2 / 35
1章
2.
しおりを挟む「んぅ。ここは・・・私の部屋?」
なんだかついさっきもこんなことがあったな、と思いながら目を覚ます。
今回はベッドの上だったので、お尻は無事だ。
まぁそんなことはどうでもいい。
さっきの記憶は間違いなく"私"のだ。
正確には"前世の私"だけど。
こんなことって本当にあるのね。
「お嬢様、ご気分はいかがですか。」
侍女の声にハッと我にかえる。
そうだ。前世の記憶が蘇った衝撃で意識を失ってたんだった。
「だ、大丈夫よ!ありがとう。もう下がっていいわよ、リンナ」
そう声を掛ければ、侍女が驚いた顔をする。
「お嬢様・・・熱でもおありでは?」
え?熱?いや、いたって元気なのだけど。
そう考えて、気づいた。
私ってば今までリンナにお礼を言ったことがなかったわ。と言うか、誰にも言ったことないかも・・・。やってもらって当たり前精神だったからな、私。
しかもいつも侍女のことをアンタとか呼んでたから、名前で呼ぶのも初めてかも。
最悪すぎるついさっきまでの自分の性格を思い出すと目眩がする。
「熱はないわ。本当よ。ちょっとまだ少し気分が悪いから寝てるわね。また用があれば声をかけるわ」
そう言って布団に潜り込むと、静かに返事をしてリンナは出ていった。
さて、整理しよう。
ここは前世で私がやっていた乙女ゲームの世界らしい。
私はこの世界の王妃・・・になる予定の人。
それ以外は、実はあんまりよく分からないんだよね。だって彼女、24歳という若さで亡くなってしまってて、ゲーム本編では登場人物達に思い出として語られるだけだったから。
まぁ、その思い出もなかなか濃いものだったけど。
王妃候補のライバル達を非道な方法で辞退させ、王妃になったとか。
庶民を嫌い、蔑み、税金をたんまり使って贅沢三昧してたとか。
王妃としての公務をほとんどしなかったとか。
気に入らないことがあるとすぐに怒鳴り、侍女達に当たり散らしてクビにしたりとか。(これまさにさっきの私)
他にも挙げればキリがないけど、わんさか出てくる。この手のエピソードが。
そして第一王子のカイル殿下が寂しげにヒロインに語ってたのよ。
───母上は、一度たりとも私のことを愛してはくれなかった。彼女の心は父上以外受け入れない。死ぬ間際まで私を見ることはなかったんだ───
カイルーーー!!!
儚げに微笑むカイル(スチル)に、何故私はそちら側に行けないのか、と恨めしく思ったものだ。
画面という障害がなければ今すぐに抱きしめるのに!!!
カイルはそんな母親でも愛してたし、愛されたかったんだよね。
だけど、最後まで愛されることはなかった。
誰にも弱みを見せず、王子としての役割を立派にこなす反面、母親に愛されなかった苦しさがずっと彼の心の中にあったんだ。
その寂しさを埋めてくれるのが異世界転移してきたヒロイン
な・ん・だ・け・ど!!!
ヒロインには悪いけど、私はカイルに寂しい思いなんかさせないし、そんな最悪な王妃になる気はない!!!
前世は田舎の平凡な女子高生(享年16)だった私だけど、今から頑張れば立派な王妃になれるよね!というか、カイルの為になるしかない!
そうと決まれば、まずは今までの行いを反省して、清く正しい令嬢を目指さなくちゃ。
我儘令嬢のリザベル・フォリス(7)が心を入れ替えた瞬間だった。
11
お気に入りに追加
3,254
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜
As-me.com
恋愛
事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。
金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。
「きっと、辛い生活が待っているわ」
これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだがーーーー。
義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」
義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」
義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」
なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。
「うちの家族、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのねーーーー」
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!
えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?!

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる