24 / 35
2章
24.
しおりを挟む「ねぇ、男の人って何を貰えば嬉しいかしら?」
レイドへの贈り物をリンナに相談すれば、意外な顔をされた。
「お嬢様、ついにお相手の方が見つかったのですか?」
「ついにって何よ。残念ながら、お友達にあげるのよ。」
「ああ、そうですか。」
ちょっと。可哀想な子を見る目はやめて。リンナだって恋人いないじゃないの。
日に日に私への態度が失礼になってきている気がするが、私がそれを良しとしているから何の問題も無い・・・無いのかしら?
「来週入団試験を受けるから、終わった後にお疲れ様の意味も込めてプレゼントを贈ろうと思うの。でも、ありきたりな物は嫌なのよね。」
「では、手作りの品を差し上げてはどうですか?騎士になられる方ならばお守り等も良いかと思います。危険が付き物のお仕事ですから、安全を願ってお嬢様が作られれば喜ばれるのでは。」
「お守り・・・確かにそれいいわね。ありがとう!」
「お役に立てたようで良かったです。」
色はレイドの髪と同じ紺色が良いかしら。でも赤も似合いそうだし迷うわね。そうだ、セリオス様にもお揃いで作ってみよう。
「楽しそうですね。」
「え?」
「お顔が嬉しそうですよ。」
「そ、そうかしら?」
渡した時の反応を想像していたら、自然と笑顔になっていたようだ。
だって、今世で初めてできたお友達なんだもの。
・・・リンナの温かい目が恥ずかしいわ。
お守りがようやく完成した頃、レイドが入団試験に受かった事を父様から聞いた。表彰もされるらしい。
レイドの今までの努力を知っているからこそ、自分の事のように喜んだ。
「リザベルが嬉しそうでなによりだよ。その日はどうしても外せない用事があって、一緒に行けないのが残念だ。」
「また来年は一緒に行きましょう。今回はリンナと一緒に父様の分も楽しんできますね。」
お守りはレイドは紺色、セリオス様は黄色にした。
初めて作ったので形がちょっと歪になってしまった。作り方を教えてくれたリンナは"上手ですよ"と褒めてくれたけど、2人は喜んでくれるかしら。
式典当日の空は、青く澄みきっていてとても気持ちが良かった。空気も美味しく感じて、何度も深呼吸をしていたらリンナに心配された。
うん、違うの。鼻息が荒いわけじゃないの。
広場に着くと大勢の人達で賑わっていて、私の心も躍る。
広場の外には屋台もあり、良い匂いがそこら中から漂っている。ああ、もうお腹がすいてきたわ。
貴族と平民では観覧できる場所が分かれていて、入る所も別々だ。
「お嬢様、貴族側の入場口はこちらですよ。」
「え?確かいつもはこっちだったはずだけど。」
「今年は逆になったようです。たまには見る景色が変わるのも面白いだろうとの事らしいですが。」
「ふーん、そういうものかしら?まぁいいわ。じゃあ、行きましょう。」
広場は式典等の時は貴族と平民で分かれるが、普段は誰でも入る事ができるし座る場所も全て同じ造りなので特に気にならない。
入り口すぐの階段を上り、出来るだけ見えやすい位置を探して座る。
「ここからならよく見えそう!」
「お嬢様、あまり身を乗り出しては危険です。」
「そうね、気をつけるわ。でも今日をすごく楽しみにしていたんだもの。」
小さい子どものようにはしゃいでしまい、リンナに呆れられた。
やがて人の入りが増えほぼ満席になった頃、表彰式の始まりを知らせる鐘が鳴った。
レイドをはじめ、選ばれた上位5名の新人騎士たちが入場する。観客からは騎士の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。きっと家族や知り合いなのだろう。私もレイドの名前を叫ぶと、声に気付いた彼と目があった。いくら近い場所から叫んだとはいえ、よく聞こえたわね。
レイドはこの大舞台だというのに全く緊張している様子もなく、私に向かって笑顔を見せてくる。
新人騎士達は、それぞれ自分の配属される部隊の隊長から勲章を授与される。
レイドは父親のライアン様から貰っていた。同じ部隊なのね。
無事に表彰式も終わり、いよいよ今日の目玉の剣舞が始まる。
観客の熱気は最高潮だ。普段は国を守る為の剣技も、今日だけは芸術的な感じがする。強さというより、優雅という言葉が合うような。
剣舞に見入っていると、平民側の客席を黒い布のような物が走って行くのが見えた。すぐに出口へと消えてしまったので、本当に一瞬しか見えなかったけど。その後を追うように、バタバタと数人の人影も走って出て行く。普段なら気にも留めない事なのに、何故だかその光景がどうしても引っかかった。
まるで『追いかけろ』と言われているみたいに。
「私ちょっと熱気に酔ってしまったから、少しだけ外で涼んでくるわね。」
「私も一緒に行きます。」
「すぐに戻るから大丈夫よ。この場所が取られないように待っててちょうだい。」
私の思い過ごしかもしれないので、着いてこようとするリンナを強引に残し外へと急いだ。
20
お気に入りに追加
3,262
あなたにおすすめの小説
私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ
藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。
そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした!
どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!?
えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…?
死にたくない!けど乙女ゲームは見たい!
どうしよう!
◯閑話はちょいちょい挟みます
◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください!
◯11/20 名前の表記を少し変更
◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更
愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します。
夕立悠理
恋愛
ベルナンデ・ユーズには前世の記憶がある。
そして、前世の記憶によると、この世界は乙女ゲームの世界で、ベルナンデは、この世界のヒロインだった。
蝶よ花よと愛され、有頂天になっていたベルナンデは、乙女ゲームのラストでメインヒーロ―である第一王子のラウルに告白されるも断った。
しかし、本来のゲームにはない、断るという選択をしたせいか、ベルナンデにだけアナウンスが聞こえる。
『愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します』
そのアナウンスを最後に、ベルナンデは意識を失う。
次に目を覚ました時、ベルナンデは、ラウルの妃になっていた。
なんだ、ラウルとのハッピーエンドに移行しただけか。
そうほっとしたのもつかの間。
あんなに愛されていたはずの、ラウルはおろか、攻略対象、使用人、家族、友人……みんなから嫌われておりー!?
※小説家になろう様が一番早い(予定)です
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。
しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。
このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。
教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる