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プロローグ
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私には婚約者がいる。
彼の名前はトリスタンといい。私より二つ年上で遠くにある王立学園に下宿して通っている。
彼がここを離れる時、私はある覚悟をしていた。
彼に運命の相手と巡り会う事だ。
そんな事なければいいのに、と、思っていたけれど現実は非情だった。
トリスタンの卒業パーティーをあと3ヶ月後に控えていたある日、綺麗な少女が私が住む屋敷へとやってきた。
彼女は、フリルがふんだんに使われた妖精のような綺麗なドレスを身に纏い。目を惹く真っ赤な唇をしていた。
私がイメージする都会に住む女性そのものだった。
その女性は、名指しで私を呼び出し、私の顔を見ると一瞬だけ目を見開いた。
そして、全身をくまなく見た後に、馬鹿にするように鼻で笑った。
「貴女が、ポーリーンっていうの?」
「は、はい」
「ふーん、田舎くさい場所に住んでいるだけあって顔も名前もパッとしないわね」
その女性は名乗りもせずに、私のことをこき下ろした。
そういえば、用件すら聞いていない。
「何の用事ですか?」
「ねえ、私、トリスタンの恋人なの」
突然のカミングアウトに、私は何も言えずに固まってしまった。
異性の友人はいるとは聞いたが、ハメを外しすぎなのではないか。
あまりの事に、続きの言葉が出てこないと、女性は大きなため息を吐いた。
「言わないとわからないの?田舎者だから察しが悪いのかしら。彼を解放してくれない?」
「……トリスタンからは何も聞いていないわ」
解放するもなにも、トリスタンからは何も聞いていない。
婚約を解消するにしても当事者が頭を下げるべきなのではないか。
なぜ、恋人がしゃしゃり出てきて、一方的に婚約破棄を迫るのか。
「子供じみた駄々をこねるのはやめてくれる?みっともない」
「……私は貴女の話を聞きたいんじゃない。トリスタンから話を聞きたいの」
みっともないもなにも、私の言い分がおかしいはずがない。
「ねえ、そうやってわがままを言ったところで、彼は貴女を捨てるわ。認めたらどうなの?」
女性は勝ち誇った顔をして私を指さした。
不意にちらりと見覚えのある。というよりも、私が身につけているネックレスと同じものが目に入った。
「……それ、そのネックレス」
私の問いかけに女性は意地悪そうににやりと笑った。
「ああ、これ?トリスタンが私にくれたのよ。貴女のそのネックレスも私が選んだの。ねえ、トリスタンがプレゼントしてくれた。なんて思ってた?ただの機嫌取りのためのプレゼントよ」
あの、トリスタンからネックレスをプレゼントされた時、私は驚きとともにとても嬉しかった。
悩んで選んでくれたのだとわかったから。
初めて家族からアクセサリーをプレゼントされた時と同じくらいの嬉しかったのだ。
それなのに、このネックレスは彼女が選んだ物だったなんて。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
私を彼女は嘲笑う。
洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに。
「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女は、ティーカップを手に取り中身をみて、顔を顰めて元に戻した。
そういえば、一度も口をつけてない。
まるでお前など相手にするつもりはない。と、言わんばかりに見えた。
「あ、貴女みたいな冴えない田舎者なんて誰からも相手にされないか。お金持ちの商人の愛人としてなら紹介してあげてもいいわよ」
女性は声を出して笑って、「じゃあ、ちゃんとしてね」と言い残して帰って行った。
そして、残された私は家族に手紙を書いた。
何も言わずに出ていくわけじゃないから問題はないはずだ。
一度、トリスタンとちゃんと話をしなくてはいけない。
それが、自分が傷つく結果になってしまったとしても。
彼の名前はトリスタンといい。私より二つ年上で遠くにある王立学園に下宿して通っている。
彼がここを離れる時、私はある覚悟をしていた。
彼に運命の相手と巡り会う事だ。
そんな事なければいいのに、と、思っていたけれど現実は非情だった。
トリスタンの卒業パーティーをあと3ヶ月後に控えていたある日、綺麗な少女が私が住む屋敷へとやってきた。
彼女は、フリルがふんだんに使われた妖精のような綺麗なドレスを身に纏い。目を惹く真っ赤な唇をしていた。
私がイメージする都会に住む女性そのものだった。
その女性は、名指しで私を呼び出し、私の顔を見ると一瞬だけ目を見開いた。
そして、全身をくまなく見た後に、馬鹿にするように鼻で笑った。
「貴女が、ポーリーンっていうの?」
「は、はい」
「ふーん、田舎くさい場所に住んでいるだけあって顔も名前もパッとしないわね」
その女性は名乗りもせずに、私のことをこき下ろした。
そういえば、用件すら聞いていない。
「何の用事ですか?」
「ねえ、私、トリスタンの恋人なの」
突然のカミングアウトに、私は何も言えずに固まってしまった。
異性の友人はいるとは聞いたが、ハメを外しすぎなのではないか。
あまりの事に、続きの言葉が出てこないと、女性は大きなため息を吐いた。
「言わないとわからないの?田舎者だから察しが悪いのかしら。彼を解放してくれない?」
「……トリスタンからは何も聞いていないわ」
解放するもなにも、トリスタンからは何も聞いていない。
婚約を解消するにしても当事者が頭を下げるべきなのではないか。
なぜ、恋人がしゃしゃり出てきて、一方的に婚約破棄を迫るのか。
「子供じみた駄々をこねるのはやめてくれる?みっともない」
「……私は貴女の話を聞きたいんじゃない。トリスタンから話を聞きたいの」
みっともないもなにも、私の言い分がおかしいはずがない。
「ねえ、そうやってわがままを言ったところで、彼は貴女を捨てるわ。認めたらどうなの?」
女性は勝ち誇った顔をして私を指さした。
不意にちらりと見覚えのある。というよりも、私が身につけているネックレスと同じものが目に入った。
「……それ、そのネックレス」
私の問いかけに女性は意地悪そうににやりと笑った。
「ああ、これ?トリスタンが私にくれたのよ。貴女のそのネックレスも私が選んだの。ねえ、トリスタンがプレゼントしてくれた。なんて思ってた?ただの機嫌取りのためのプレゼントよ」
あの、トリスタンからネックレスをプレゼントされた時、私は驚きとともにとても嬉しかった。
悩んで選んでくれたのだとわかったから。
初めて家族からアクセサリーをプレゼントされた時と同じくらいの嬉しかったのだ。
それなのに、このネックレスは彼女が選んだ物だったなんて。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
私を彼女は嘲笑う。
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「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女は、ティーカップを手に取り中身をみて、顔を顰めて元に戻した。
そういえば、一度も口をつけてない。
まるでお前など相手にするつもりはない。と、言わんばかりに見えた。
「あ、貴女みたいな冴えない田舎者なんて誰からも相手にされないか。お金持ちの商人の愛人としてなら紹介してあげてもいいわよ」
女性は声を出して笑って、「じゃあ、ちゃんとしてね」と言い残して帰って行った。
そして、残された私は家族に手紙を書いた。
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それが、自分が傷つく結果になってしまったとしても。
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