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しおりを挟む俺たちの所属している騎士団にはいくつかのグループに分けられている。
俺のいる団は、第三騎士団といって平民たちが所属している。
ちなみにユステルもそうだ。
ユステルは男爵家の三男だが、本人が希望してここに所属したらしい。
なんでも、「貴族といると肩が凝る」だそうだ。
実際に貴族の騎士は、お高く止まっていてあまり好かない。
そして、バーニーが所属しているのは、第二騎士団といって貴族が主にいる。
護衛対象はそれぞれ違い。他にも、分岐している。
ちなみに第一騎士団は、王族の警護をしている。
バーニーとは、騎士団が違うが入団時期が同じのため、ちょくちょく話す事が多かった。
バーニーは貴族のくせに、性格がよく、分け隔てなく、いい奴。
なんなんだろうな。ここまで来ると嫌味のような奴にしか見えないのだが、いい奴過ぎるので嫌いにはなれない。
嫌いになれたらいいのだけれど。
とにかく、今日こそ、色々とぶちまけてやる!
俺はそう息巻いて、「バーニー!」と大きな声で名前を呼んだ。
バーニーは、一瞬だけ驚いたように目を見開いて、すぐに人好きのするような笑みを浮かべた。
顔が整っている奴の笑顔は破壊力がある。
もう、俺はすでに戦意を喪失しかけてしまう。
「レイナード、おはよう」
ふわっと。なんか、いい匂いがした気がした。
フェロモンなのだろうか、高貴な奴はきっとこんないい匂いを纏っているのだと思う。
もう、この段階で俺の負けは確定したような気分になった。
こいつを貶すことなんて俺にはできない。
だって、年下の平民に呼び捨てにされても笑顔でいるような貴族なんていないのだから。
何か言わなきゃ。
俺は脳みそをフル活動させて、必死になってバーニーの悪口を考える。
「おい、バーニー!今日も肌がプルプルだな」
口を開いた瞬間に俺は転びたくなった。
言っておいてアレだが、肌がプルプルってなんだよ。
俺は心の中でツッコミを入れた。
「えっ?」
バーニーはというと、頬を軽く押さえながら、戸惑いつつも照れ臭そうに笑っている。
男のくせに可愛い。
「……っ!」
俺を後から追いかけてきた、ユステルが吹き出しているのが聞こえた。
見なくてもわかる。絶対に笑っているはずだ。
「ウエストの位置がユステルより高いし、脚が長い!リーチが長いってことはとても有利だ!」
貶すどころか誉めている。
悪いところなんてないのに、酷い事なんて言えなくないか?
「ありがとう」
バーニーは、本当に嬉しそうにお礼を言った。
だから、嫌いになれないんだ。
「そ、それに、お前性格もいいし、優しいし、いい奴だし」
「う、うん」
「男の俺が見てもいい男だ!今日も、いっつもそうだぞ」
俺、本当に何言ってるんだろ。
酷い事言うつもりだったのに、なんで誉めてるんだよ。
だって、貶すところが全くないのだから仕方ないじゃないか。
「ありがとう」
こいつ、俺に褒められて気持ち悪い。と、思わなのだろうか。
冷静に考えてみると気持ち悪くないのか。
野郎から褒められているというのに嬉しそうで、もう、なんというか人としての差を感じてしまう。
バーニーには、傲慢さが全くないのだ。
負けだ。負け。絶対に勝てない気すらする。
「じゃあな!」
貶す事などできず。俺は自分のカッコ悪さを感じながら慌てて走って逃げた。
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