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しおりを挟む久しぶりに会ったネイトは、随分と大きくなったように思う。
「お久しぶりです」
ネイトからは、嫌な雰囲気は一切出ておらず私は戸惑った。
「あの時は、本当に申し訳ありませんでした」
ネイトは本当に反省した様子で謝ってきた。
彼が私と会わなくなって7年近く。きっと、モヤモヤとして過ごしてきただろう。
私も私で、言い負かしてやる。とか、困らせてやる。とか、そういった気持ちで嫌なことをしてきたな。と、今更だが大人気ないことをしたと思った。
もう少しやりようはあったと思うのだ。
「……謝罪を受けます。私も大人気なかったと思います。だから、やりすぎてごめんなさい」
私が謝るとネイトは驚いた顔をする。
「正直、何年も謝ることすら許されないのは辛かったです。でも、酷いことをしたのは僕なので」
ははは。と、ネイトは苦笑いを浮かべた。
そこから、お互いのことについて話すようになっていった。
「王立学園に通うようになって、本当に色々とあって」
私が行かなかった王立学園では、おそらくゲーム内容が展開されていたはずだ。
そういえば、ネイトはヒロインのこと好きになってなさそうなんだけど、どういうことなのだろうか。
「ピンク頭の令嬢がね……」
そう言ってネイトが話し出した内容は、ゲームの展開そのものだった。
しかし、ネイトの目線だとありえないものだったらしい。
「婚約者がいるのに、平気で異性とベタベタするのはありえない」
ゲームの中でヘスティアがヒロインに物申したことをネイトは思ったようだ。
何というか、正気でまともな人間に育ってよかったと私は思った。
「……あの女のせいで、卒業パーティーは婚約破棄宣言の嵐だった」
それを聞いた瞬間、私はなぜ卒業パーティーを断ってしまった事が悔しくなった。
しれっと便乗して婚約破棄すればよかった……!
そうは思ったが、ネイトの続きを待つ事にした。
「なんていうか、そもそもおかしいんだよ。婚約者がいるのに他に行くとか、ありえないだろ。その女は僕にもヘスティアさんが嫌がらせをしてくるって嘘をついたんだ」
知らない間に虐めをしていたことにされてしまっていた。何なんだ一体。
「パーティーで僕は証言したよ。いじめの事実はなかったって」
うん、知らない間にゲームとは全く違う展開になってるじゃん。大丈夫なのか。
「婚約破棄突きつけた男たちはみんな廃嫡になったよ」
とんでもないことになっていたようだ。
「僕はあの誓約書があってよかったと思ってる。きっと、あのまま、なあなあにしたら僕もあの男たちの仲間に入っていたと思うから」
そういう自覚はあったんだ。
一方的に意地を張っていたのはあるが、関わらない近づかない事がそもそも巻き込まれないためには必要だった。
「あれから、取り返しがつかないことをする前に考えるようになったよ」
彼にとっては反省するきっかけになれたようだ。
「それは良かったわね。銃弾婚約破棄の現場はこの世の混沌を集めたものだったでしょうね……」
わたしは労わる言葉をかけた。
「前々から思っていたけど、少し君は少し変わっているよね」
ネイトは、ニコリと笑って失言をした。
失礼すぎないか。
誰が変わっているというのよ!?
「何ですって!?」
思わず胸ぐらを掴んだら、使用人たちがすっ飛んできた。
「もう、式をあげるまで接触禁止です!」
そう言われて私たちはまた離れ離れになった。
針のむしろのような結婚生活にはならないと思うが、喧嘩ばかりの結婚生活になりそうな気がした。
~~~
最後までお付き合いくださりありがとうございました
なんと声をかけたらいいのかわからないのですが
能登半島地震で、被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます
みなさまの無事を祈っております
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