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ゲジゲジの集合住宅のような睫毛
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「別れてくれ!」
俺は人前だとかそんな事を気にも止めずに、叫び声を上げる。
とにかく別れたくて必死だ。
「そんな、酷い!」
別れを切り出されたアイツは、ゲジゲジの集合住宅のような睫毛を震わせて、切れ長の瞳に黒真珠のような涙を溜める。
マスカラ溶けてるぞ。パンダ目になるぞ。
これじゃ、盛れマスカラではなく漏れマスカラだ。
しかし、涙目になると心が少し痛む。
「あっ、また真咲ちゃんを虐めてる!」
泣き出したヤツを抱き締め、庇うのは大学の同期の女子達だ。
なぜそっちを庇う。頼むから俺の性的な嗜好に合った相手と付き合わせてくれ。
俺には人権すらないのか。
真咲は男だ。しかも、ムキムキで俺よりも雄々しく。乙女系世紀末猛者の風格を持つ。
真咲はメイクをしなければかなりの美形だと思う。
栗色の髪の毛はクセが強く柔らかく。湖畔を思わせる。透明感のある翡翠色の瞳は性別など関係なく、命を奪うカメラのように、見つめられるだけで心が奪われそうになる。
外国人の血が混じっているらしく、身長は俺以上に高く。モデルのように何を着ても様になるのだ。
メイクさえしていなければ……。
「虐めてない!ただ、別れて……」
「うわ~ん!酷いよぅ!」
真咲は庇う女子達を味方につけて、泣き真似をするが、口元はうっすらと笑っている。
嘘泣きかよ……!わかっていても、男であろうが涙を流されれば俺だって心が痛む。
真咲の性的な嗜好を友人として受け入れる事はできるが、恋人としては出来ない。
「私、頑張るから!お料理も、お洗濯も、アッチで……」
「やめろぉ~!!!!」
俺はそれ以上は恐ろしくて聞きたくない。
「酷いわ。こんなにも泣いているのにそんな物言いあるかしら?酷い男」
「最低。真咲ちゃんを弄んで」
弄んでないし!むしろ虐められてるのこっちだし!
しかし、口々に女は無責任に真咲を庇う。
お前ら責任とって俺と真咲を夫婦に出来る法律でも作れるというのか?
出来ないならあれこれ言うべきじゃない。
「いいの。私、それでも悠斗くんの事好きだから……」
真咲は黒い涙を流し、ゲジゲジの集合住宅が決壊した顔をこちら見向ける。
福笑い状じゃねぇか!
黒い涙は胃酸か何かなのか、ファンデーションを溶かし、口紅を溶かし、誰なのか判別がつかない。
ムンクの叫びもビックリだ。
この世の終わりのような顔の惨劇は、パンダ目どころか特殊メイクだ。
「悠斗くん。好きなの」
真咲はギュウッと俺を抱き締めると、熱い胸板の巨乳が口を塞ぐ。
筋肉堅い!
「ふぐ~!もご~!」
やめろと抗議しようにも、口を塞がれてしまっては何も言えない。
「私、お顔がこんなふうになっちゃったから、帰りましょう?」
うっすらと俺に暗黒微笑を向ける真咲は、今回の『別れ話』をとても怒っている様子だ。
ゾクッ。ピキッ。背筋が凍りつくどころか、全身が氷付けにされたような気分。
こ、殺される。
「ぶご~!」
俺が真咲の胸から逃げようと、暴れようとしても『あらあら』の一言で全ての抵抗を、その筋力で封じてしまう。
見た目乙女なのに、なぜそんなにも力があるのか。だからお前は世紀末猛者なんだよ!
「お化粧直しするために帰りましょう?」
俺は戦利品のように真咲に担がれた。連れていかれる場所は決まっていた。
俺は人前だとかそんな事を気にも止めずに、叫び声を上げる。
とにかく別れたくて必死だ。
「そんな、酷い!」
別れを切り出されたアイツは、ゲジゲジの集合住宅のような睫毛を震わせて、切れ長の瞳に黒真珠のような涙を溜める。
マスカラ溶けてるぞ。パンダ目になるぞ。
これじゃ、盛れマスカラではなく漏れマスカラだ。
しかし、涙目になると心が少し痛む。
「あっ、また真咲ちゃんを虐めてる!」
泣き出したヤツを抱き締め、庇うのは大学の同期の女子達だ。
なぜそっちを庇う。頼むから俺の性的な嗜好に合った相手と付き合わせてくれ。
俺には人権すらないのか。
真咲は男だ。しかも、ムキムキで俺よりも雄々しく。乙女系世紀末猛者の風格を持つ。
真咲はメイクをしなければかなりの美形だと思う。
栗色の髪の毛はクセが強く柔らかく。湖畔を思わせる。透明感のある翡翠色の瞳は性別など関係なく、命を奪うカメラのように、見つめられるだけで心が奪われそうになる。
外国人の血が混じっているらしく、身長は俺以上に高く。モデルのように何を着ても様になるのだ。
メイクさえしていなければ……。
「虐めてない!ただ、別れて……」
「うわ~ん!酷いよぅ!」
真咲は庇う女子達を味方につけて、泣き真似をするが、口元はうっすらと笑っている。
嘘泣きかよ……!わかっていても、男であろうが涙を流されれば俺だって心が痛む。
真咲の性的な嗜好を友人として受け入れる事はできるが、恋人としては出来ない。
「私、頑張るから!お料理も、お洗濯も、アッチで……」
「やめろぉ~!!!!」
俺はそれ以上は恐ろしくて聞きたくない。
「酷いわ。こんなにも泣いているのにそんな物言いあるかしら?酷い男」
「最低。真咲ちゃんを弄んで」
弄んでないし!むしろ虐められてるのこっちだし!
しかし、口々に女は無責任に真咲を庇う。
お前ら責任とって俺と真咲を夫婦に出来る法律でも作れるというのか?
出来ないならあれこれ言うべきじゃない。
「いいの。私、それでも悠斗くんの事好きだから……」
真咲は黒い涙を流し、ゲジゲジの集合住宅が決壊した顔をこちら見向ける。
福笑い状じゃねぇか!
黒い涙は胃酸か何かなのか、ファンデーションを溶かし、口紅を溶かし、誰なのか判別がつかない。
ムンクの叫びもビックリだ。
この世の終わりのような顔の惨劇は、パンダ目どころか特殊メイクだ。
「悠斗くん。好きなの」
真咲はギュウッと俺を抱き締めると、熱い胸板の巨乳が口を塞ぐ。
筋肉堅い!
「ふぐ~!もご~!」
やめろと抗議しようにも、口を塞がれてしまっては何も言えない。
「私、お顔がこんなふうになっちゃったから、帰りましょう?」
うっすらと俺に暗黒微笑を向ける真咲は、今回の『別れ話』をとても怒っている様子だ。
ゾクッ。ピキッ。背筋が凍りつくどころか、全身が氷付けにされたような気分。
こ、殺される。
「ぶご~!」
俺が真咲の胸から逃げようと、暴れようとしても『あらあら』の一言で全ての抵抗を、その筋力で封じてしまう。
見た目乙女なのに、なぜそんなにも力があるのか。だからお前は世紀末猛者なんだよ!
「お化粧直しするために帰りましょう?」
俺は戦利品のように真咲に担がれた。連れていかれる場所は決まっていた。
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