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1章
9.
しおりを挟むこれがお城のガーデンパーティ。
・・・想像以上だわ。
見たこともない色鮮やかな花が綺麗に並び、左右対象に揃えられている。
花に詳しくない私でも、見ているだけで心が躍る。
「ははは、楽しそうだね。連れて来て良かった。」
キョロキョロと落ち着きなく頭を動かしていると、父様に笑われた。
主催者の王妃様はまだお見えになっていないということで、先にセリオス王子の所へ挨拶に向かう。
ゲームではすでに王様になっていた彼はスチルが無かったので、今日がドキドキの初対面だ。
王子の前にはすでにたくさんの人達がいて、父様と共にその列に並ぶ。私と同じくらいの年頃の令嬢も何人かいて、中には親しげに王子に話しかけている声も聞こえた。
皆可愛い子ばかりで、何だかすでに勝ち目が無さそうな気がしてくる。
弱気になったらダメよ、リザベル。貴方だって十分可愛いわ。もっと自信を持って!
脳内で自分を鼓舞し、何とか気持ちを奮い立たせる。
「ご機嫌麗しく存じます、殿下。こちらは娘のリザベルです。」
父様の声がして、ハッと現実に戻された。
私が私を応援している間に、すでに順番が来ていたらしい。
慌てて前を向き
息を飲んだ。
目の前には圧倒的な美少年がいた。
蜂蜜色の髪はサラサラで、後ろで一つに結んでいる。エメラルドグリーンの瞳は、まるで宝石のように輝いて見える。
肌は陶器のように滑らかで透明感があり、無表情も相まって生きた彫刻のようだ。
「リザベル?どうしたんだい?」
王子のあまりの美貌に立ち尽くしていると、不思議に思った父様に声を掛けられる。
「あ、し、失礼致しました。わたくし、リザベル・フォリスと申します。お目にかかれて光栄でしゅ・・・。」
噛んだ!!!
恥ずかしさで自分の顔がみるみる紅潮していくのが分かる。
「あ、あの・・・その・・・。」
どうしよう。頭が真っ白になって言葉が出てこない。
「ぶはっ!何だよリザベル。俺が格好良過ぎて緊張したか?」
斜め前から聞き覚えのある声がした。
この声って・・・。
「え・・・もしかしてレガス!?」
「おー、久しぶりだな。」
セリオス王子の真横に立っていたのは、普段とはまるで違うレガスだった。
いつも施設で会う彼は、他の子と同じ質素な服装で、癖毛気味な髪は無造作に散らばっていた。それはそれで、男の子らしい顔つきの彼に合っていて格好良かったけど。
しかし今目の前にいるのは、瞳と同じ紺色の髪を横に撫でつけ、しっかりと正装したどこからどう見ても正統派のイケメンだ。目の前にいたのに、あまりの変化に気付かなかった。
「何だ、元気そうじゃねーか。最近教会に来ないから、皆心配してたんだぞ。病気にでもなったんじゃないかって。」
「まさか!風邪も引いたことないのよ。今日の為にマナーの先生に課題を増やしてもらって・・・って、それよりもどうしてレガスがここに?」
「そういう事か。・・・・・・あー、まぁ、それは施設で説明するよ。来週は来るんだろ?」
「ええ。1ヶ月もお休みしてごめんなさい。次はアップルパイを持っていくわね。」
「それは楽しみだな。施設の奴らも、リザベルの作ったお菓子を毎回楽しみにしてるんだよ。」
「本当!?うれし・・・」
「・・・そろそろいいだろうか?」
眉間にシワを寄せたセリオス王子が、レガスを睨んでいる。
初めて聞いた王子の声は、不機嫌を顕にした低い声で、私はその場に凍りついた。
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