転生したら攻略対象者の母親(王妃)でした

黒木寿々

文字の大きさ
上 下
9 / 35
1章

9.

しおりを挟む

これがお城のガーデンパーティ。
・・・想像以上だわ。

見たこともない色鮮やかな花が綺麗に並び、左右対象に揃えられている。
花に詳しくない私でも、見ているだけで心が躍る。


「ははは、楽しそうだね。連れて来て良かった。」
キョロキョロと落ち着きなく頭を動かしていると、父様に笑われた。

主催者の王妃様はまだお見えになっていないということで、先にセリオス王子の所へ挨拶に向かう。
ゲームではすでに王様になっていた彼はスチルが無かったので、今日がドキドキの初対面だ。

王子の前にはすでにたくさんの人達がいて、父様と共にその列に並ぶ。私と同じくらいの年頃の令嬢も何人かいて、中には親しげに王子に話しかけている声も聞こえた。
皆可愛い子ばかりで、何だかすでに勝ち目が無さそうな気がしてくる。

弱気になったらダメよ、リザベル。貴方だって十分可愛いわ。もっと自信を持って!

脳内で自分を鼓舞し、何とか気持ちを奮い立たせる。


「ご機嫌麗しく存じます、殿下。こちらは娘のリザベルです。」

父様の声がして、ハッと現実に戻された。
私が私を応援している間に、すでに順番が来ていたらしい。

慌てて前を向き




息を飲んだ。



目の前には圧倒的な美少年がいた。
蜂蜜色の髪はサラサラで、後ろで一つに結んでいる。エメラルドグリーンの瞳は、まるで宝石のように輝いて見える。
肌は陶器のように滑らかで透明感があり、無表情も相まって生きた彫刻のようだ。




「リザベル?どうしたんだい?」

王子のあまりの美貌に立ち尽くしていると、不思議に思った父様に声を掛けられる。


「あ、し、失礼致しました。わたくし、リザベル・フォリスと申します。お目にかかれて光栄でしゅ・・・。」




噛んだ!!!



恥ずかしさで自分の顔がみるみる紅潮していくのが分かる。

「あ、あの・・・その・・・。」

どうしよう。頭が真っ白になって言葉が出てこない。






「ぶはっ!何だよリザベル。俺が格好良過ぎて緊張したか?」


斜め前から聞き覚えのある声がした。
この声って・・・。

「え・・・もしかしてレガス!?」
「おー、久しぶりだな。」

セリオス王子の真横に立っていたのは、普段とはまるで違うレガスだった。
いつも施設で会う彼は、他の子と同じ質素な服装で、癖毛気味な髪は無造作に散らばっていた。それはそれで、男の子らしい顔つきの彼に合っていて格好良かったけど。
しかし今目の前にいるのは、瞳と同じ紺色の髪を横に撫でつけ、しっかりと正装したどこからどう見ても正統派のイケメンだ。目の前にいたのに、あまりの変化に気付かなかった。


「何だ、元気そうじゃねーか。最近教会に来ないから、皆心配してたんだぞ。病気にでもなったんじゃないかって。」
「まさか!風邪も引いたことないのよ。今日の為にマナーの先生に課題を増やしてもらって・・・って、それよりもどうしてレガスがここに?」
「そういう事か。・・・・・・あー、まぁ、それは施設で説明するよ。来週は来るんだろ?」
「ええ。1ヶ月もお休みしてごめんなさい。次はアップルパイを持っていくわね。」
「それは楽しみだな。施設の奴らも、リザベルの作ったお菓子を毎回楽しみにしてるんだよ。」
「本当!?うれし・・・」








「・・・そろそろいいだろうか?」



眉間にシワを寄せたセリオス王子が、レガスを睨んでいる。
初めて聞いた王子の声は、不機嫌を顕にした低い声で、私はその場に凍りついた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜

As-me.com
恋愛
 事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。  金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。 「きっと、辛い生活が待っているわ」  これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだがーーーー。 義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」 義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」 義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」  なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。 「うちの家族、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのねーーーー」  実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!  えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?!

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

処理中です...