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「大変だったね」

「おかげで助かりました。ありがとうございます」

 フランツのねぎらいの言葉に、私はお礼を返した。
 もしも、来ていなかったら、間違いなく私は怒っていた。
 来てくれたのはありがたい事なのだが、なぜ来てくれたのかとても気になる。

「ところで、なぜ、こちらに来てくれたんですか?」

「ああ、それは、騎士の家に生まれるとね。第六感が強くなるんだ。エーデルさんがピンチだと思って駆けつけたんだよ」

「……なるほど」

 それっぽい説明だが、はぐらかされたような気分になった。
 何か知られたくないことでもあるのだろうか。

「今日の帰り、時間があるか?」

「はい」

「ちゃんと話をしようか。突然で驚いたよね」

 フランツから聞かされる色々な事実に、私の頭は追いつかなかった。
 ちゃんとした説明が欲しい。

「説明、お願いしますね」

「もちろん。僕は不誠実な人間にはなりたくないからね」

 彼が女好きだという噂はもう信じていない。あれは絶対に嘘だ。
 フランツが、じゃあまた。と言い教室から去っていくと、何人かの女子生徒が「かっこよかった」と呟いていたのか聞こえた。

「大丈夫だった?」

 フランツが去っていったのを待っていたかのようなタイミングで声をかけてきたのはステラだ。
 話している途中だったのに、あんな変な人と遭遇させたのは申し訳なかった。

「ええ、何とか。お騒がせしてごめんね」

「いいのよ。遠くから見ると面白かったから」

 ステラはとてもいい笑みを浮かべた。
 どうやら、見えないところであのやり取りを楽しんで見ていたようだ。
 なんというか、面白い人だと思った。
 
「えぇ」

「ミランダさんってあんな感じなんだね。ちょっと無理だわ」

 気持ちいいほどにミランダをバサっと切るステラに、私は相手は侯爵令嬢なのにいいのかな。と、思ってしまう。

「うん、まあ」

「取り巻き?腰巾着?金魚の糞?信者な人たちはそう見えないんだろうけどさ……」

 そういえば、テスト結果が出て私を馬鹿にすることを言うのは、みんなミランダの事を崇拝している様だった。
 あれは信者だったのか。

「結構いるのよ。才色兼備だからかしら」

「そうね」

 確かに、ミランダは美人で頭もいいのでそういった対象になるのもわかる気がした。

「顔と頭が良くても中身が伴ってなかったら宝の持ち腐れよ。あの二人はある意味でお似合いだけどね」

「そうかも」

 容赦のないステラに、私はなぜか心が軽くなった気がした。
 自分はそうならないようにしたい。

「何考えてるんだろうね。二人とも、ミランダさんは家を継ぐわけではないし、リーヌスさんもそうでしょう?自爆でもしたいのかな?」

「そういえばそうね。何がしたかったんだろう」

 ミランダは才女だが、兄がいて彼が爵位を継ぐ事が決まっていたはずだ。
 このままだと二人とも平民になって生活する事になるが、先の見通しは立っているのだろうか。

「案外、目先のことしかお互いに見えてないのかもね」

 なぜかわからないが、あの二人を見ているとそんな気がした。
 勉強ができてもミランダは幼稚だし、リーヌスもそうだ。
 何も考えていないのかもしれない。
 ただ、二人に能力がないわけではないので、平民になっても問題なく生活はできそうではあるが。
 私の知ったことではないので関係はないけれど。
 リーヌスはともかくミランダは、彼を簡単に切り捨てられる立場にいる。

「婚約者候補を奪うのはなくもないけど、それが、家を継ぐ相手からなら話は別よね。権力でゴリ押しして婚約したのなら、権力で婚約破棄もしそうだわ」

 とても、嫌な予感がした。






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名前を出したら消さられるあの野郎になりまして
ちょっと寝込んでます
頭痛くて、書けません
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