ようこそ、喫茶店ネロへ

きな粉餅

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 もう立ってるのも限界だね。
 里子は傷だらけになりながらその場に立っていた、その周りには呻き声をあげている餓鬼が何人も倒れているが里子の目の前の餓鬼の集団はその数が減っているのか疑問に思うほどの数だった。

「まったく、今日の晩飯だったのにね」

 後ろにある袋いっぱいの特売の肉を餓鬼に投げつけた。

「肉だ」「俺にも食わせろ」「わしにもだ」「私に寄越せ」

 1人の頭の上に肉のかけらが乗っかると我先に覆いかぶさり肉を取り合っていた。

「地獄の絵図だねぇ」

 里子が目の前の光景を見ていると倒れていた餓鬼が1人起き上がり里子に飛びかかった。

「私にも寄越せ」

 飛びかかった餓鬼の頬に拳が飛んできた。

「遅いよ健」

「ごめん里子さん遅くなった」

 そこにはコーヒー豆を挽いている姿はなく少し血管が浮き上がっていて本気で怒っていた。
 健は人型に切り取った紙を餓鬼達に投げつけた。

「別に俺は多少のことでは怒らねぇよでもお前らは完璧に俺を怒らせた」

 紙人形を中心に仮面を被った平安時代の貴族の服装をした2人が出てきた。
 2人は何もないところから槍と弓を出し餓鬼達に攻撃をした。
 攻撃された餓鬼は呻き声を上げながら消えていった、その姿を見て後ろにいた餓鬼達がどよめきながら後退りしていった。

「どうした里子さんを襲った元気はどこに行ったんだよ?」
 
 1番後ろの餓鬼がこっそり逃げようとしようとすると目の前に大きな門が現れた、その門から黒い無数の手が餓鬼達を掴んで引きずり込んでいっている。

「辞めろ」「離せ」「あんなところに戻りたくない」「いやだ」

 俺は目の前の光景が何がおきているのかわからなかった。

「地獄の門がやっと開いたのかい」

 ボロボロの体を引きずりながら里子さんが言った。

「地獄の門?」

 里子さんはため息をついた。

「あんた陰陽術が使えるのにそんなことも知らないのかい」

 俺は笑ってお茶を濁した。

「やれやれ、この子は後でバイト君と一緒に教えてあげるよ」

「すいません里子さん」

 黒い手は餓鬼達を全員門の中に引きずり込むとバタンと言う音を上げ門が閉まっていった、閉まった門は白い煙を上げながら消えていった。

「今の門、普通の人には見えてないよね」

「見えてるわけないだろ見えてたら大事だよ」

 俺と里子さんはさっきまで門があったところ眺めていた。

「もう大事ですよ」

 後ろから若い女の人の声がした。

「佐藤さん?」

 振り返るとそこには休憩中の佐藤さんがいた。

「はぁ、まったく説明してもらいますからね、そこにいる山姥とさっきの餓鬼について」

 佐藤さんは里子さんを指刺しながら言った、初めて会った時とは印象がまったく違う別人のように感じてしまった。


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