ユリ島の女神

毛蟹葵葉

文字の大きさ
上 下
3 / 5

アリアの島

しおりを挟む
女神。本名はユリエスは購入したばかりの島でお一人様ライフを堪能していた。
しかし、それは、数日で終了した。

目の前に居るのは、目が覚めるようなびしょ濡れの美少女だ。
闇夜のような漆黒の瞳、髪の毛は艶やかで緩やかに波うっている。
そんな少女が真っ白なウエディングドレスを身につけて、粗末なボートに乗ってこの島にやって来たのだ。
正確に言えば、ボートが転覆した所を救い出したのだが。

あぁ、なんて可愛い女の子なのかしら?つまみ食いしたいわ。きっと、いつも頑張っている私のために神様がごほうびをくれたのね。
ウエディングドレス着ているということは、私の花嫁ということかしら?きっとそうね。

ユリエスは都合よくそんな事を考えていた。


「私の名前はアリア。住む島はここからさほど離れていない島です」

アリアはゆっくりとユリエスに自分の身の上を話始めた。

「私の島では不作の年には、祈りの意味を込めてユリ島にいる神に生け贄を贈るのです」

アリアの簡単な説明にユリエスは、驚いて目を見開く。
まるで未開の土地ではないかと思ったのだ。

おかしいわね。島を買うときにそんな話一切されなかったけれど。周囲も静かな無人島だとしか言われなかったわ。
もし、アリアの島で作物が不作になったら、その度にこの島に死体が流れてくるって事かしら?
ユリエスは恐怖に鳥肌が立った。もしも、間に合わなかったらアリアも死体で波打ち際に打ち上げられていたのかもしれない。

アリア以外でもそれは勘弁してほしい。

それにしても、生け贄なんて今時あり得ない話だ。

「え、何それ。おかしいわ」

ユリエスがポツリと本音を漏らすと、アリアはうつ向いて唇を噛み締めた。

「おかしいも何も、私は島から出たことがないので」

「なるほど。そういうことね」

ユリエスは納得したように、うなずいた。
自分の島しか知らないのなら、他の国ではどうなっているかなんて知るはずもない。

「貴女は神様を信じるかしら?」

ユリエスの問いかけにアリアは不思議そうに首を捻る。

「私は基本的に信じません。ですが、場合にもよります」

どうやら、彼女にそこまでの信仰心は無さそうだ。

「なるほど」と呟いてユリエスは逡巡する。
このまま、この島の所有者について説明するべきか、やめようかと考えていた。

どのみち言わないといけないわよね。

「このユリ島の事なんだけど」

ユリエスは、言いにくそうに口を開くと、アリアは瞳を輝かせた。

「貴女が女神なんですね!?」

女神!?

ユリエスは突然言われた言葉に、思わず硬直した。

野獣、化け物、人の皮を被った何か、この世の混沌。好き勝手言われ続けたのに、目の前のアリアだけはそんな優しい言葉を言ってくれた。

大切にしなきゃ。一生……。
ユリエスは心の中で誓った。一方的に。

「だって、女神様は私を助けてくれました。私は神の存在を貴女以外信じません」

ああ、なんてこと!ユリエスはアリアの幸せを更に神に誓うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

そんな目で見ないで。

春密まつり
恋愛
職場の廊下で呼び止められ、無口な後輩の司に告白をされた真子。 勢いのまま承諾するが、口数の少ない彼との距離がなかなか縮まらない。 そのくせ、キスをする時は情熱的だった。 司の知らない一面を知ることによって惹かれ始め、身体を重ねるが、司の熱のこもった視線に真子は混乱し、怖くなった。 それから身体を重ねることを拒否し続けるが――。 ▼2019年2月発行のオリジナルTL小説のWEB再録です。 ▼全8話の短編連載 ▼Rシーンが含まれる話には「*」マークをつけています。

処理中です...