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トリスタンの運命の相手とは?
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次の日、私はトリスタンのところにいた。
昨日、家族と話した内容をそのままトリスタンに話すと、真面目な顔をして静かに聞いてくれた。
「っていう話をしたのよ」
全て話し終えると何か言いたげな顔をしていたが、私は気にせず続ける。
「トリスタンはさ、王立学園で運命の人と巡り会えると思う?」
言いながら、少しだけ未来のことを考えてしまう。
トリスタンが「運命の人」を見つけたらどうなってしまうのだろうか。
今で通りになんて、きっとならない。
「僕が運命の相手と出会う前提なんだな」
苦笑いのトリスタン。
彼も想像できないようだ。
だけど、彼もそういった相手といつか巡り会うのだと思う。
「お兄さまは、義姉さまと王立学園で出会ったのよ。だからトリスタンもきっとそうよ」
ロータスとは違い。トリスタンと私は血が繋がっていない。
トリスタンを愛した人が、もしも、私に接するトリスタンの様子を見て傷ついてしまわないか心配だ。
それとも、距離を取られてしまうかもしれない。そうなったら、私は寂しく思うのか、悲しく思うのか、意外と何とも思わないのか。わからない。
先のことを考えるのは少し辛い。
「確かそうだったな」
「うだつの上がらない気の弱いつまらない男なのに、あれがいいって言うのよ。義姉様は、恋って盲目だと思わない?」
妹の私から見て、兄は優しいけどそこが欠点でもあった。もう少し頼り甲斐があってもいいのでは、と、思うのだ。
そんな兄が好きだと言うクロエがとても物好きにしか見えなかった。
恋の盲目さが怖い。
「実の兄に向かってそこまで言わなくていいんじゃないのか?」
「だって、事実じゃない。トリスタンもそんな人と出会えると思う?」
質問しながら、そんな相手見つからなければいいのに。と思ってしまう。きっと、寂しいのだ。
「いや、そんなこと聞かれても困るんだけど」
トリスタンは困った顔だ。
それは、そうだ。学びに王立学園に行くのに、運命の相手を見つけようとするなんておかしな話だ。
だけど、そんな日が必ず来る。
広い世界を見たトリスタンは、「選んだ相手」とともにこの地に戻ってくる。そして、根を張りデュラン家を繁栄させていく。
私はどんな相手と結婚するのだろうか。
きっと、私は兄やトリスタンのように広い世界を知ることなどなく、「適当な相手」と結婚するのだろう。
それでいいのか。と言われたら。わからない。たぶん、それが幸せなのだと思うから。
「そうよね。確かに、でも、寂しくなっちゃうな。私も結婚したら家を出るでしょ?たぶん、農夫になると思うんだけど」
「えっ?!」
トリスタンは、なぜか取り乱していた。
何を今更という気分だ。
いつも一緒にいた。妹のような存在がいなくなる事が想像できないのかもしれない。
私の家は貴族とはいえ田舎の末端だ。豪農と結婚できるのなら万々歳ではないか。
「いや、だって、食べていくなら大きな土地持ってる農夫と結婚した方が良くない?」
「……そうなのか」
「そうよ。まだ婚約者が決まらないけど、トリスタンが王立学園を卒業するころには、決まってるかもね」
「……そうか」
トリスタンは、しばらく項垂れて何も話さなかった。
と、思ったら突然部屋から出て行って戻ってはこなかった。
いくら待っても彼は戻ってこなかったから、仕方なく帰った。
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昨日、家族と話した内容をそのままトリスタンに話すと、真面目な顔をして静かに聞いてくれた。
「っていう話をしたのよ」
全て話し終えると何か言いたげな顔をしていたが、私は気にせず続ける。
「トリスタンはさ、王立学園で運命の人と巡り会えると思う?」
言いながら、少しだけ未来のことを考えてしまう。
トリスタンが「運命の人」を見つけたらどうなってしまうのだろうか。
今で通りになんて、きっとならない。
「僕が運命の相手と出会う前提なんだな」
苦笑いのトリスタン。
彼も想像できないようだ。
だけど、彼もそういった相手といつか巡り会うのだと思う。
「お兄さまは、義姉さまと王立学園で出会ったのよ。だからトリスタンもきっとそうよ」
ロータスとは違い。トリスタンと私は血が繋がっていない。
トリスタンを愛した人が、もしも、私に接するトリスタンの様子を見て傷ついてしまわないか心配だ。
それとも、距離を取られてしまうかもしれない。そうなったら、私は寂しく思うのか、悲しく思うのか、意外と何とも思わないのか。わからない。
先のことを考えるのは少し辛い。
「確かそうだったな」
「うだつの上がらない気の弱いつまらない男なのに、あれがいいって言うのよ。義姉様は、恋って盲目だと思わない?」
妹の私から見て、兄は優しいけどそこが欠点でもあった。もう少し頼り甲斐があってもいいのでは、と、思うのだ。
そんな兄が好きだと言うクロエがとても物好きにしか見えなかった。
恋の盲目さが怖い。
「実の兄に向かってそこまで言わなくていいんじゃないのか?」
「だって、事実じゃない。トリスタンもそんな人と出会えると思う?」
質問しながら、そんな相手見つからなければいいのに。と思ってしまう。きっと、寂しいのだ。
「いや、そんなこと聞かれても困るんだけど」
トリスタンは困った顔だ。
それは、そうだ。学びに王立学園に行くのに、運命の相手を見つけようとするなんておかしな話だ。
だけど、そんな日が必ず来る。
広い世界を見たトリスタンは、「選んだ相手」とともにこの地に戻ってくる。そして、根を張りデュラン家を繁栄させていく。
私はどんな相手と結婚するのだろうか。
きっと、私は兄やトリスタンのように広い世界を知ることなどなく、「適当な相手」と結婚するのだろう。
それでいいのか。と言われたら。わからない。たぶん、それが幸せなのだと思うから。
「そうよね。確かに、でも、寂しくなっちゃうな。私も結婚したら家を出るでしょ?たぶん、農夫になると思うんだけど」
「えっ?!」
トリスタンは、なぜか取り乱していた。
何を今更という気分だ。
いつも一緒にいた。妹のような存在がいなくなる事が想像できないのかもしれない。
私の家は貴族とはいえ田舎の末端だ。豪農と結婚できるのなら万々歳ではないか。
「いや、だって、食べていくなら大きな土地持ってる農夫と結婚した方が良くない?」
「……そうなのか」
「そうよ。まだ婚約者が決まらないけど、トリスタンが王立学園を卒業するころには、決まってるかもね」
「……そうか」
トリスタンは、しばらく項垂れて何も話さなかった。
と、思ったら突然部屋から出て行って戻ってはこなかった。
いくら待っても彼は戻ってこなかったから、仕方なく帰った。
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