14 / 35
1章
14.
しおりを挟む「何の騒ぎですか、母上。」
「あら、セリオス。今、丁度貴方の話をしていたのよ。こちらにいる方達が、娘を貴方の婚約者に是非と──」
「お言葉ですが、自分の婚約者は自分で見定めたいと思っておりますので。父上もそれで良いと仰って下さいました。母上達で勝手に盛り上がられては困ります。」
「・・・そう、分かったわ。でもね、わたくしは貴方の為を思って言っているのよ?それは、分かってちょうだいね。」
「・・・勿論です。」
サッと踵を返したセリオス王子と、一瞬目が合った気がした。
「大丈夫か?リザベル。」
「レガス!私は平気よ。父様が支えてくれたもの。」
「そっか、良かった。っつーか、お前が行方不明になったって聞いた時は驚いたぞ。それ聞いたセリオスなんか、まだ挨拶待ちの奴らがいるってのに探しに行こうとしてさ。止めるのに苦労したぜ。」
「え。セリオス王子が?」
今日知り合ったばかりなのに、そこまで心配してもらえた事実に胸が熱くなる。
「そしたら王妃様が来たって言うから、列に並んでた奴らもこぞって王妃の方に行ったんだ。で、2人でリザベルを探してたら、何故かお前が王妃と話してるし。」
「・・・お騒がせしました。」
自分の知らない所で、結構心配されていたらしい。
「まぁ、無事に見つかって良かったじゃないか。なぁ、ニコラス。」
「ああ。さっきは助かった。王妃へうまく話してくれたんだろう?」
「気にするな。そもそも、俺がお前を連れ出したのが原因でもあるしな。」
父様達の会話が聞こえて、ライアン様にも何か迷惑を掛けてしまった事を知る。
「そんな顔するなって、リザベル。ほら、セリオスのとこ行こうぜ!」
落ち込む私に気付いたレガスが、手を差し出してきた。私はその手を無言でとる。
レガスって本当に面倒見が良いと思う。施設の皆が慕うのも分かるわ。
「セリオス、リザベルは無事だったぞー・・・痛ってぇ!いきなり何すんだよ!」
セリオス王子がレガスの手に手刀を落とす。その衝撃で、私達の手が離れた。
「・・・すまない。何故かイラッとした。」
「はぁ!?イラついて暴力振るうとか、やべー奴だろ!」
「お前だって俺を叩く時があるだろう。」
「肩な!?あれは俺にとって挨拶なんだよ!」
「ふっ・・・あははっ!」
2人のやり取りを見て、思わず笑ってしまう。さっきまでの沈んでいた気分がどこかへ消えてしまった。
令嬢らしからぬ笑い方をしたせいか、2人が目を見開いてこっちを見ている。
「2人とも、ありがとう。心配かけてごめんなさい。」
「いや、俺は何も出来なかった。それにリザベルが無事ならそれでいい。」
「そーそー!もーいいって!」
頭を下げる私に、2人が笑って許してくれた。
心がほわっと温かくなるのが分かる。
例えこの先何があっても、これからも変わらずこんな関係でいたいと思った。
31
お気に入りに追加
3,254
あなたにおすすめの小説

嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜
As-me.com
恋愛
事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。
金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。
「きっと、辛い生活が待っているわ」
これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだがーーーー。
義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」
義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」
義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」
なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。
「うちの家族、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのねーーーー」
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!
えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?!

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる