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それから、数日後、私宛に仮面が届いた。
真っ白な仮面はオリハルコンを加工したものらしい。シンプルだが黒曜石とアメジストが埋め込まれていてとても綺麗だった。
気に入ったので私は毎日それをつけることにした。
綺麗な仮面を見ると、なんだか自分の醜さを誤魔化せるような気分になる。
嬉しかったので、ケネスには長文にはなってしまったけれど感謝の手紙を送った。
そして、私にも専属の侍女が就くことになった。
「今日から、お嬢様の侍女になりました。アンヌです。よろしくお願いします!」
アンヌは顔を紅潮させて興奮している様子で挨拶をしてくれた。
この屋敷で悪意を持たずに接してくれるのはアンヌくらいだ。
新人だから私の専属になってくれたのだろう。
「よろしくね」
「今日からは支度などは私が全て行いますから。何かあったら言ってください」
アンヌはにっこりと笑う。ようやく自分の仕事ができると言わんばかりだ。
今後一緒に過ごすのだから顔は隠すことはできない。彼女には素顔を見せようと私は思った。
どのみち、隠すこともできないだろうし……。
「ありがとう。そうね、とりあえず、前髪を切ってもらえるかしら」
私はケネスから贈られた仮面に手をかける。
ジョンと悪魔に顔を見られて以降、こういう場に少しだけ慣れた気がする。
「今、仮面を外すわ」
「え?」
アンヌが仮面を外すと言った私を驚いた顔で見ている。
「私の顔の事を誰にも言わないでね」
ゆっくりと仮面を外すと、顎が外れそうなくらいにアンヌは口を開いた。
「じゃあ、前髪を切ってくれる?」
「……は、はい」
アンヌはしばらく私の顔を見て、それから、前髪を切り出した。
前髪を切り終えて、私は自分の顔を記憶のある限りで初めて鏡で見た。
そこに映し出されていたのは、誰もが忌み嫌うような醜い顔ではなかった。
すくなくとも私にとってはだけれど。
ミラベルになんの意図があって顔を隠せと言い出したのかわからない。
言われた通りにした方がいいのだろうと私は思った。
アンヌが侍女になってから生活面ではかなり変化があった。
食事が温かいうちに届けられるとか、髪の毛の艶が以前より良くなったとか。いろいろあるけれど。
そういう事よりも、心の拠り所が出来たことが一番の変化だった。
アンヌもケネスも私の事を絶対に否定しなかった。
ジョンと悪魔と同じように。
たまに、ジョンと悪魔のことを思い出すと寂しくて辛かった。
しかし、彼らに会うことはもう二度とないと私は思っていた。
その日が来るまでは……。
ある日、ケネスは思い詰めた様子でこんなことを言い出した。
「シビル、僕と君との婚約発表の場が設けられることになった」
「そうですか」
「少し、嫌な気分になると思う。僕は立場のない王子だから」
ケネスは申し訳なさそうにそう言って俯いた。
その沈みっぷりに私はなんと声をかけたらいいのか、わからなくて困ってしまった。
真っ白な仮面はオリハルコンを加工したものらしい。シンプルだが黒曜石とアメジストが埋め込まれていてとても綺麗だった。
気に入ったので私は毎日それをつけることにした。
綺麗な仮面を見ると、なんだか自分の醜さを誤魔化せるような気分になる。
嬉しかったので、ケネスには長文にはなってしまったけれど感謝の手紙を送った。
そして、私にも専属の侍女が就くことになった。
「今日から、お嬢様の侍女になりました。アンヌです。よろしくお願いします!」
アンヌは顔を紅潮させて興奮している様子で挨拶をしてくれた。
この屋敷で悪意を持たずに接してくれるのはアンヌくらいだ。
新人だから私の専属になってくれたのだろう。
「よろしくね」
「今日からは支度などは私が全て行いますから。何かあったら言ってください」
アンヌはにっこりと笑う。ようやく自分の仕事ができると言わんばかりだ。
今後一緒に過ごすのだから顔は隠すことはできない。彼女には素顔を見せようと私は思った。
どのみち、隠すこともできないだろうし……。
「ありがとう。そうね、とりあえず、前髪を切ってもらえるかしら」
私はケネスから贈られた仮面に手をかける。
ジョンと悪魔に顔を見られて以降、こういう場に少しだけ慣れた気がする。
「今、仮面を外すわ」
「え?」
アンヌが仮面を外すと言った私を驚いた顔で見ている。
「私の顔の事を誰にも言わないでね」
ゆっくりと仮面を外すと、顎が外れそうなくらいにアンヌは口を開いた。
「じゃあ、前髪を切ってくれる?」
「……は、はい」
アンヌはしばらく私の顔を見て、それから、前髪を切り出した。
前髪を切り終えて、私は自分の顔を記憶のある限りで初めて鏡で見た。
そこに映し出されていたのは、誰もが忌み嫌うような醜い顔ではなかった。
すくなくとも私にとってはだけれど。
ミラベルになんの意図があって顔を隠せと言い出したのかわからない。
言われた通りにした方がいいのだろうと私は思った。
アンヌが侍女になってから生活面ではかなり変化があった。
食事が温かいうちに届けられるとか、髪の毛の艶が以前より良くなったとか。いろいろあるけれど。
そういう事よりも、心の拠り所が出来たことが一番の変化だった。
アンヌもケネスも私の事を絶対に否定しなかった。
ジョンと悪魔と同じように。
たまに、ジョンと悪魔のことを思い出すと寂しくて辛かった。
しかし、彼らに会うことはもう二度とないと私は思っていた。
その日が来るまでは……。
ある日、ケネスは思い詰めた様子でこんなことを言い出した。
「シビル、僕と君との婚約発表の場が設けられることになった」
「そうですか」
「少し、嫌な気分になると思う。僕は立場のない王子だから」
ケネスは申し訳なさそうにそう言って俯いた。
その沈みっぷりに私はなんと声をかけたらいいのか、わからなくて困ってしまった。
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