チート使いの成り上がりは冒険を好む〜婚約破棄ですか？受けてたちましょう〜

その3

イラつく

イラつく

イラつく………。

ああっ、本当にイラつく！

おっと、これは失礼いたしました。私ったら、一人前のレディーだというのにはしたないですね……。

我が家を出て、その後すぐに困りました。行く宛がまったくなかったのです。正直に申し上げますと、チートを使えば私は永遠に生き延びることができます。そういう契約を神としているのです。ただし、それは必要最低限の生活を保証するものであり、人間らしい営みは皆無になってしまいます。例えば、私はステーキが好物で、令嬢として生き続けるならば、毎日食べることができます。しかし、今の私にはそれができません。

好物の肉にありつくためには、自ら狩りを行わなければなりません。私はいま、山道を彷徨っています。嗅覚を頼りに獣の気配を感じとります。すると、私の周囲には少なくとも10頭の獣がいるとわかります。普通の人間だったら、襲われて餌食になっているところでしょう。ところが、私の場合は、向こうから襲ってくることはありません。

なぜかって？獣の生きる上での勘なのでしょうね。私と戦って得する事はないと感じるのでしょう。まぁ実際、私に目をつけられたら、後は死ぬしかありませんからね。

今日の獲物はどれにしようかと考えます。1番大きな熊なんていかがでしょうか?どうやら子連れみたいです。もちろん、子供たちには手出ししません。でも、少し残酷ですね。

彼らは一生母親なしで生きていかなくてはならないのですから。自然とはそういうものです。私も半ばこうした自然の厳しさを、肝に銘じております。