俺だけのうさぎ

毛蟹葵葉

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「レイ!」
  
 次の日、詰所に行くとニヤけた顔のユステルに声をかけられた。
 こいつはチビの俺よりも背が高く、よく見ると地味に顔も整っているので地味に人気があったりする。そう、あくまでも地味にだ。
 異性に優しいし、性格もいい。
 つまり、俺の敵。

 何だよ。地味にイケメンな顔しやがって、俺は引き立て役なんかじゃないんだぞ!

 理不尽でしかないが、フラれたせいで心の中で八つ当たりをしてしまう。
 
「……またフラれたのか?」

 ユステルは、見事に俺がフラれた事を知っていた。
 もしかして、あのレストランにいたのか。
 こいつなら十分にあり得る。なぜなら、俺を揶揄うことに人生をかけているような男だからだ。
 
「な、何で知ってるんだよ!」

 俺は、つい認めてしまった。
 途端に、ユステルは吹き出した。
 短く切られた蜂蜜色の髪の毛が緩く揺れて、褐色の瞳はイタズラっぽく細められた。

 ああ、腹が立つほどにかっこいい。
 俺にもそういった雄くささがあれば、少しは女の子に男として見られたかもしれないのに。
 あいにくそういったところはない。俺はずっとチビガリで、何しても筋肉はつかない。

「え、マジでフラれたの?カマかけただけなのに、自爆するなよ」
「う、うるさい!文句あるか!」

 俺の過去の告白戦績から適当に言い当てたようだ。
 もしかしたら、フラれると分かっていて止めなかったのかもしれない。
 頼むから、止めてくれ。恥をかいてしまったじゃないか。
 ……いや、止められてもたぶん告白してた。
 
「なあ、そろそろ、百告百フラれリーチかかってないか?」
「だ、黙れ!」

 また、ユステルはニヤケ顔だ。
 こいつ。一生俺をネタキャラにするつもりのようだ。
 
「まあ、百一回プロポーズして受け入れてもらった人もいるから気長に待てよ。で、何でダメだったんだ?」

 微妙な励ましと、フラれた理由を聞いてくるユステル。
 
「バーニーが好きだって」
「あぁ、なるほど」

 いつものように理由を教えると、だよな。と、言わんばかりだった。
 酷くないか?
 
「お前も、俺よりアイツの方がいい男だと思ってるんだろ!そうだよ、俺もそう思うもん。アイツいい男だし!悪いところないし、いいところしか見つからないし、アイツがいる限り俺はフラれ続けるんだ!」

 言いながら悲しくなってきた。ちょっと涙も出てきた。
 
「お、落ち着けよ。お前、錯乱しすぎだろ」
「落ち着けるかッ!何やっても勝てない相手だぞ!」
「もう、勝ち負け考えるのやめろよ。色々と間違ってるからな」

 言われてみればその通りだが、でも、実際にフラれている理由はバーニーなのだ。
 
「……そうだよな。俺は恋人が欲しいんだ」

 そう、俺は恋人が欲しいのだ。
 休日は、むさ苦しいユステルと飯に行くのではなくて、可愛い女の子と行きたい。

 それに、可愛くて美味しいスイーツを女の子とシェアして食べたいのだ。
 あーん。とか、してあげたいししてもらいたい。
 それから先のことは、ちょっと、想像できないが。
 経験はないけれど、色々と話は聞いているので、ゆっくり関係は進めていきたい。
 相手が不安がるのなら、まずは、交換日記から始めて、じっくりと関係を深めていきたい。

 そう考えながら、俺はあることに気がついた。
 今までがっつきすぎだったのだということだ。
 逆に考え方を変えてみよう。

「そうだ。いいこと思いついた!」
「どうした?」

 ユステルは、不思議そうな顔をして耳を傾けてきた。
 やはり、俺の天才的な閃きには気が付かなかったようだ。
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