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11.研修1日目 夜1
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皆足早にホテルへ戻っていった。
「なぁ、茜。中身なんだと思う?」
「うーん。何だろう。パリで有名なお菓子とか?」
「そんなに重くないから、かもな。しかし、男でも惚れるわ。茜、今日の夜、食事にいかない?」
「同性でもそう思うんだね!完璧すぎて、びっくりしちゃうくらいだね。食事…、行こうっか!立花くんの奢りで!」
「よっしゃ!んじゃ部屋まで迎えに行くから!」
なるべく、不自然にならないように会話を心がける。ロビーで別れた後、部屋に入り真っ先に紙袋を開ける。
「香水…?」
中には2種類の小さな香水ボトルと小さな紙も入っている。
「勉強熱心な君へ。2種類の香水を送るよ。今度、答え聞かせて。近くにいる人には気をつけて。また、会おう。」
——近くにいる人…?まさか…
ーコンコン—
「茜。迎えに来たよ。」
頂いた物を紙袋へしまいドアを開けた。
「お待たせ!どんな夕飯がいいかなー。立花君は何が食べたい?」
さっきの疑問が残ったまま、消化不良の様な感覚だった。
「そうだなぁ…まだ、日本食は恋しくないから、レストランみたいな所へ行こう!」
立花君と食事を終え、ビールバーに向かった。昨日、香原と行ったバーとは違い、馴染みやすい雰囲気のお店。
「茜ごめん!ビールが飲みたくて、来ちゃった!」
「ううん。大丈夫だよ!私も一杯飲もうかな!」
陽気な店内に各々自由にお酒を楽しんでいる人達。
「「1日目お疲れ様ー!」」
疲れた体と満腹の胃袋に注がれるビールはなんとも生き返るようだった。
「んまい!」
「美味しい!」
眼を合わせて、笑う2人。騒がしい店内に自然と距離が近くなる。
「俺ら、付き合ってるように見えるかな?」
「えぇ?!そんな事ないよ!」
思わずそんな事を口走ってしまう。
突然の立花君とキスして以降、気まずくなるのは避けたい。
「立花君、私は同僚でありたい。立花君の仕事ぶりはいつ見ても気持ちがいいし、信頼してる。私の仕事の良き理解者でいて欲しい。」
「うん。知ってる。今まで、茜に信用してもらう為に頑張ってきたし、茜の仕事ぶりは、時々無茶をする。だから、守りたいって思った。あの時、キスしたのは悪いと思ってる。でも、忘れたいとは思ってないよ。」
真っ直ぐとした視線。あの時と同じで、体が強張ってしまう。
「あ、あの時、やっぱり違うって思ったの。」
「手強いなぁ…。」
茜の頭をくしゃくしゃと撫でて一気にビールを飲み干した。茜もつられてグラスを空にする。
少し飲んだあとホテルへ戻るひと気の少ない通りを2人で歩く。
「立花君は、彼女いないの?」
「それを俺に聞くかよ。茜ちょっと酔ってるだろ。…いたけど、随分前に別れたよ。」
「酔ってないよ。なんで別れたの?」
どうやら別れた理由は、私が原因だったらしい。
私の仕事ぶりを心配した立花君は、連日帰宅が遅く、当時の彼女に振られてしまったようだった。そんなことを初めて聞いた茜は、申し訳ない気持ちで一杯になった。
「ごめんね…。彼女さん…。」
「いいんだよ。結局は彼女に次の男が出来て、俺は仕事を理由に茜と一緒に居たかったから、お互い様だったな。今も昔も茜が気になってたんだなぁ…。」
歩く足を急に止めて、腕を掴まれ抱きしめられる。
「こういうの、やめようよ…立花君。」
「こういうふうになるかもしれないって考えなかった?ここ最近フラれてばっかりだから、少しは責任感じてくれよ。触れたくて、仕方がない。」
抱きしめられた腕にチカラがこもり、掠れた声で話す。
「考えた事あったけど、同僚として信じてるから。」
「……っ。もう、同僚、同僚聞き飽きたよ!」
—ドンッ—
街灯がない少し暗い場所の壁に押しつけられる。
「立花君!ヤダって…!」
「どうせ俺は、何もしてこない男って思ってるんだろ?あの時の事忘れたのか?」
両足をこじ開けて、足で捕えられる。顎を掴まれキスをされそうになる。
「し、信じてるから!立花君は、いい人だもん!お願いだから、もうやめて…。」
涙が出てくる。それに気づいた立花は、ごめんと一言残して、フラフラと1人で歩き始めた。
——怖くて、手が震える…。香原さんがいう近くの人って立花君の事だったのかな。
「あれ?茜さん、どうしてこんなところにいるのかな?」
声がする方を振り返ると、香原が窓から手を振っている。
「…?!ちょっと待ってて、すぐ降りるから!」
かなり急いで降りてきたのだろう、足元はサンダルで、髪の毛は下ろしていて、会社にいた時よりもずっと若く見えた。
「なぁ、茜。中身なんだと思う?」
「うーん。何だろう。パリで有名なお菓子とか?」
「そんなに重くないから、かもな。しかし、男でも惚れるわ。茜、今日の夜、食事にいかない?」
「同性でもそう思うんだね!完璧すぎて、びっくりしちゃうくらいだね。食事…、行こうっか!立花くんの奢りで!」
「よっしゃ!んじゃ部屋まで迎えに行くから!」
なるべく、不自然にならないように会話を心がける。ロビーで別れた後、部屋に入り真っ先に紙袋を開ける。
「香水…?」
中には2種類の小さな香水ボトルと小さな紙も入っている。
「勉強熱心な君へ。2種類の香水を送るよ。今度、答え聞かせて。近くにいる人には気をつけて。また、会おう。」
——近くにいる人…?まさか…
ーコンコン—
「茜。迎えに来たよ。」
頂いた物を紙袋へしまいドアを開けた。
「お待たせ!どんな夕飯がいいかなー。立花君は何が食べたい?」
さっきの疑問が残ったまま、消化不良の様な感覚だった。
「そうだなぁ…まだ、日本食は恋しくないから、レストランみたいな所へ行こう!」
立花君と食事を終え、ビールバーに向かった。昨日、香原と行ったバーとは違い、馴染みやすい雰囲気のお店。
「茜ごめん!ビールが飲みたくて、来ちゃった!」
「ううん。大丈夫だよ!私も一杯飲もうかな!」
陽気な店内に各々自由にお酒を楽しんでいる人達。
「「1日目お疲れ様ー!」」
疲れた体と満腹の胃袋に注がれるビールはなんとも生き返るようだった。
「んまい!」
「美味しい!」
眼を合わせて、笑う2人。騒がしい店内に自然と距離が近くなる。
「俺ら、付き合ってるように見えるかな?」
「えぇ?!そんな事ないよ!」
思わずそんな事を口走ってしまう。
突然の立花君とキスして以降、気まずくなるのは避けたい。
「立花君、私は同僚でありたい。立花君の仕事ぶりはいつ見ても気持ちがいいし、信頼してる。私の仕事の良き理解者でいて欲しい。」
「うん。知ってる。今まで、茜に信用してもらう為に頑張ってきたし、茜の仕事ぶりは、時々無茶をする。だから、守りたいって思った。あの時、キスしたのは悪いと思ってる。でも、忘れたいとは思ってないよ。」
真っ直ぐとした視線。あの時と同じで、体が強張ってしまう。
「あ、あの時、やっぱり違うって思ったの。」
「手強いなぁ…。」
茜の頭をくしゃくしゃと撫でて一気にビールを飲み干した。茜もつられてグラスを空にする。
少し飲んだあとホテルへ戻るひと気の少ない通りを2人で歩く。
「立花君は、彼女いないの?」
「それを俺に聞くかよ。茜ちょっと酔ってるだろ。…いたけど、随分前に別れたよ。」
「酔ってないよ。なんで別れたの?」
どうやら別れた理由は、私が原因だったらしい。
私の仕事ぶりを心配した立花君は、連日帰宅が遅く、当時の彼女に振られてしまったようだった。そんなことを初めて聞いた茜は、申し訳ない気持ちで一杯になった。
「ごめんね…。彼女さん…。」
「いいんだよ。結局は彼女に次の男が出来て、俺は仕事を理由に茜と一緒に居たかったから、お互い様だったな。今も昔も茜が気になってたんだなぁ…。」
歩く足を急に止めて、腕を掴まれ抱きしめられる。
「こういうの、やめようよ…立花君。」
「こういうふうになるかもしれないって考えなかった?ここ最近フラれてばっかりだから、少しは責任感じてくれよ。触れたくて、仕方がない。」
抱きしめられた腕にチカラがこもり、掠れた声で話す。
「考えた事あったけど、同僚として信じてるから。」
「……っ。もう、同僚、同僚聞き飽きたよ!」
—ドンッ—
街灯がない少し暗い場所の壁に押しつけられる。
「立花君!ヤダって…!」
「どうせ俺は、何もしてこない男って思ってるんだろ?あの時の事忘れたのか?」
両足をこじ開けて、足で捕えられる。顎を掴まれキスをされそうになる。
「し、信じてるから!立花君は、いい人だもん!お願いだから、もうやめて…。」
涙が出てくる。それに気づいた立花は、ごめんと一言残して、フラフラと1人で歩き始めた。
——怖くて、手が震える…。香原さんがいう近くの人って立花君の事だったのかな。
「あれ?茜さん、どうしてこんなところにいるのかな?」
声がする方を振り返ると、香原が窓から手を振っている。
「…?!ちょっと待ってて、すぐ降りるから!」
かなり急いで降りてきたのだろう、足元はサンダルで、髪の毛は下ろしていて、会社にいた時よりもずっと若く見えた。
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