1 / 7
1
しおりを挟む
私が自分自身に違和感を持ったのは、物心がつく前からだった。
誰か。の記憶が混ざり合っているようなそんな感覚が強くあった。
あまり泣くこともなく、我慢はできる方だった。子供っぽさがあまりない子供だった。
明確に、何かがおかしいと気がついたのは、自分の顔をしげしげと見た時だった。
真っ黒な小さな目、黒い髪、整っているけれど、どこか愛嬌のある顔立ち。
……なんだろう。コウモリみたい。
自分の顔がコウモリみたいだと思った瞬間に前世の記憶が蘇った。
私は、アラサーの社畜で疲れた心のオアシスでもあるスマホゲームにどハマりしていた。
買い上げのゲームで課金要素の全くない、シナリオ自体を楽しむものだった。
内容もテンプレートで、田舎の領地でのびのびと育った令嬢が上位貴族に見初められるといったものだ。
所謂「オモシレー女」なヒロインが、恋に友情に勤しむといった内容だった。
うん、勉強しろ。
田舎からやってくるなら、領地の繁栄のために他の貴族とコネクションを作るとかならまだわかるよ。
なぜ、恋愛に勤しむのかと、やること他にあるだろう。と、心の中でツッコミを入れてしまった事を覚えている。
それだけ私が年をとったのか、枯れてしまったのかわからない。
好きなシナリオレーターさんだったから期待して買ったが、色々と未消化で気になる事だらけであまり楽しめなかった。
でも、たまにあるじゃない?
いつも、名作を書く作家さんが迷作を書くだって、それを否定するつもりはないけれど。
「でも、だからってコウモリ令嬢に転生しなくてもいいでしょうぅ!?」
私は大好きなシナリオ作家さんが生み出した、迷作の中に登場するコウモリ令嬢に転生してしまったのだ。
コウモリ令嬢とは、私の大好きなシナリオ作家さんが書いたゲームに登場する微妙な立ち位置のキャラクターだ。
伯爵家の令嬢で、ヘスティア・ミシェルという。
黒髪黒目で比較的整った顔をしている。ゲームのイメージ動画にもヒロインに苦言を呈する形で登場する。
しかし、悪役令嬢というにも、モブ令嬢というにも微妙な立ち位置をしているのだ。それなのに微妙なざまぁまである。
というのも、どのルートにも婚約者はヒロインに懸想するのだが、ヘスティアはそれに対して虐めをすることはない。
正論でヒロインに注意することはあるが、それだけで、所謂ざまぁの時ですら彼女は断罪されない。
なんなら、虐めの証言をしてくれるお助けキャラでもある。
最終的に婚約者と婚姻することになる。
だが、考えてみて欲しい。
婚約者は、ヒロインに懸想しているのだ。その状況で婚姻して果たして幸せになれるのだろうか。
その上で客観的に見てみよう。
高位貴族の令嬢の大半が、断罪されて修道院送りになっている。
ヘスティアは、ヒロインに苦言を呈する事を何度かしていて、見方によっては虐めをしているように取れなくもない。
結果的にヘスティアは、うまく乗り切っている。
それを何も知らない人たちはどう見るのだろう。
虐めをしておいて部が悪くなったらヒロインの味方をしたと見えるのかもしれない。
婚姻後、彼女には「コウモリ」というあだ名をつけられて針の筵のような生活が待っていた。
つまり、彼女もざまぁの対象であったのだ。
まともな事を言って、まともな感性の持ち主だからこそ、虐めの証言をしたというのにだ。
私からしてみれば、ヘスティアは善良な人間に見える。
修道院送りにされるか、針の筵のような生活を一生続けるのか、正直修道院の方がマシではないのかと思う。
夫は、相手のいる女性に懸想している。最悪だろ。間違いなく夫婦生活なんてない。
事あるごとに嫌味を言われるような生活に何の楽しみがあるのだろうか。
長くなったけれど、導入はここまでにしておこう。
誰か。の記憶が混ざり合っているようなそんな感覚が強くあった。
あまり泣くこともなく、我慢はできる方だった。子供っぽさがあまりない子供だった。
明確に、何かがおかしいと気がついたのは、自分の顔をしげしげと見た時だった。
真っ黒な小さな目、黒い髪、整っているけれど、どこか愛嬌のある顔立ち。
……なんだろう。コウモリみたい。
自分の顔がコウモリみたいだと思った瞬間に前世の記憶が蘇った。
私は、アラサーの社畜で疲れた心のオアシスでもあるスマホゲームにどハマりしていた。
買い上げのゲームで課金要素の全くない、シナリオ自体を楽しむものだった。
内容もテンプレートで、田舎の領地でのびのびと育った令嬢が上位貴族に見初められるといったものだ。
所謂「オモシレー女」なヒロインが、恋に友情に勤しむといった内容だった。
うん、勉強しろ。
田舎からやってくるなら、領地の繁栄のために他の貴族とコネクションを作るとかならまだわかるよ。
なぜ、恋愛に勤しむのかと、やること他にあるだろう。と、心の中でツッコミを入れてしまった事を覚えている。
それだけ私が年をとったのか、枯れてしまったのかわからない。
好きなシナリオレーターさんだったから期待して買ったが、色々と未消化で気になる事だらけであまり楽しめなかった。
でも、たまにあるじゃない?
いつも、名作を書く作家さんが迷作を書くだって、それを否定するつもりはないけれど。
「でも、だからってコウモリ令嬢に転生しなくてもいいでしょうぅ!?」
私は大好きなシナリオ作家さんが生み出した、迷作の中に登場するコウモリ令嬢に転生してしまったのだ。
コウモリ令嬢とは、私の大好きなシナリオ作家さんが書いたゲームに登場する微妙な立ち位置のキャラクターだ。
伯爵家の令嬢で、ヘスティア・ミシェルという。
黒髪黒目で比較的整った顔をしている。ゲームのイメージ動画にもヒロインに苦言を呈する形で登場する。
しかし、悪役令嬢というにも、モブ令嬢というにも微妙な立ち位置をしているのだ。それなのに微妙なざまぁまである。
というのも、どのルートにも婚約者はヒロインに懸想するのだが、ヘスティアはそれに対して虐めをすることはない。
正論でヒロインに注意することはあるが、それだけで、所謂ざまぁの時ですら彼女は断罪されない。
なんなら、虐めの証言をしてくれるお助けキャラでもある。
最終的に婚約者と婚姻することになる。
だが、考えてみて欲しい。
婚約者は、ヒロインに懸想しているのだ。その状況で婚姻して果たして幸せになれるのだろうか。
その上で客観的に見てみよう。
高位貴族の令嬢の大半が、断罪されて修道院送りになっている。
ヘスティアは、ヒロインに苦言を呈する事を何度かしていて、見方によっては虐めをしているように取れなくもない。
結果的にヘスティアは、うまく乗り切っている。
それを何も知らない人たちはどう見るのだろう。
虐めをしておいて部が悪くなったらヒロインの味方をしたと見えるのかもしれない。
婚姻後、彼女には「コウモリ」というあだ名をつけられて針の筵のような生活が待っていた。
つまり、彼女もざまぁの対象であったのだ。
まともな事を言って、まともな感性の持ち主だからこそ、虐めの証言をしたというのにだ。
私からしてみれば、ヘスティアは善良な人間に見える。
修道院送りにされるか、針の筵のような生活を一生続けるのか、正直修道院の方がマシではないのかと思う。
夫は、相手のいる女性に懸想している。最悪だろ。間違いなく夫婦生活なんてない。
事あるごとに嫌味を言われるような生活に何の楽しみがあるのだろうか。
長くなったけれど、導入はここまでにしておこう。
77
お気に入りに追加
1,187
あなたにおすすめの小説
いかにも悪役令嬢な公爵令嬢、前世を思い出していかにもモブな男爵令息に猛アタックを仕掛ける。なお周りの迷惑は相変わらず気にしない模様。
下菊みこと
恋愛
異世界転生だけど人格は前世より現世の性格が強いです。嗜好だけ前世寄りになります。
小説家になろう様でも投稿しています。
完結/クラスメイトの私物を盗んだ疑いをかけられた私は王太子に婚約破棄され国外追放を命ぜられる〜ピンチを救ってくれたのは隣国の皇太子殿下でした
まほりろ
恋愛
【完結】
「リリー・ナウマン! なぜクラスメイトの私物が貴様の鞄から出て来た!」
教室で行われる断罪劇、私は無実を主張したが誰も耳を貸してくれない。
「貴様のような盗人を王太子である俺の婚約者にしておくわけにはいかない! 貴様との婚約を破棄し、国外追放を命ずる! 今すぐ荷物をまとめて教室からいや、この国から出ていけ!!」
クラスメイトたちが「泥棒令嬢」「ろくでなし」「いい気味」と囁く。
誰も私の味方になってくれない、先生でさえも。
「アリバイがないだけで公爵家の令嬢を裁判にもかけず国外追放にするの? この国の法律ってどうなっているのかな?」
クラスメイトの私物を盗んだ疑いをかけられた私を救って下さったのは隣国の皇太子殿下でした。
アホ王太子とあばずれ伯爵令嬢に冤罪を着せられたヒロインが、ショタ美少年の皇太子に助けてられ溺愛される話です。
完結、全10話、約7500文字。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
他サイトにも掲載してます。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です
朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。
ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。
「私がお助けしましょう!」
レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)
私の婚約者を狙ってる令嬢から男をとっかえひっかえしてる売女と罵られました
ゆの
恋愛
「ユーリ様!!そこの女は色んな男をとっかえひっかえしてる売女ですのよ!!騙されないでくださいましっ!!」
国王の誕生日を祝う盛大なパーティの最中に、私の婚約者を狙ってる令嬢に思いっきり罵られました。
なにやら証拠があるようで…?
※投稿前に何度か読み直し、確認してはいるのですが誤字脱字がある場合がございます。その時は優しく教えて頂けると助かります(´˘`*)
※勢いで書き始めましたが。完結まで書き終えてあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる