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23.研修4日目 その3
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香原は自身の為に作った香水を身につける。その雰囲気は、どこかミステリアスで惹き付けられる。
荒々しくスパシーな香りがガツンとくる。後から重厚感がある甘さの中に爽やかさもある不思議な香りだ。
「香原さん、どうしてこの香水を作ったんですか?」
「んー。これは、俺の理想像だよ。この香水は、ピラミッド型の調香じゃないんだ。気付いたかな?」
「はい!纏った人によって香りが変わるんですよね!」
「ワクワクする?この香水は、俺しか知らない。他の人がつけたのは嗅いだ事がないな。俺はどんな理想像だと思う?」
ククッと楽しげに笑い、周りに漂う穏やかな感情は茜の心を惹きつけるものがあった。
「つい…テンションが上がって…。第一印象は、男女問わず憧れる様な…芯の強さ?深みがあるので…人間的な懐の深さ…ひたむきさ…うーん。宿題にさせて下さい!」
「勉強熱心な所、素晴らしいね。俺がつけてる香水、帰国前にプレゼントするよ。…さぁ、そろそろ出社しようか。その前に…。」
そう言って寝室へ向かうと、香水のボトルを持って戻ってきた。茜は帰国する事を再確認させられ、香原の言動ひとつひとつに気持ちが反応し、嬉しくも切なくもなる。
「初恋、つけて行ってよ。」
茜の手を取り、肌の柔らかい部分にシュッと吹きかけた。
もう小さい頃の記憶ではなく、昨夜の出来事を思い出す香りに上書きされているためか、心拍数が上がる。
「あ…。」
「たまには違う香水をつけるのもいいでしょ?これは、マーキング。今日も1日忙しくなるよ。」
マーキングと言われ勘違いしてしまいそうになる。
一晩一緒に過ごし、同じタイミングで家を出る。茜はこのひと時がとても幸せだった。
香原に配慮して、滞在中のホテルと会社の真ん中あたりで車を停めてもらうことにした。
「香原さん、ありがとうございました。とても楽しかったです。今回の企画、必ず成功させてみせます。」
「別に会社まで一緒に行っても良かったんだけど…わかったよ。楽しみにしてる。」
そう言って香原は、去って行った。香原に迷惑になる様なことはしたくない。社長という立場がある。茜は、夢から現実に引き戻される感覚になった。
「よし。頑張ろう。」
まだ人がまばらなオフィスへ出社し昨日のアンケート結果に眼を通す。一足先に集計をまとめてみる。商品への客観的な意見が多数みられた。
「茜早いな。おはよ…。」
「立花君、昨日はお疲れ様!色々とありがとうございました。」
「な、どうしたの…?随分、可愛くなったな…。」
「そ、そうかな…?イメージ変えてみたの。」
「へぇ。そういう事か。……応援するよ。」
立花は全てを悟ったように笑い、肩をポンポンと叩く。
「あの…。」
「茜って水くさいなぁ…言ってくれれば良かったのに。」
「立花くん…えと…。」
どこから話していいのかわからず、もじもじとしてしまう。
「今日のランチは茜の奢りな!その時詳しく聞かせろよー!さぁ、集計始めよう!」
午前中いっぱい時間を使い、一通り集計は終了した。全体のデータを見るとパリの女性には、女性らしい甘い香りが好まれる傾向にあることがわかった。
今回の開発では、中性的な香り作りを意識したせいか、女性には物足りない印象のようだった。しかし、嫌味のない香りで、恋人につけて欲しいといった意見が多くみられた。
「これ、日本でも参考になるかも…。」
「そうだな。現に彼にプレゼントしたいって言ってたし…。自分用でなくて、贈り物に使える香水って数少ないかも。」
開発側と消費者側では受け取るイメージに違いがあり、日本で売り出すコンセプト、相手に纏って欲しくなる香りだと新しく発見する事ができた。
荒々しくスパシーな香りがガツンとくる。後から重厚感がある甘さの中に爽やかさもある不思議な香りだ。
「香原さん、どうしてこの香水を作ったんですか?」
「んー。これは、俺の理想像だよ。この香水は、ピラミッド型の調香じゃないんだ。気付いたかな?」
「はい!纏った人によって香りが変わるんですよね!」
「ワクワクする?この香水は、俺しか知らない。他の人がつけたのは嗅いだ事がないな。俺はどんな理想像だと思う?」
ククッと楽しげに笑い、周りに漂う穏やかな感情は茜の心を惹きつけるものがあった。
「つい…テンションが上がって…。第一印象は、男女問わず憧れる様な…芯の強さ?深みがあるので…人間的な懐の深さ…ひたむきさ…うーん。宿題にさせて下さい!」
「勉強熱心な所、素晴らしいね。俺がつけてる香水、帰国前にプレゼントするよ。…さぁ、そろそろ出社しようか。その前に…。」
そう言って寝室へ向かうと、香水のボトルを持って戻ってきた。茜は帰国する事を再確認させられ、香原の言動ひとつひとつに気持ちが反応し、嬉しくも切なくもなる。
「初恋、つけて行ってよ。」
茜の手を取り、肌の柔らかい部分にシュッと吹きかけた。
もう小さい頃の記憶ではなく、昨夜の出来事を思い出す香りに上書きされているためか、心拍数が上がる。
「あ…。」
「たまには違う香水をつけるのもいいでしょ?これは、マーキング。今日も1日忙しくなるよ。」
マーキングと言われ勘違いしてしまいそうになる。
一晩一緒に過ごし、同じタイミングで家を出る。茜はこのひと時がとても幸せだった。
香原に配慮して、滞在中のホテルと会社の真ん中あたりで車を停めてもらうことにした。
「香原さん、ありがとうございました。とても楽しかったです。今回の企画、必ず成功させてみせます。」
「別に会社まで一緒に行っても良かったんだけど…わかったよ。楽しみにしてる。」
そう言って香原は、去って行った。香原に迷惑になる様なことはしたくない。社長という立場がある。茜は、夢から現実に引き戻される感覚になった。
「よし。頑張ろう。」
まだ人がまばらなオフィスへ出社し昨日のアンケート結果に眼を通す。一足先に集計をまとめてみる。商品への客観的な意見が多数みられた。
「茜早いな。おはよ…。」
「立花君、昨日はお疲れ様!色々とありがとうございました。」
「な、どうしたの…?随分、可愛くなったな…。」
「そ、そうかな…?イメージ変えてみたの。」
「へぇ。そういう事か。……応援するよ。」
立花は全てを悟ったように笑い、肩をポンポンと叩く。
「あの…。」
「茜って水くさいなぁ…言ってくれれば良かったのに。」
「立花くん…えと…。」
どこから話していいのかわからず、もじもじとしてしまう。
「今日のランチは茜の奢りな!その時詳しく聞かせろよー!さぁ、集計始めよう!」
午前中いっぱい時間を使い、一通り集計は終了した。全体のデータを見るとパリの女性には、女性らしい甘い香りが好まれる傾向にあることがわかった。
今回の開発では、中性的な香り作りを意識したせいか、女性には物足りない印象のようだった。しかし、嫌味のない香りで、恋人につけて欲しいといった意見が多くみられた。
「これ、日本でも参考になるかも…。」
「そうだな。現に彼にプレゼントしたいって言ってたし…。自分用でなくて、贈り物に使える香水って数少ないかも。」
開発側と消費者側では受け取るイメージに違いがあり、日本で売り出すコンセプト、相手に纏って欲しくなる香りだと新しく発見する事ができた。
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