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生け贄
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「っ!」
アリアは、豪華な真っ白なドレスを身につけて、粗末なボートに強引に乗せられた。
したたかに打ち付けた膝に彼女は顔をしかめる。
ボートにはお供も何もいない。一人で乗るスペースがあるだけだ。
ボートの先に広がる海の波は荒く。海に出たら最後、たちまち転覆してしまいそうだ。
最悪ね。
アリアは心の底から毒づきたくなった。
ゆらゆらとボートは、海流に乗りユリ島に近づいていく。
「っ!」
誰もが憧れるウエディングドレスは彼女にとっては死装束でしかない。
どうせなら、誰かと結婚する時に着たかったけれど……。
アリアの願いは叶いそうにはなかった。
そもそも、彼女の住む島に好きな男など居ないけれど。
アリアは男が嫌いだった。あんな汚ならしくて、女を抱くことしか考えられない生き物に吐き気すらしていた。
嫌悪感しか持てない男の所に嫁ぐくらいなら、死んだ方がはるかにましかもしれない。
ボートに身動きの取りにくいドレスで乗せられるなど、死にに行くような物だけれど。
「姉さん。お別れね」
そう言って、うっすらと涙を浮かべたのは妹のリリアだ。
しかし、その唇は上を向いている。
アリアは苦々しい気分になりながらも、それを表情には出さなかった。
今は恐怖よりも怒りの方が勝っていたのだ。
「『ユリ島の花嫁』に選ばれたのだから仕方ない」
そう言って、リリアの肩を抱く。この島の長は彼女と肉体関係を持っている。
そして、アリアを『ユリ島の花嫁』になるように仕向けた男達全てが、リリアとそういう関係なのだ。
「せいぜい。花嫁としてつとめさせてもらいます。私はどこかの誰かと違って尻軽ではありませんからその点はご安心を」
アリアは皮肉たっぷりに言い返した。
しかし、男達は彼女の皮肉の意味を全く理解できていないようだった。
「可愛いげのない女だな」
「息をするように股を開く女が可愛いのなら、私は死ぬまで可愛いげのない女でいるわ。あなた達からみれば、リリアは可愛い女でしょうね」
言外にリリアが複数の男と肉体関係を持っているとアリアが言うと。
リリアは、アリアを睨み付けた。
「ねえ、私、見ていられないの。姉さんはこのあとすぐに死んでしまうのだもの。早く楽にさせてあげて。可哀想で私は……」
リリアはボートを海に出せと言い出す。
そういわれた男達は慌ててボートを蹴った。
ボートは揺らめきながら海面を滑るように島から離れていく。
海流は『ユリ島』に向かっていた。
しかし、アリアはまだ生きることを諦めていなかった。
勢いよく海水が顔にかかりアリアは、顔をしかめた。
とりあえずこのドレスを脱がないと確実に沈んでしまう。それにしても波が高い。
ユリ島の神に生け贄を捧げるにしても、こんなにも波が強い日にしなくても良かったはずだ。
「リリアは私に死んでほしいのね」
確実に殺すつもりでこの日を選んだのだろう。
死ぬことが癪だ。なにがなんでも生き抜いてやってあいつらをギャフンと言わせてやりたい。
アリアは悔しさで唇を噛み締めるけれど、生き抜く方法が何一つ思い浮かばないのだ。
「あ、いやっ!」
ひときわ高い波が、アリアのボートに打ち付けた。ボートは体勢をたて直そうと、揺らぐけれど、すぐさま次の波がそれを許さなかった。
「うそでしょう!?」
波は無情にもボートを飲み込んだ。
アリアの身体は、ドレスの重さで海に沈んでいく。
泳ごうと足をばたつかせようとしても、ドレスがその足に絡み付きそれを阻止する。
アリアはなすすべもなく海のそこに沈んでいく。
ぼやける視界の中で見えたのは、真っ赤な燃え上がるような服を着た何かだった。
アリアは、豪華な真っ白なドレスを身につけて、粗末なボートに強引に乗せられた。
したたかに打ち付けた膝に彼女は顔をしかめる。
ボートにはお供も何もいない。一人で乗るスペースがあるだけだ。
ボートの先に広がる海の波は荒く。海に出たら最後、たちまち転覆してしまいそうだ。
最悪ね。
アリアは心の底から毒づきたくなった。
ゆらゆらとボートは、海流に乗りユリ島に近づいていく。
「っ!」
誰もが憧れるウエディングドレスは彼女にとっては死装束でしかない。
どうせなら、誰かと結婚する時に着たかったけれど……。
アリアの願いは叶いそうにはなかった。
そもそも、彼女の住む島に好きな男など居ないけれど。
アリアは男が嫌いだった。あんな汚ならしくて、女を抱くことしか考えられない生き物に吐き気すらしていた。
嫌悪感しか持てない男の所に嫁ぐくらいなら、死んだ方がはるかにましかもしれない。
ボートに身動きの取りにくいドレスで乗せられるなど、死にに行くような物だけれど。
「姉さん。お別れね」
そう言って、うっすらと涙を浮かべたのは妹のリリアだ。
しかし、その唇は上を向いている。
アリアは苦々しい気分になりながらも、それを表情には出さなかった。
今は恐怖よりも怒りの方が勝っていたのだ。
「『ユリ島の花嫁』に選ばれたのだから仕方ない」
そう言って、リリアの肩を抱く。この島の長は彼女と肉体関係を持っている。
そして、アリアを『ユリ島の花嫁』になるように仕向けた男達全てが、リリアとそういう関係なのだ。
「せいぜい。花嫁としてつとめさせてもらいます。私はどこかの誰かと違って尻軽ではありませんからその点はご安心を」
アリアは皮肉たっぷりに言い返した。
しかし、男達は彼女の皮肉の意味を全く理解できていないようだった。
「可愛いげのない女だな」
「息をするように股を開く女が可愛いのなら、私は死ぬまで可愛いげのない女でいるわ。あなた達からみれば、リリアは可愛い女でしょうね」
言外にリリアが複数の男と肉体関係を持っているとアリアが言うと。
リリアは、アリアを睨み付けた。
「ねえ、私、見ていられないの。姉さんはこのあとすぐに死んでしまうのだもの。早く楽にさせてあげて。可哀想で私は……」
リリアはボートを海に出せと言い出す。
そういわれた男達は慌ててボートを蹴った。
ボートは揺らめきながら海面を滑るように島から離れていく。
海流は『ユリ島』に向かっていた。
しかし、アリアはまだ生きることを諦めていなかった。
勢いよく海水が顔にかかりアリアは、顔をしかめた。
とりあえずこのドレスを脱がないと確実に沈んでしまう。それにしても波が高い。
ユリ島の神に生け贄を捧げるにしても、こんなにも波が強い日にしなくても良かったはずだ。
「リリアは私に死んでほしいのね」
確実に殺すつもりでこの日を選んだのだろう。
死ぬことが癪だ。なにがなんでも生き抜いてやってあいつらをギャフンと言わせてやりたい。
アリアは悔しさで唇を噛み締めるけれど、生き抜く方法が何一つ思い浮かばないのだ。
「あ、いやっ!」
ひときわ高い波が、アリアのボートに打ち付けた。ボートは体勢をたて直そうと、揺らぐけれど、すぐさま次の波がそれを許さなかった。
「うそでしょう!?」
波は無情にもボートを飲み込んだ。
アリアの身体は、ドレスの重さで海に沈んでいく。
泳ごうと足をばたつかせようとしても、ドレスがその足に絡み付きそれを阻止する。
アリアはなすすべもなく海のそこに沈んでいく。
ぼやける視界の中で見えたのは、真っ赤な燃え上がるような服を着た何かだった。
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