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トリスタン10
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トリスタン10
『浮気者へ、ポーリーン様は私が攫った。返してほしければ死ぬ気で捜せ。見つけることができなければ私が貰う。
……ヒント、ポーリーン様を本当に愛していて、他愛無いやり取り一つ一つ取りこぼさずに覚えているならすぐにどこにいるのかわかります。』
サナから届いた手紙にはこう記されていた。
「浮気者……?」
思い当たることが全くない僕は首を傾げた。
しかし、よくよく考えてみると、僕はポーリーンに対して酷い態度を取っていた事に気がつく。
日に日に綺麗になっていくポーリーンを見るのが、とても気恥ずかしかった。
王都に行きたい。と言い出したらどうしよう。もしも、帰りたくないと思ってしまったら?
僕は田舎者で都会の人間とは違う。もしも、目移りしてしまったら?他の男と「運命の出会い」をしてしまったら?
その不安感から王都の話をしないようにしていた。
後ろめたさからの行動が、浮気をしていると思わせてしまったのかもしれない。
「ポ、ポーリーンを捜さないと!」
手紙には、サナがポーリーンを奪うと記されていた。この国では同性婚は禁止されているが、そうではない国に行けば、サナとポーリーンは晴れて婦婦だ。
もしかしたら、ポーリーンも乗り気かもしれない。
「国中を捜さないと……」
いや、サナからのヒントが手紙に記されてあった。
『ヒント、ポーリーン様を本当に愛していて、他愛無いやり取り一つ取りこぼさずに覚えているならすぐにどこにいるのかわかります。』
僕は脳みそをフル回転させながら死ぬ気でポーリーンとの事を思い出す。
「……」
答えは意外と早く思い出す事ができた。
「カフェフルール」
ポーリーンは確かにそこに行きたい。と、僕に話していた。
僕はカフェフルールへと走り出した。
カフェフルールには、やはりポーリーンがいて生き生きとして働いていた。
「ポーリーン」
思わず名前を呼ぶと彼女が振り返った。
顔を見ると、途端に僕の視界が滲み出した。
やっと見つけられた。何よりも誰よりも大切な人だ。
僕はポーリーンに勢いよく抱きついた。
「……」
このままどこかに連れ去ってしまいたい。
そうしないとサナと結婚してしまうから。
「トリスタン様、あまり絞めすぎるとポーリーン様がオチてしまいますよ」
サナの冷静なツッコミに、僕はすぐに正気に戻った。
そうだ。僕は浮気を疑われているのだ。
「ポーリーン。聞いてくれ、僕は浮気なんてしていない!」
そこからは、必死の言い訳というか、自分のやらかしへの弁解だった。
「き、君が綺麗になっていくから、まともに顔が見れなくなってしまって、その、気恥ずかしくて……、それに、君が綺麗だから、王都に来たら他に目移りしたり、華やかな生活がいいって僕を捨てないか不安で、傷つけてしまってごめん」
僕が言葉を連ねれば連ねるほど、ポーリーンの顔が赤くなっていく。
ダメだ。こんなのただの言い訳でしか無い。
ポーリーンは、間違いなく怒っている。
「僕が好きなのはポーリーンだけだ。君しかいないんだ」
「……もういいよ。トリスタン」
僕の必死の告白に、ポーリーンは呆れたような顔でそれを止めた。
やっぱり嫌われてしまったのか。当然かもしれない。
「ここ、カフェだよ」
言われて、僕は人前でポーリーンに決死の告白をしていた事に気がついた。
周囲を見渡すと、何人か知っている顔を確認できた。
これは、下手したら噂が広がるかもしれない。
「トリスタンが浮気なんてしてないってわかったから。もういいよ。怒ってないから」
ポーリーンは、顔を赤くさせたままそう言った。
「トリスタン、王都を案内してくれる?」
「もちろんだよ」
次の日、僕は王立学園を休んだ。
ポーリーンと王都を観光するために。
『浮気者へ、ポーリーン様は私が攫った。返してほしければ死ぬ気で捜せ。見つけることができなければ私が貰う。
……ヒント、ポーリーン様を本当に愛していて、他愛無いやり取り一つ一つ取りこぼさずに覚えているならすぐにどこにいるのかわかります。』
サナから届いた手紙にはこう記されていた。
「浮気者……?」
思い当たることが全くない僕は首を傾げた。
しかし、よくよく考えてみると、僕はポーリーンに対して酷い態度を取っていた事に気がつく。
日に日に綺麗になっていくポーリーンを見るのが、とても気恥ずかしかった。
王都に行きたい。と言い出したらどうしよう。もしも、帰りたくないと思ってしまったら?
僕は田舎者で都会の人間とは違う。もしも、目移りしてしまったら?他の男と「運命の出会い」をしてしまったら?
その不安感から王都の話をしないようにしていた。
後ろめたさからの行動が、浮気をしていると思わせてしまったのかもしれない。
「ポ、ポーリーンを捜さないと!」
手紙には、サナがポーリーンを奪うと記されていた。この国では同性婚は禁止されているが、そうではない国に行けば、サナとポーリーンは晴れて婦婦だ。
もしかしたら、ポーリーンも乗り気かもしれない。
「国中を捜さないと……」
いや、サナからのヒントが手紙に記されてあった。
『ヒント、ポーリーン様を本当に愛していて、他愛無いやり取り一つ取りこぼさずに覚えているならすぐにどこにいるのかわかります。』
僕は脳みそをフル回転させながら死ぬ気でポーリーンとの事を思い出す。
「……」
答えは意外と早く思い出す事ができた。
「カフェフルール」
ポーリーンは確かにそこに行きたい。と、僕に話していた。
僕はカフェフルールへと走り出した。
カフェフルールには、やはりポーリーンがいて生き生きとして働いていた。
「ポーリーン」
思わず名前を呼ぶと彼女が振り返った。
顔を見ると、途端に僕の視界が滲み出した。
やっと見つけられた。何よりも誰よりも大切な人だ。
僕はポーリーンに勢いよく抱きついた。
「……」
このままどこかに連れ去ってしまいたい。
そうしないとサナと結婚してしまうから。
「トリスタン様、あまり絞めすぎるとポーリーン様がオチてしまいますよ」
サナの冷静なツッコミに、僕はすぐに正気に戻った。
そうだ。僕は浮気を疑われているのだ。
「ポーリーン。聞いてくれ、僕は浮気なんてしていない!」
そこからは、必死の言い訳というか、自分のやらかしへの弁解だった。
「き、君が綺麗になっていくから、まともに顔が見れなくなってしまって、その、気恥ずかしくて……、それに、君が綺麗だから、王都に来たら他に目移りしたり、華やかな生活がいいって僕を捨てないか不安で、傷つけてしまってごめん」
僕が言葉を連ねれば連ねるほど、ポーリーンの顔が赤くなっていく。
ダメだ。こんなのただの言い訳でしか無い。
ポーリーンは、間違いなく怒っている。
「僕が好きなのはポーリーンだけだ。君しかいないんだ」
「……もういいよ。トリスタン」
僕の必死の告白に、ポーリーンは呆れたような顔でそれを止めた。
やっぱり嫌われてしまったのか。当然かもしれない。
「ここ、カフェだよ」
言われて、僕は人前でポーリーンに決死の告白をしていた事に気がついた。
周囲を見渡すと、何人か知っている顔を確認できた。
これは、下手したら噂が広がるかもしれない。
「トリスタンが浮気なんてしてないってわかったから。もういいよ。怒ってないから」
ポーリーンは、顔を赤くさせたままそう言った。
「トリスタン、王都を案内してくれる?」
「もちろんだよ」
次の日、僕は王立学園を休んだ。
ポーリーンと王都を観光するために。
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