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2章
18.
しおりを挟む暗闇を屈みながら進むと、割とすぐに行き止まった。突き当たりにあるスライド式のドアをずらすと、中は畳3畳分程の広さで、天井は大人の男の人がなんとか立って居られるくらいの高さだ。壁際には机と棚が並んでいる。数カ所小窓があり、そこから光が差し込んでいて思ったよりも明るかった。
部屋の中心にいた人物は、こちらに背を向けて不思議そうに立ち尽くしている。
「ケイト!」
名前を呼ばれたケイトが驚いて振り向く。
「ねぇ様!見つかってしまいました。」
「ケイト、父様の書斎は入っては駄目と教えたでしょう?」
目線を合わすように屈み、問いかける。
「ごめんなさい・・・。いつもすぐに見つかっちゃうから、とぉ様のお部屋の本を出して隠れようと思ったの。そうしたら、本棚の奥が真っ暗で、気になって・・・。」
「そう。でも、気になってもこの部屋はもう二度と入っては駄目よ。父様が帰ってきたら、一緒に謝りましょうね。」
「はい。ごめんなさい。」
素直に反省するケイトに、これ以上追求するのはやめて頭を撫でる。母様譲りの柔らかい毛がふわふわして気持ちいい。
ふとケイトを見ると、手に何かを持っていた。
「ケイト、何を持っているの?」
「あ、これは、ねぇ様がいつも持っているお手紙と同じだったから、ねぇ様のかと思って。」
はい、と言って渡してきた。封を切られた手紙を見ると、そこには城からの書状である証の紋章があった。この紋章は、いつもレイドから届く手紙にも入っている。
「ケイト、これは私のじゃないわ。これはお城からの手紙で・・・。」
見るつもりは無かったのだが、視界の端に気になる文がちらついた。
──どうか、リンナをフォリス公爵家で雇ってもらえないだろうか。良い返事を待つ。ライアン・アーガス──
え。どういう事?なぜ、ライアン様がリンナを?
訳が分からず、手紙を開く
「共により良い国にしていこう。今、この国はー・・・。」
「リザベル様?ケイト様?どちらにいらっしゃいますか?」
手紙を読んでいる途中で、侍女達の声が聞こえた。
姿が見えない私達を探しているようだ。
私は慌てて手紙を戻し、すぐにケイトを連れて書斎へ急ぐ。
ここに入ってしまった事もだけど、隠し通路の存在がバレる訳にはいかない。もし書斎に入られれば、散らばった本を不思議に思って覗かれるかもしれない。
何とか見つからずに書斎を出て、何食わぬ顔で返事をする。
2人でかくれんぼをしていたのよと言えば、本当に仲がよろしいですね、と笑われた。
ケイトには、やっぱりあの部屋に入った事は父様には内緒にしましょうねと言うと、2人だけの秘密ですね!と目をキラキラされた。はい、可愛い。
最近更に忙しくしていた父様がその日は珍しく早く帰ってきて、久しぶりに家族4人での晩ご飯となった。しかし、私は先程の手紙が気になり心から楽しむ事ができなかった。
隠し部屋の件から2週間程が経ち、レイドから再び手紙が届いた。
いつもは1ヶ月に1回届く程度で、前回の手紙からまだそんなに日が経っていないのに珍しいなと思いつつ手紙を開けると、そこには驚くことが書いてあった。
──父さんが、先日の休みの日に女性と歩いていた。調べたらリザベルの屋敷の侍女だった──
これは、もしかして
恐る恐る続きを読む。
──リンナ、と言う名前らしい──
やっぱり!!!
えっと、リンナはライアン様と、そそそそういう関係なのっ!!??
侍女達の言う通り、年に一回会う恋人なの!?
後ろにはいつも通り昼食後のお茶を用意するリンナ。
私は勢いよく振り返ってしまう。
「どうされました?私に何か?」
「い、いいえぇ!」
動揺を隠そうとしてテンション高めに答えてしまった。
私の脳内では大パニックが起きていた。
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