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14.研修2日目 その1
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立花へ話をするために、朝早く彼の部屋を訪れた。
—コンコン—
どんな事を話そうか、頭の中でぐるぐると考えているうちに扉が開いた。
扉の向こうにいたのは、今井さちだった。日本を出発する時に空港で言葉を交わして以来あいさつ程度の関わりだった為、少し気まずい。
「おはようございます。あれ?私部屋間違えちゃったみたいです。すみません。」
「ここは私の部屋じゃないわ。立花君の部屋よ。何か用?」
冷たく言い放たれる。髪と寝衣の乱れ具合から2人の間に何があったのか容易に想像ができた。
「はぁ。やっぱり女の言うことなんて信用できないわね。立花君は眠ってるわ。残念だったわね。」
伝えたい事を本人へ話せないのは残念ではあったがこの女が思っている様な内容ではない事を茜は伝えたかった。
「では、立花君へ伝えて下さい。私はあなたの好意には応えられません。一同僚としてこれからも宜しくと。」
苛立ちと困惑が混ざったような表情をするさち。
「ふん。強がっちゃって。ただの調香師のくせに。まぁ、いいわ。伝えておいてあげる。」
—バタンっ!—
「はぁ…。」
朝からどす黒い気持ちがなだれ込んできたせいで、深いため息がでる。
しっかり伝わるのか、立花君はあの女性に関わって大丈夫なのか、という不安がわいてくる。
自分の部屋に戻り、身支度を済ませて、昨日もらった紙袋に目が留まる。
「そういえば…。」
袋から香水を取り出し、どんな香りなのかワクワクしてしまう。
透明のころんとした形の瓶を手に取り吹きかけてみる。
「あ…っ。」
アルコールが揮発したあとに香ってくる甘酸っぱい柑橘系の香り後ろにはグリーンの香りも感じる。
「これは、あの公園で転んだ時の草っぽい香り…でもどこか甘酸っぱくて…。」
——青くさい、甘酸っぱい香りで初恋を表現してるみたい…。
香水のトップノートは第一印象だ。15分程度しか香らないため、つけた人だけが楽しめる香りだ。もし、この香水にメッセージが隠されているならと茜は淡い期待をしてしまう。
ミドルノートは、2時間程でゆっくり香り、体臭や温度と混ざり合いながら変化していく、香りの中心部分だ。
太陽の下で草花が青々としているようなグリーン感を残しつつ、甘いジャスミンの様な香り。濃密な香りと爽やかなグリーンが合う事でフレッシュで柔らかいパウダリーな香りへうつる。
ラストノートは、柔らかい清潔感のある、石鹸にも似たようなムスクの香りへ変化していくだろう。
「勉強熱心な君へ…か。この香水の正解は何だろう。」
頭の中が大好きな香水で満たされたことで、早朝の騒ぎが大分前の出来事の様な気がした。
今日は、本社の方々の意見も取り入れながらテストマーケティングの最終調整だ。立花とは同じグループの為、顔を合わせないわけにはいかない。至って普通に、自然に立ち振る舞えばいいだけ、そう自分に言い聞かせる。
—コンコン—
どんな事を話そうか、頭の中でぐるぐると考えているうちに扉が開いた。
扉の向こうにいたのは、今井さちだった。日本を出発する時に空港で言葉を交わして以来あいさつ程度の関わりだった為、少し気まずい。
「おはようございます。あれ?私部屋間違えちゃったみたいです。すみません。」
「ここは私の部屋じゃないわ。立花君の部屋よ。何か用?」
冷たく言い放たれる。髪と寝衣の乱れ具合から2人の間に何があったのか容易に想像ができた。
「はぁ。やっぱり女の言うことなんて信用できないわね。立花君は眠ってるわ。残念だったわね。」
伝えたい事を本人へ話せないのは残念ではあったがこの女が思っている様な内容ではない事を茜は伝えたかった。
「では、立花君へ伝えて下さい。私はあなたの好意には応えられません。一同僚としてこれからも宜しくと。」
苛立ちと困惑が混ざったような表情をするさち。
「ふん。強がっちゃって。ただの調香師のくせに。まぁ、いいわ。伝えておいてあげる。」
—バタンっ!—
「はぁ…。」
朝からどす黒い気持ちがなだれ込んできたせいで、深いため息がでる。
しっかり伝わるのか、立花君はあの女性に関わって大丈夫なのか、という不安がわいてくる。
自分の部屋に戻り、身支度を済ませて、昨日もらった紙袋に目が留まる。
「そういえば…。」
袋から香水を取り出し、どんな香りなのかワクワクしてしまう。
透明のころんとした形の瓶を手に取り吹きかけてみる。
「あ…っ。」
アルコールが揮発したあとに香ってくる甘酸っぱい柑橘系の香り後ろにはグリーンの香りも感じる。
「これは、あの公園で転んだ時の草っぽい香り…でもどこか甘酸っぱくて…。」
——青くさい、甘酸っぱい香りで初恋を表現してるみたい…。
香水のトップノートは第一印象だ。15分程度しか香らないため、つけた人だけが楽しめる香りだ。もし、この香水にメッセージが隠されているならと茜は淡い期待をしてしまう。
ミドルノートは、2時間程でゆっくり香り、体臭や温度と混ざり合いながら変化していく、香りの中心部分だ。
太陽の下で草花が青々としているようなグリーン感を残しつつ、甘いジャスミンの様な香り。濃密な香りと爽やかなグリーンが合う事でフレッシュで柔らかいパウダリーな香りへうつる。
ラストノートは、柔らかい清潔感のある、石鹸にも似たようなムスクの香りへ変化していくだろう。
「勉強熱心な君へ…か。この香水の正解は何だろう。」
頭の中が大好きな香水で満たされたことで、早朝の騒ぎが大分前の出来事の様な気がした。
今日は、本社の方々の意見も取り入れながらテストマーケティングの最終調整だ。立花とは同じグループの為、顔を合わせないわけにはいかない。至って普通に、自然に立ち振る舞えばいいだけ、そう自分に言い聞かせる。
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