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25.研修4日目 香原の嫉妬

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 獲物を狙っている肉食獣のような鋭い眼光。

「ほら。どうしたの?早く。」

「しゃ…ちょ……。あの…」

「今から俺に何をされるのか想像がつくでしょ?その前に言いたい事ある?」

 氷のような視線、氷柱のような言葉。今朝までの優しい香原とは別人のようで恐怖心がわいてくる。視線を合わせるのに精一杯で、なんとか言葉を搾り出そうとする。

「……っ…社長…あんな場所で言い合いになってしまって、不適切な対応と他の社員の方へご迷惑お掛けしましたっ!本当に申し訳ありませんっ!!」

 茜は精一杯の誠意を込めて謝罪し、深く頭を下げる。少しの沈黙を破ったのは香原の溜め息だった。

「……茜さん、まずは頭上げてくれる?…………本当、調子狂う…。」

 ゆっくりと頭を上げるが、溜め息の意味が怖くて香原を見れない。独り言の様に話す声は低すぎて聞き取れなかった。
 椅子から立ち上がり茜の所へ近づくとデスクに腰掛け、下から顔を覗き込んでくる。時間の経過で丸くなった甘い香原の香りがした。

「茜さんを困らせたいわけじゃない。ただ………。」

「ただ…?」

「……何でもない…。」

 表情が曇り、苛立ちと焦りが言葉から垣間みえる。茜は、気が付けば香原を抱きしめていた。

「社長…私より困ってるように見えます。本当にごめんなさい。研修で来てるのに、社員さん達に不信感を与えてしまうような事を……。」

 香原は抱きしめ返してはくれない。

「不正解。俺が聞きたいのはそんな事じゃない。何であの男の事を守るために必死なのか、好きなの?」

「必死でも好きでもないです!私が好きなのは……」

 貴方ですと言いそうになる口を組んだ代償で鼓動がどんどん早くなる。

「誰?…俺には言えないの…?」

「……言いたいですよ。でも言ったら…もう引けなくなっちゃう。」

「…引けないようにしていい?…その言葉の選び方だと、俺って事だよね?」

 香原は茜の腰に抱きつく様に腕を回し、顔をあげると余裕のない、何も取り繕っていない顔が見えた。

「……ダメです…。そ、です…香原さんの事好きになっちゃいました…でも、帰国したら辛くなっちゃうから…言えなかったんですよ。」

「帰国後の事は、想定してるよ。…だからさ、ねぇ茜さん。俺じゃダメ…?」

 普段は強気で余裕たっぷりの香原の表情はどこへいったのだろうと思う程、儚げで幼く、甘えた声で囁く。

「充分すぎて、私じゃない方がいいって思っちゃいます……。」

「そんな事言わないで。俺、茜さんに会った時に恥ずかしくない男になりたくて、今までずっと頑張ってきたんだよ。……だから、俺にご褒美ちょうだい。」

「れお君……。」

「こんな所で言うつもりなかったのに……ごめん。絶対好きになってもらうつもりだったけど、途中で自信なくした…茜の周りにチラつく男に嫉妬したり、仕事が手につかなくなったり、こんな事初めてだったよ。」

 今まで彼が乗り越えてきた道のりを考えると胸が詰まり、茜は泣きそうになるのを堪えた。彼の癖のある柔らかい髪の毛を撫でる。

「ご褒美になるかわからないけど、私の全部貰ってください。」

 全てこの一言に詰め込む。
 彼は一瞬眼を見開いた。

「…いいの?さっきダメって言ってた。」

 また、少し拗ねる様に伏し目がちになる。

「こんなふうに惹かれた人は今までいなかったから、この先、れお君みたいな人は現れないと思うの。だから、ちゃんと好きって伝えたいです。」

「ありがとう。こんな醜態晒せるのも茜さんだけだよ。好きだよ。茜さん。」

 しばらくそのまま抱きしめる。お互いの鼓動が聞こえ、温もりが心地良い。

「茜さん…今、もの凄くシたい。嫉妬した勢いも相まって、抱いたら壊しちゃうかも。」

「それでも良いです。でも…ここじゃ嫌です…。」

「ここではしない。約束。でもキスだけさせて…」

 唇がそっと触れたかと思うと離れて行く。

「いつも茜さんを上から見てるから、下から見る茜さん、新鮮だ。」

 今度は食べられてしまいそうな貪る様なキス。

「んっ…ふ、ぁ…。」

「ん、茜さん…。こんなに色っぽくさせたのは、俺だよね?立花君じゃないでしょ?」

「ちが…っ……、んんッ、はぁ…っ。」

 答えを遮るように深く甘いキスをする。

「あんなに身体を密着させて…なんで抵抗しなかったの…?茜さんがこんな可愛くなると不安だな…。立花君とランチ中に何かあったのかと心配したよ。」

「何もしてないです!ただ、相談してただけで……んっ…ふ、はぁ…っ。」

何度も唇を重ねる度に、激しくなっていく。

「何相談したの?何て言われた?」

「好きな人と身体の関係を…もってしまった…と。好きならちゃんと気持ち伝えて、ダメだったら、時間が忘れさせてくれるってアドバイスをもらいました…。」

「ふーん。そういう事か。抜かりないね、彼。」

茜のワンピースを捲り上げ、胸元を露わにされる。

「あのっ…?!」

「こんなエロい下着つけて、今俺とここでこんな事してる所、彼がみたら発狂するだろうな。」

柔らかい膨らみに沿って、ブラの隙間から指を入れられる。快感を知ってしまっている身体は容易に反応してしまう。

「んっ……。」

「茜さん、ごめんね。彼はきっと良い人なんだろうけど、茜さんに触れた事、どんな理由であれ利用しようとした事、俺許さないから。」

簡単な快感に、ムズムズとした感覚が襲ってくる。

「ねぇ、シたくなった?これから退社して?社長命令で。やっぱり今日は、朝から抱き潰せばよかったな。」
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