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アイツとシビルと別れをした俺は城に向かった。
俺の本来の契約者は王族だから。
正確にいえば「寿命を差し出す間だけは、この国に魔物を入れないように」という願いを叶えただけだが。
俺は聖女だが願いを叶えるには寿命が足りなかった。
「よう、はじめまして、シーカー家との契約は破棄された。本来の契約者のお前との契約を遂行しようか」
「なんだと!?」
国王の前に姿を見せると、奴は驚いた顔をして椅子からひっくり返った。
そこにはちょうどロシェルもいた。
俺は王族に腹を立てていた。国は守りたい。しかし、死にたくはない。その犠牲になったのはシーカー家だ。
善良なシーカー家の子供たちは、国が混乱することを憂いて自分の寿命を差し出し続けた。
それも、終わったことだが。
「とりあえず。王族のお前の寿命の全てをもらおうか」
「やめろ!それならケネスから」
「アイツは、王族の名をもらっていないだろう?だから、お前からもらう」
真っ先に、庶出のケネスの名前を出した王を俺は完全に見限った。
寿命を全て貰うつもりはなかったが、優しさを見せるのはやめた。
「うわぁぁ!!」
俺が国王から寿命を貰うと、奴はミイラのように干からびた。
そして、ロシェルに顔を向けると奴は青ざめた顔で俺を見た。
「次はお前だな。俺は怒ってるんだ。お前の先祖と契約したのに、命をもらう対象を勝手に変更されて、その賠償はお前達が返すんだ」
「やめろ!俺が早死にしたらこの国は……」
「ケネスがいるだろう?代わりにあいつが国王になればいい。お前はこの国を守るためにタネを撒き続けろ」
「嫌だ!」
「そうだな。助かる方法はひとつだけ、子供を出来るだけたくさん作ることだ。そうだな、相手はヘンウッド家の養子にするといい」
「……わかった。子供を作ればいいんだな」
「ケネスは殺すな。もしも、手をくだしたらお前を苦しめて殺してやる」
「ひいっ」
「今はお前の父親の寿命をもらったから、身体に取り憑くのはしばらくしてからにしてやる」
「わかった」
ロシェルは俺の言うことを間に受けてルシンダをまちづけるだろう。
助かるのはコイツの子供だけだが……。
そして、俺はもう一つすることがあった。
「よう、お前、この国の王にならないか?」
シビルと同じように拘束された、ケネスに俺は声をかけた。
「シビル?いや、違う?」
ケネスは俺の顔を見て不思議そうに首を傾ける。
「俺は悪魔、そろそろお前も解放されるだろうから、この国の王にならないか?」
「嫌ですよ」
即答に思わずその場で転びそうになった。
「なぜだ!」
「僕は、シビルと一緒に辺境でのんびり生活するんだ」
こいつ、野心というものが全くないのか!?
俺はあんぐりと口を開いてしまう。
「お前がやらないと困るんだよ。シビルとシーカーにも火の粉が飛ぶし」
「はあ、それは仕方ないですね。僕やります」
嫌がっておいて、すぐにやると言い出したケネスに俺はちょっとだけイラっとした。
「なんなんだよ。お前」
「僕は友達は大切にする主義なんですよ。恋のライバルでも応援するんですよ」
ケネスはそう言ってにっこりと笑った。
程なくしてケネスは牢屋から出されて、そして、ロシェルを悪魔憑きということにして離宮に隔離することになった。
その手際の良さに俺は少しだけ引いた。
「お前、本当は」
「面倒なことやってくれる人がいるならその人にやらせれば楽でしょ?何もしないで辺境でゆっくりできたはずなのになぁ」
この男は出来た人間では全然なかった。
「ロシェルもルシンダも、嫌いだし不幸になればいいって思うけど、生まれてきた子供には罪がないから手厚く接するつもりだよ」
「それは、ありがたい事で」
しかし、意外と人としてはまともそうだった。
「早死にさせるようなことはしないでくれるか?」
「契約を変更するから大丈夫だ。子供達から少しずつ寿命をもらう。その子孫にも同じようにするつもりだ」
ケネスは俺の説明に安堵したように息を吐いた。
「ロシェルにもそれは出来たんじゃないの?」
「アイツにはしたくない。嫌いだから」
ロシェルに予定通り寿命をもらうと言った時の反応が楽しみだった。
ルシンダが相次ぐ出産で早世し、子供は保護してロシェルは離宮に一人になった。
「ルシンダもっと、子供を産んでくれないとおれは……」
命を削って子供を産み続けたのにロシェルは自分の事しか考えていない。
「なぁ、俺、子供をたくさんいてもお前を助けてやるって言った覚えないぞ」
俺はクスリと笑いながらロシェルに囁く。
「なんだと!?じゃあ、俺はどうなるんだ!」
かつては王子だったことが嘘のようにロシェルは、唾を飛ばして叫び声を上げる。
「もちろん、予定通りに寿命をもらう」
「ふざけるな!!俺を助けろぉ!!うわぁぁあ!!!」
ロシェルの叫び声が離宮に響く。しかし、誰も助けにはこなかった。悪魔憑きなのだから仕方がない。
~~~~~
次回はルシンダ視点です。
次で完結!
ホラミス大賞に『芋虫』という作品をエントリーしております。
読んでもらえると嬉しいです(´;ω;`)
気になったらお気に入り登録してもらえるとさらに嬉しいです(;ω;)
俺の本来の契約者は王族だから。
正確にいえば「寿命を差し出す間だけは、この国に魔物を入れないように」という願いを叶えただけだが。
俺は聖女だが願いを叶えるには寿命が足りなかった。
「よう、はじめまして、シーカー家との契約は破棄された。本来の契約者のお前との契約を遂行しようか」
「なんだと!?」
国王の前に姿を見せると、奴は驚いた顔をして椅子からひっくり返った。
そこにはちょうどロシェルもいた。
俺は王族に腹を立てていた。国は守りたい。しかし、死にたくはない。その犠牲になったのはシーカー家だ。
善良なシーカー家の子供たちは、国が混乱することを憂いて自分の寿命を差し出し続けた。
それも、終わったことだが。
「とりあえず。王族のお前の寿命の全てをもらおうか」
「やめろ!それならケネスから」
「アイツは、王族の名をもらっていないだろう?だから、お前からもらう」
真っ先に、庶出のケネスの名前を出した王を俺は完全に見限った。
寿命を全て貰うつもりはなかったが、優しさを見せるのはやめた。
「うわぁぁ!!」
俺が国王から寿命を貰うと、奴はミイラのように干からびた。
そして、ロシェルに顔を向けると奴は青ざめた顔で俺を見た。
「次はお前だな。俺は怒ってるんだ。お前の先祖と契約したのに、命をもらう対象を勝手に変更されて、その賠償はお前達が返すんだ」
「やめろ!俺が早死にしたらこの国は……」
「ケネスがいるだろう?代わりにあいつが国王になればいい。お前はこの国を守るためにタネを撒き続けろ」
「嫌だ!」
「そうだな。助かる方法はひとつだけ、子供を出来るだけたくさん作ることだ。そうだな、相手はヘンウッド家の養子にするといい」
「……わかった。子供を作ればいいんだな」
「ケネスは殺すな。もしも、手をくだしたらお前を苦しめて殺してやる」
「ひいっ」
「今はお前の父親の寿命をもらったから、身体に取り憑くのはしばらくしてからにしてやる」
「わかった」
ロシェルは俺の言うことを間に受けてルシンダをまちづけるだろう。
助かるのはコイツの子供だけだが……。
そして、俺はもう一つすることがあった。
「よう、お前、この国の王にならないか?」
シビルと同じように拘束された、ケネスに俺は声をかけた。
「シビル?いや、違う?」
ケネスは俺の顔を見て不思議そうに首を傾ける。
「俺は悪魔、そろそろお前も解放されるだろうから、この国の王にならないか?」
「嫌ですよ」
即答に思わずその場で転びそうになった。
「なぜだ!」
「僕は、シビルと一緒に辺境でのんびり生活するんだ」
こいつ、野心というものが全くないのか!?
俺はあんぐりと口を開いてしまう。
「お前がやらないと困るんだよ。シビルとシーカーにも火の粉が飛ぶし」
「はあ、それは仕方ないですね。僕やります」
嫌がっておいて、すぐにやると言い出したケネスに俺はちょっとだけイラっとした。
「なんなんだよ。お前」
「僕は友達は大切にする主義なんですよ。恋のライバルでも応援するんですよ」
ケネスはそう言ってにっこりと笑った。
程なくしてケネスは牢屋から出されて、そして、ロシェルを悪魔憑きということにして離宮に隔離することになった。
その手際の良さに俺は少しだけ引いた。
「お前、本当は」
「面倒なことやってくれる人がいるならその人にやらせれば楽でしょ?何もしないで辺境でゆっくりできたはずなのになぁ」
この男は出来た人間では全然なかった。
「ロシェルもルシンダも、嫌いだし不幸になればいいって思うけど、生まれてきた子供には罪がないから手厚く接するつもりだよ」
「それは、ありがたい事で」
しかし、意外と人としてはまともそうだった。
「早死にさせるようなことはしないでくれるか?」
「契約を変更するから大丈夫だ。子供達から少しずつ寿命をもらう。その子孫にも同じようにするつもりだ」
ケネスは俺の説明に安堵したように息を吐いた。
「ロシェルにもそれは出来たんじゃないの?」
「アイツにはしたくない。嫌いだから」
ロシェルに予定通り寿命をもらうと言った時の反応が楽しみだった。
ルシンダが相次ぐ出産で早世し、子供は保護してロシェルは離宮に一人になった。
「ルシンダもっと、子供を産んでくれないとおれは……」
命を削って子供を産み続けたのにロシェルは自分の事しか考えていない。
「なぁ、俺、子供をたくさんいてもお前を助けてやるって言った覚えないぞ」
俺はクスリと笑いながらロシェルに囁く。
「なんだと!?じゃあ、俺はどうなるんだ!」
かつては王子だったことが嘘のようにロシェルは、唾を飛ばして叫び声を上げる。
「もちろん、予定通りに寿命をもらう」
「ふざけるな!!俺を助けろぉ!!うわぁぁあ!!!」
ロシェルの叫び声が離宮に響く。しかし、誰も助けにはこなかった。悪魔憑きなのだから仕方がない。
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