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「あんな子だったとは思いもしなかったわ」
屋敷に帰ると母が頭を押さえて呟いた。
それでも断るという選択肢はないようだ。
まあ、私なんてただの駒でしかないし……。
思うところはあるけれど、何か言ったところで無意味だ。
あの場で何一つ庇おうともしない両親に少なからず私は失望していた。
ただの駒が不幸になったとしても彼らにとってはどうでもいい事なのだろう。
最後は不幸な結婚生活が待ってるなら好き勝手やってやろう。
私はそう心に決めた。何と言われようが誓約書を理由にすればいいのだから。
「ねぇ、ヘスティア、王家主催のお茶会があるのだけれど」
数ヶ月後、母が私に声をかけてきた。
そのような場所に参加したらネイトと間違いなく顔を合わせる事になってしまう。
当然行くという選択肢はない。
「私のような女がお茶会に参加したら、ネイト様が恥をかくでしょうから行きません。不参加の理由は体調不良という事にしましょう」
「……そう」
母は、何か言いたげな顔をしたがすぐに引き下がってくれた。
お茶会の後、ネイトから体調を心配するような手紙が届いてげんなりとした。
誓約書を守っているだけなので、私を気にかける必要はない。時間の無駄です。と返事を返しておいた。
それなのに、ネイトから定期的に手紙が届くのだ。
「ネイト様からの誕生日プレゼント?無駄な事を……」
誕生日には、プレゼントが届いたのでお礼に産卵前のメスとオスのカマキリを捕まえて送りつけてやった。
婚姻後のお前の運命はこうだと知らしめるためにだ。
きっと、ネイトのところに届く頃にはメスのカマキリがオスのカマキリを食い殺しているだろう。
ついでに孵化したカマキリの子供達でカオスなことをなっているはずだ。ざまあみろ。
これに恐れたらネイトは私に接触などしてくることはないはずだ。ついでに婚約解消もしてくれる気がする。
ネイトのようなモラハラ気質の男には、どういう対応が最適なのか私は知っている。
……逆らえば終わりだと知らしめてやることだ。
上下関係をはっきりと決めてやるのがポイントだ。
DV男の寝込みを襲い、金属バットでぶん殴ったら次の日から逆らわなくなったという話を聞いたことがある。
その前に別れろと私は思うのだけれど、そこは愛なのかもしれない。よくわからんが。
二度とネイトから手紙は届かないと思っていた。
それなのに、期待は裏切られた。
ネイトから会いたいという手紙が届いたのだ。
私はそれを鼻で笑った。
「ネイト様が私に会いたいと?面白い社交辞令ですね」
「会ってあげないの?」
当然のように断りの返事を書いていると、母が私を窘めてきた。
意味がわからない。なぜ、私が折れないとならないのだろうか。
「何がですか?誓約書を守っているだけなのに」
「あんな物、冗談よね」
母は、私が書いた誓約書をただの冗談だと本気で信じているようだ。
「いいえ、本気ですよ。式を挙げる日まで私は彼と絶対に会うつもりはありません。向こうもそのつもりでしょう?」
「謝ってきたのよ」
「だからなんですか?」
謝ったからといって何なのだろう。サインをしたのは向こうだ。
ネイトの謝罪に何の価値があるのか、そもそも、私の顔を見て地面に顔を擦り付けて鼻水を垂らしながら謝るのが筋だじゃないのか。
もちろん、誓約書があるので顔すら合わせられない状況ではあるのだけれど。
謝罪をなぜ受け入れないとならないのだろう?
「……なんで」
母は不満げな顔をしているが、あの時に少しでも庇ってくれたならまだ考えたかもしれない。
「自分の言ったことに責任を取るべきです。私も誓約書を作成したので責任を取ります。それに、謝罪を受けるかどうか決めるのは私自身です。婚姻する日まで絶対に会う気はありません」
私がキッパリと断ると母は、項垂れて去っていった。
~~~
カマキリのオスは無事食い殺されました!
屋敷に帰ると母が頭を押さえて呟いた。
それでも断るという選択肢はないようだ。
まあ、私なんてただの駒でしかないし……。
思うところはあるけれど、何か言ったところで無意味だ。
あの場で何一つ庇おうともしない両親に少なからず私は失望していた。
ただの駒が不幸になったとしても彼らにとってはどうでもいい事なのだろう。
最後は不幸な結婚生活が待ってるなら好き勝手やってやろう。
私はそう心に決めた。何と言われようが誓約書を理由にすればいいのだから。
「ねぇ、ヘスティア、王家主催のお茶会があるのだけれど」
数ヶ月後、母が私に声をかけてきた。
そのような場所に参加したらネイトと間違いなく顔を合わせる事になってしまう。
当然行くという選択肢はない。
「私のような女がお茶会に参加したら、ネイト様が恥をかくでしょうから行きません。不参加の理由は体調不良という事にしましょう」
「……そう」
母は、何か言いたげな顔をしたがすぐに引き下がってくれた。
お茶会の後、ネイトから体調を心配するような手紙が届いてげんなりとした。
誓約書を守っているだけなので、私を気にかける必要はない。時間の無駄です。と返事を返しておいた。
それなのに、ネイトから定期的に手紙が届くのだ。
「ネイト様からの誕生日プレゼント?無駄な事を……」
誕生日には、プレゼントが届いたのでお礼に産卵前のメスとオスのカマキリを捕まえて送りつけてやった。
婚姻後のお前の運命はこうだと知らしめるためにだ。
きっと、ネイトのところに届く頃にはメスのカマキリがオスのカマキリを食い殺しているだろう。
ついでに孵化したカマキリの子供達でカオスなことをなっているはずだ。ざまあみろ。
これに恐れたらネイトは私に接触などしてくることはないはずだ。ついでに婚約解消もしてくれる気がする。
ネイトのようなモラハラ気質の男には、どういう対応が最適なのか私は知っている。
……逆らえば終わりだと知らしめてやることだ。
上下関係をはっきりと決めてやるのがポイントだ。
DV男の寝込みを襲い、金属バットでぶん殴ったら次の日から逆らわなくなったという話を聞いたことがある。
その前に別れろと私は思うのだけれど、そこは愛なのかもしれない。よくわからんが。
二度とネイトから手紙は届かないと思っていた。
それなのに、期待は裏切られた。
ネイトから会いたいという手紙が届いたのだ。
私はそれを鼻で笑った。
「ネイト様が私に会いたいと?面白い社交辞令ですね」
「会ってあげないの?」
当然のように断りの返事を書いていると、母が私を窘めてきた。
意味がわからない。なぜ、私が折れないとならないのだろうか。
「何がですか?誓約書を守っているだけなのに」
「あんな物、冗談よね」
母は、私が書いた誓約書をただの冗談だと本気で信じているようだ。
「いいえ、本気ですよ。式を挙げる日まで私は彼と絶対に会うつもりはありません。向こうもそのつもりでしょう?」
「謝ってきたのよ」
「だからなんですか?」
謝ったからといって何なのだろう。サインをしたのは向こうだ。
ネイトの謝罪に何の価値があるのか、そもそも、私の顔を見て地面に顔を擦り付けて鼻水を垂らしながら謝るのが筋だじゃないのか。
もちろん、誓約書があるので顔すら合わせられない状況ではあるのだけれど。
謝罪をなぜ受け入れないとならないのだろう?
「……なんで」
母は不満げな顔をしているが、あの時に少しでも庇ってくれたならまだ考えたかもしれない。
「自分の言ったことに責任を取るべきです。私も誓約書を作成したので責任を取ります。それに、謝罪を受けるかどうか決めるのは私自身です。婚姻する日まで絶対に会う気はありません」
私がキッパリと断ると母は、項垂れて去っていった。
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カマキリのオスは無事食い殺されました!
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