い出しました

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のテレーズは学園内で第6王子殿下のビスタに振られてしまった。 その理由は彼が幼馴染と結婚したいと言い出したからだ。 ビスタはテレーズと別れる為に最悪の嫌がらせを彼女に仕出かすのだが……。

【完結】義母が斡旋した相手と婚約破棄することになりまして。~申し訳ありませんが、私は王子と結婚します~

西東友一
恋愛
義母と義理の姉妹と暮らしていた私。 義母も義姉も義妹も私をイジメてきて、雑用ばかりさせてきましたが、 結婚できる歳になったら、売り払われるように商人と結婚させられそうになったのですが・・・・・・ 申し訳ありませんが、王子と結婚します。 ※※ 別の作品だと会話が多いのですが、今回は地の文を増やして一人の少女が心の中で感じたことを書くスタイルにしてみました。 ダイジェストっぽくなったような気もしますが、それも含めてコメントいただけるとありがたいです。 この作品だけ読むだけでも、嬉しいですが、他の作品を読んだり、お気に入りしていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

悪役令嬢は、いつでも婚約破棄を受け付けている。

ao_narou
恋愛
 自身の愛する婚約者――ソレイル・ディ・ア・ユースリアと平民の美少女ナナリーの密会を知ってしまった悪役令嬢――エリザベス・ディ・カディアスは、自身の思いに蓋をしてソレイルのため「わたくしはいつでも、あなたからの婚約破棄をお受けいたしますわ」と言葉にする。  その度に困惑を隠せないソレイルはエリザベスの真意に気付くのか……また、ナナリーとの浮気の真相は……。  ちょっとだけ変わった悪役令嬢の恋物語です。

【完結】わたしの隣には最愛の人がいる ~公衆の面前での婚約破棄は茶番か悲劇ですよ~

岡崎 剛柔
恋愛
男爵令嬢であるマイア・シュミナールこと私は、招待された王家主催の晩餐会で何度目かの〝公衆の面前での婚約破棄〟を目撃してしまう。  公衆の面前での婚約破棄をしたのは、女好きと噂される伯爵家の長男であるリチャードさま。  一方、婚約を高らかに破棄されたのは子爵家の令嬢であるリリシアさんだった。  私は恥以外の何物でもない公衆の面前での婚約破棄を、私の隣にいた幼馴染であり恋人であったリヒトと一緒に傍観していた。  私とリヒトもすでに婚約を済ませている間柄なのだ。  そして私たちは、最初こそ2人で婚約破棄に対する様々な意見を言い合った。  婚約破棄は当人同士以上に家や教会が絡んでくるから、軽々しく口にするようなことではないなどと。  ましてや、公衆の面前で婚約を破棄する宣言をするなど茶番か悲劇だとも。  しかし、やがてリヒトの口からこんな言葉が紡がれた。 「なあ、マイア。ここで俺が君との婚約を破棄すると言ったらどうする?」  そんな彼に私が伝えた返事とは……。

【R18】どーしてこーなった? ~私と彼のとりかえばや奇譚 ( 旧・ただいま緊急事態につき、要らぬチョッカイお断り)

優奎 日伽 (うけい にちか)
恋愛
和良品美佳(わらしなみか)は或る朝、目が覚めたら男になっていた。しかも天敵の幼馴染み、安西優の姿に…。 健康男子の朝の恒例行事に面食らい、気色悪くてトイレに行きたいのに行けないジレンマ。 一方、優は女体化しているのは夢のせいだと思って好き放題。 が、いま自分が美佳だと知って現実だと悟る。 何で入れ替わったのか分からない二人は途方に暮れ…。 いち早く順応した優の鬼畜な所業に美佳は振り回されていく中で、二人が今まで知りえなかった確執が明らかに。 美佳が優に振り回されるのは宿命なのか? 自己中男の迷惑な愛情から、逃げたいのに逃げられない美佳は? 【小説家になろう】にも同時掲載中です。 *本編は終了していますが、番外編を不定期更新してました。

手のひら返しが凄すぎて引くんですけど

マルローネ
恋愛
男爵令嬢のエリナは侯爵令息のクラウドに婚約破棄をされてしまった。 地位が低すぎるというのがその理由だったのだ。 悲しみに暮れたエリナは新しい恋に生きることを誓った。 新しい相手も見つかった時、侯爵令息のクラウドが急に手のひらを返し始める。 その理由はエリナの父親の地位が急に上がったのが原因だったのだが……。

処理中です...