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真相2
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奏介はなぜ死んだのだろう?私が次に頭に浮かんだ疑問はそれだった。予想はなんとなく出来てはいるが。しかし、予想は予想だ。
目の前で一人で苦しみながら死んで行った彼は、自ら死んだということになるのか。
「奏介さんはなぜ亡くなったのですか?」
「高カリウム血症です」
「そうですか」
私はすぐに合点がいった。彼が時おり話していた。「身体の違和感」は高カリウム血症によるものだったのか。
なぜ気がつかなかったのだろう?何度も彼はそれを話していたのに。
あの時、奏介は朔也に殴りかかって私は冷静に考えられなかった。もっと早く気がついていれば、彼だけは亡くなることはなかったかもしれない……。
実は引っ掛かっていた。けれど、何も言わなかった。
後悔があの時の奏介にされたように、自分の首を絞めるようで息苦しくなってきた。悪く言えば見殺しにしたようなものだ。
「だから胸が苦しいと話していたのね。確かに舌がしびれると話していた。あれは、高カリウム血症の症状なんです」
しかし、彼はどうやってカリウムの高い物を食べ続けることができたのだろう?
食事は朔也が気を付けていたはずた。こっそり何かキッチンからくすねていなければまた別だ……。
食事で満足できなかったら、奏介は朔也になにか作って貰っていた。キッチンから食材を勝手に持っていく可能性は高い。
それに、病気に対しての理解は薄く。食べてはいけないものを食べていたかもしれない。
「その、奏介さんの胃から何か出てきましたか?」
「生憎何も出ませんでした。しかし」
彼は気になるところで言葉を切った。
「しかし?」
「部屋の至るところにドライフルーツが落ちていました」
「ドライフルーツ?」
ドライフルーツはカリウムが高かったはずだ。もしも、奏介がそれをたくさん食べていたら、高カリウム血症になったとしてもおかしくない。
「朔也さんが、ドライフルーツがの減りが早いと話していました」
「やはり彼が食べていたのかもしれませんね」
奏介は節制の出来ない人間だ。だからこそ、何か言われないように食べ物を盗んだとしても何も疑問はない。
私は何度か彼に注意していた。それが鬱陶しいと思ったのかも。朔也とずっと一緒にいたし……。
しかし、臆測でしか考えられない。本人はこの世には居ないのだから。
「なんだか嫌な感じ。説明が出来ないんだけど。不可解な事ばかりで」
「ええ、そうですね」
警察官も同じような事を言い眉を寄せた。
「調べれば調べるほど謎が深まっていくんです」
「え?」
それは、もうお手上げといたった様子だった。
「与一さんの件ですが、彼は香織さんに殺される前に自殺を図っております」
与一は殺される前に自殺を図ったとはどういう事なのだろうか?しかし、どのような手段で?
彼にそんな体力などないはずだ。
「なぜそれがわかったのですか?死因は」
「モルヒネの過剰使用です」
与一は末期がんだった。それなら在宅でモルヒネを使用していても何もおかしくない。
彼一人で管理するのは難しいかもしれないが、周囲の協力があればそれができる。
「彼はモルヒネを使用していたんですね。あれは、大量に使うと呼吸抑制がかかります。もしかして、それで自殺を?」
医師が癌患者の衰弱死を懸念して、モルヒネの使用を躊躇する話はよく聞く。
「そうです」
モルヒネを使用するにしても機材が必要なはずだ。しかし、あの時与一の部屋で私はあるものを見た。持続点滴の機械だ。あれと一緒に使用するなら持っている事に説明がつく。
「PCAですか?」
PCAとは在宅などで、モルヒネなどを使用して痛みの自己調節ができる機械の事だ。
「やはり専門の方はすぐに思い浮かぶものなのですね」
警察官は感心したように私を見たが、あの段階でも気がつけなかった事が悔やまれた。気がついていればまた事態は変わっていたかもしれないのに。
何から何まで後手に回っていた。本当にあの時私は何をしていたのだろう。
「在宅で自由に麻薬を使用できるのはそれしかありません。それに、彼は点滴をしていたようですし、食事もあまり食べていませんでした。恐らく点滴と一緒にそれを使用していたのでしょう」
「そうですね、与一さんの栄養状態はかなり悪かったですし、注射痕もありました」
しかし、彼はなぜ自殺を図ったのだろう?痛みに耐えながら生きることが嫌になったからだろうか。
しかし、初めて出会ったときのあの表情は生きることを諦めていた人のそれではなかった。
ギラギラと輝くような瞳は、むしろ生きることに執着しているように思えた。
「彼が自殺なんて……」
「信じられませんか?」
「はい」
私は素直に認められなかった。
「しかし、もっと信じられない事があります」
彼の表情は苦々しい物で、私はとても嫌な予感がしていた。
「この事件は全て才賀与一の手の上で踊らされて起こったものでした。」
目の前で一人で苦しみながら死んで行った彼は、自ら死んだということになるのか。
「奏介さんはなぜ亡くなったのですか?」
「高カリウム血症です」
「そうですか」
私はすぐに合点がいった。彼が時おり話していた。「身体の違和感」は高カリウム血症によるものだったのか。
なぜ気がつかなかったのだろう?何度も彼はそれを話していたのに。
あの時、奏介は朔也に殴りかかって私は冷静に考えられなかった。もっと早く気がついていれば、彼だけは亡くなることはなかったかもしれない……。
実は引っ掛かっていた。けれど、何も言わなかった。
後悔があの時の奏介にされたように、自分の首を絞めるようで息苦しくなってきた。悪く言えば見殺しにしたようなものだ。
「だから胸が苦しいと話していたのね。確かに舌がしびれると話していた。あれは、高カリウム血症の症状なんです」
しかし、彼はどうやってカリウムの高い物を食べ続けることができたのだろう?
食事は朔也が気を付けていたはずた。こっそり何かキッチンからくすねていなければまた別だ……。
食事で満足できなかったら、奏介は朔也になにか作って貰っていた。キッチンから食材を勝手に持っていく可能性は高い。
それに、病気に対しての理解は薄く。食べてはいけないものを食べていたかもしれない。
「その、奏介さんの胃から何か出てきましたか?」
「生憎何も出ませんでした。しかし」
彼は気になるところで言葉を切った。
「しかし?」
「部屋の至るところにドライフルーツが落ちていました」
「ドライフルーツ?」
ドライフルーツはカリウムが高かったはずだ。もしも、奏介がそれをたくさん食べていたら、高カリウム血症になったとしてもおかしくない。
「朔也さんが、ドライフルーツがの減りが早いと話していました」
「やはり彼が食べていたのかもしれませんね」
奏介は節制の出来ない人間だ。だからこそ、何か言われないように食べ物を盗んだとしても何も疑問はない。
私は何度か彼に注意していた。それが鬱陶しいと思ったのかも。朔也とずっと一緒にいたし……。
しかし、臆測でしか考えられない。本人はこの世には居ないのだから。
「なんだか嫌な感じ。説明が出来ないんだけど。不可解な事ばかりで」
「ええ、そうですね」
警察官も同じような事を言い眉を寄せた。
「調べれば調べるほど謎が深まっていくんです」
「え?」
それは、もうお手上げといたった様子だった。
「与一さんの件ですが、彼は香織さんに殺される前に自殺を図っております」
与一は殺される前に自殺を図ったとはどういう事なのだろうか?しかし、どのような手段で?
彼にそんな体力などないはずだ。
「なぜそれがわかったのですか?死因は」
「モルヒネの過剰使用です」
与一は末期がんだった。それなら在宅でモルヒネを使用していても何もおかしくない。
彼一人で管理するのは難しいかもしれないが、周囲の協力があればそれができる。
「彼はモルヒネを使用していたんですね。あれは、大量に使うと呼吸抑制がかかります。もしかして、それで自殺を?」
医師が癌患者の衰弱死を懸念して、モルヒネの使用を躊躇する話はよく聞く。
「そうです」
モルヒネを使用するにしても機材が必要なはずだ。しかし、あの時与一の部屋で私はあるものを見た。持続点滴の機械だ。あれと一緒に使用するなら持っている事に説明がつく。
「PCAですか?」
PCAとは在宅などで、モルヒネなどを使用して痛みの自己調節ができる機械の事だ。
「やはり専門の方はすぐに思い浮かぶものなのですね」
警察官は感心したように私を見たが、あの段階でも気がつけなかった事が悔やまれた。気がついていればまた事態は変わっていたかもしれないのに。
何から何まで後手に回っていた。本当にあの時私は何をしていたのだろう。
「在宅で自由に麻薬を使用できるのはそれしかありません。それに、彼は点滴をしていたようですし、食事もあまり食べていませんでした。恐らく点滴と一緒にそれを使用していたのでしょう」
「そうですね、与一さんの栄養状態はかなり悪かったですし、注射痕もありました」
しかし、彼はなぜ自殺を図ったのだろう?痛みに耐えながら生きることが嫌になったからだろうか。
しかし、初めて出会ったときのあの表情は生きることを諦めていた人のそれではなかった。
ギラギラと輝くような瞳は、むしろ生きることに執着しているように思えた。
「彼が自殺なんて……」
「信じられませんか?」
「はい」
私は素直に認められなかった。
「しかし、もっと信じられない事があります」
彼の表情は苦々しい物で、私はとても嫌な予感がしていた。
「この事件は全て才賀与一の手の上で踊らされて起こったものでした。」
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