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期待
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神殿に到着すると、待ち構えていたかのようにアンヌが走ってやってきた。
「アイオラさん!待ってました!」
アンヌは待ちきれないと言わんばかりに、私に抱きついてきた。
本の中では、私が辛く当たっていた彼女がこんなふうに接してくれるなんて思いもしなかった。
マリネッタもアンヌも、私が神殿に来るときは何かと気にかけてくれていた。
本では敵対していた存在も、今では友好的な存在になっている。
なんだか、不思議な気分。
「アンヌさん、ダメよ。今は聖女様なのだから」
マリネッタは、アンヌの態度を窘める。
確かに、神官が聖女に対してあまりにも気楽に接しているのは良くない事かもしれない。
「そ、そうでしたね。申し訳ありません」
でも、聖女になったからといって何が変わったのだろうか。
神聖力は身についたがそれだけだ。
聖女がいなくても平和とは言い難いが、この世界はちゃんと成り立っているのだ。
聖女は重要な存在かもしれないが、そこまで神格化しなくてもいいのでは、と私は思っていた。
だから、二人には変わってほしくなかった。
「あの、変わらず。アイオラと呼んでください」
「それじゃ、示しがつかないじゃないですか」
マリネッタは、やはり不満そうな顔をした。
「聖女のわがままという事でお願いします」
「……本当に貴女は」
わがまま。を通すとマリネッタは困った顔で笑った。
仕方がないな。と、言わんばかりに。
「あ、ねえ、聖石を触らせてもらっても大丈夫ですか?」
「あ、アンヌさんもですか、何かあるんですか?」
「聖女の聖石を触ったら幸せになれるらしいですよ」
昔聞いた事があるのだが、走っている引越し車のふんどしを触ったら幸せになれるという。あれのようなものなのだろうか。
「そんなのただの言い伝えよ。信じなくていいから」
マリネッタは、アンヌの言うことを気にしなくていいと笑った。
触るたびに幸せになれるなんて、そんないい話なんてない。
「は、はい」
「……ところで、私も触ってもいいかしら?」
マリネッタは、おずおずと私に聞いてきた。
少し恥ずかしそうだ。
「えっ、えぇ!?」
「べっ、別に、文献にしか載ってないし、どんな感触なのかずっと知りたかったの!」
ツン混じりの言い訳に、私はマリネッタが意外とミーハーな事に驚いた。
ここは、本の中の世界ではない。現実だ。
本の中にあるものはほんの一部だ。
けれど、こんなにも本の世界にいた人たちがまるで別人なのは、なんだか面白い。
そういう意味なら、私も別人でしかないのだけれど。
だからこそ期待してしまった。
カオリとは友達になれるのではないかと。
「アイオラさん!待ってました!」
アンヌは待ちきれないと言わんばかりに、私に抱きついてきた。
本の中では、私が辛く当たっていた彼女がこんなふうに接してくれるなんて思いもしなかった。
マリネッタもアンヌも、私が神殿に来るときは何かと気にかけてくれていた。
本では敵対していた存在も、今では友好的な存在になっている。
なんだか、不思議な気分。
「アンヌさん、ダメよ。今は聖女様なのだから」
マリネッタは、アンヌの態度を窘める。
確かに、神官が聖女に対してあまりにも気楽に接しているのは良くない事かもしれない。
「そ、そうでしたね。申し訳ありません」
でも、聖女になったからといって何が変わったのだろうか。
神聖力は身についたがそれだけだ。
聖女がいなくても平和とは言い難いが、この世界はちゃんと成り立っているのだ。
聖女は重要な存在かもしれないが、そこまで神格化しなくてもいいのでは、と私は思っていた。
だから、二人には変わってほしくなかった。
「あの、変わらず。アイオラと呼んでください」
「それじゃ、示しがつかないじゃないですか」
マリネッタは、やはり不満そうな顔をした。
「聖女のわがままという事でお願いします」
「……本当に貴女は」
わがまま。を通すとマリネッタは困った顔で笑った。
仕方がないな。と、言わんばかりに。
「あ、ねえ、聖石を触らせてもらっても大丈夫ですか?」
「あ、アンヌさんもですか、何かあるんですか?」
「聖女の聖石を触ったら幸せになれるらしいですよ」
昔聞いた事があるのだが、走っている引越し車のふんどしを触ったら幸せになれるという。あれのようなものなのだろうか。
「そんなのただの言い伝えよ。信じなくていいから」
マリネッタは、アンヌの言うことを気にしなくていいと笑った。
触るたびに幸せになれるなんて、そんないい話なんてない。
「は、はい」
「……ところで、私も触ってもいいかしら?」
マリネッタは、おずおずと私に聞いてきた。
少し恥ずかしそうだ。
「えっ、えぇ!?」
「べっ、別に、文献にしか載ってないし、どんな感触なのかずっと知りたかったの!」
ツン混じりの言い訳に、私はマリネッタが意外とミーハーな事に驚いた。
ここは、本の中の世界ではない。現実だ。
本の中にあるものはほんの一部だ。
けれど、こんなにも本の世界にいた人たちがまるで別人なのは、なんだか面白い。
そういう意味なら、私も別人でしかないのだけれど。
だからこそ期待してしまった。
カオリとは友達になれるのではないかと。
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