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普通の男の子になりたい

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「イブ、僕は学園に行ったら一人の男の子になりたい。それを認めて欲しいんだ」

婚約者であるこの国の皇太子、キッキに何の前触れもなくそんな事を言われてイブは戸惑った。
二人とも王立学園の入学を控えていたので、そのために出たものなのだろうとイブはすぐに気がついた。

しかし、疑問はある。

(普通の男の子とはどういう意味なのかしら……?)

「普通の男の子とはどういう意味なのでしょうか?」

イブは気になった事を質問するが、キッキは話したくないと言わんばかりだった。

「普通って言ったら普通だよ!人並みの事を経験したいんだ」

イブはますます意味がわからなくなった。
やましいことでもあるのかもしれない。しかし、キッキはそれ以上言いたくなさそうで、絶対に教えてはくれそうにない。

それに、普段は穏やかなキッキが、かなり強めの口調でそんな事を言い出すこと自体が珍しかった。

「もちろん、浮気なんてしない。君を大切にするよ。だけど、学園での僕のやり方にあまり干渉しないで欲しい」

はっきりとした拒絶にイブは悲しくなった。
浮気はしないと言うものの、キッキが学園でどのような行動をするのか想像もつかない。
それに、浮気の定義は人それぞれだ。
『不貞』を浮気ととるか、それとも異性と軽い『接触』を浮気ととるか、人によって違う。

キッキの事が信用できないわけではないが、イブは不安で仕方なかった。

「本当に浮気はしないんですね……?」

イブが不安げに問いかけると、キッキは「大丈夫だから」と言って微笑んだ。
イブは渋々ながも了承した。

不安になりながらも大丈夫だと自分に言い聞かせてイブは入園式の日を迎えた。
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