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私はあの場でケネスと一緒に取り押さえられて、牢屋に入れられた。
それから、数日間何も聞かされることはなく私は牢屋に閉じ込められ続けた。
食事を出す以外人は来ない。自分がどうなるのか何となくだが想像はできた。

「シビル」

だから、ジョンの声が聞こえても最初は幻聴だと私は思った。

「ジョン、なぜ?」

「君の処刑が決まった」

ジョンの予想通りの台詞に私は言葉が出ない。

「君とケネスが共謀してロシェル殿下に毒を盛ったそうだ」

「そんな事、していない」

「知ってる。それは、ケネスを完全に引き摺り下ろすためにロシェルが勝手にやった事だ。捏造された証拠が認められたそうだ」

ロシェルは、最初からそのつもりであの大きな場であんな大きな騒ぎを起こしたのだろう。

「そう、何しにきたの?」

「一緒に逃げよう」

ジョンは逃げてどうするつもりなのだろう。
逃げる場所なんてないし、そんな事をしてしまったら彼の領地はどうなるのだ。

「そんな事、してはダメよ」

「悪魔、協力してくれ」

私の拒否に構う様子もなくジョンは悪魔に協力を求める。

『嫌だね。力を使ったらお前にも負担があるんだ』

「負担?」

『悪魔はな、どんな願いでも叶えられるんだ。ジョンとは元々契約してるんだが、それ以外にも力を使ったらこいつの身体の負担になる』

その負担はどのくらいのものなのだろうか……。
絶対にジョンにそんな事をさせてはいけない。

「いいから、やるんだ」

「やめて、悪魔さん。お願い」

『コイツは、望んでないそうだ』

「二重だが今の契約者は俺だ。お前はそれに従え」

『わかったよ』

二人は私の意志など関係なく話を進めて行く。

「どのみちここまで来るのにお前の力を借りたんだ。今更だろ」

『……』

「行こう」

「私は行かない」

しかし、ジョンは気にした様子もなく柵越しに私の手を握った。
その瞬間、私達の身体が発光して霧散した。

次に『意識』というものを認識したのは、ジョンと出会った野原だ。

「嘘でしょう……?」

私は信じられない光景に目を白黒とさせた。
その瞬間、ジョンが苦悶の表情を浮かべて胸元を押さえた。

「ぐっ、くっ」

「ジョン!」

『元々、こいつの寿命は短いんだ。このまま逝かせてやれ』

悪魔は全てを諦めたような口調だ。

「嫌よ。どうにかならないの?」

『契約解除したら多少は……。だが、コイツはそんな事を絶対に今まで望まなかった」

ジョンの様子から契約を解除する気配はない気がした。それなら……。

「私がするわ」

『聖女の力を使うつもりか?』

悪魔から出てきた言葉に私は驚いてしまう。
私の正体を知っていたなんて、考えもしなかった。

「知っていたの?」

『まぁな』

悪魔は苦笑いした。

「俺が契約を解除する」

『いいのか?』

ジョンの申し出に私と悪魔も驚いた。

「もともと、シビルのために契約を解除しないつもりだった。助けられたならもう必要ない。あんな奴のために俺は搾取されたくはない」

ジョンの意外な告白に私は驚いたが、悪魔はニヤけた顔をしていた。

『まあ、お前が望むならそうしよう。シーカー家と俺との契約は解除された』

その瞬間、ジョンの顔の人面瘡は煙のように消え去り。透けた女性がすぐ側に立っていた。
彼女の顔は私に瓜二つだ。

「貴女は?」

『お前のご先祖さまだ。力が有り余ってて王様と面倒な契約をしたんだ。そのせいで人のいいコイツのご先祖さまは早死にしたんだがな。もう、会わないと思うからこれだけは伝えておく。お前ら幸せにな』

「さようなら悪魔さん」

「……ありがとう」

『じゃあな、シビル、願い事を正しく使ってくれ。頼む』

綺麗な顔をした悪魔は、必死の顔で私に懇願した。
一緒に過ごしたジョンのことを大切に思っているからなのだろう。

「ええ、当然よ」

『それならよかった。今まで、ありがとな。俺、お前らのこと大好きだ』

「じゃあな。今までありがとう」

ジョンがそう言うと悪魔は悲しそうな顔をして、私たちを抱きしめて煙のように消えた。

残された私のする事はただ一つ。

「お願い。ジョンを助けて」

その瞬間、ジョンの体は光に包まれて、苦悶の顔は薄れてそのまま眠りについた。


あれから、回復したジョンと一緒に旅に出ることにした。
ジョンの本当の名前はジョナサンらしい。

「もう、仮面は必要ないな」

ジョンはそう言うと私の仮面を外した。
クリアになる視界に私は微笑む。

「場所さえ特定されなければ、お前を誰かに奪われることなんてない」

ジョンは私を抱き寄せて額に唇を落とした。

私が消えたあと、母国では大変なことが起こっていたようだ。
ヘンウッド家の取り潰し、ロシェル王子が悪魔憑きになり幽閉されることになったそうだ。

一番大きな変化は、ケネスが国王になったことだ。

そのせいか、彼を冷遇し続けた貴族は取り潰しや色々大変なことになっているらしい。

なぜか届く手紙にそう記されていた。

いつも手紙には幸せだと記されている。

私もジョンと一緒にいる限り幸せだと思う。








~~~~~


シビル視線はこれで終わりです
まだ、続きます!


ホラミスに『芋虫』という作品をエントリーしております
よかったら読んでもらえたら嬉しいです

どうでもいいけど、芋虫って書こうとして『水虫』と書きそうになりました
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