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8.再会 その3
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用意された服は、上品なレースが胸元から背中にかけてふんだんにあしらわれてる、ミルキーホワイトのイブニングドレス。
「この色のドレス…。」
「うん。よく似合ってる。茜さんの香りのイメージだよ。」
「この色…。」
茜は鞄からハンカチを取り出し、彼へ見せる。
「そのハンカチ。どこで?」
「20年くらい前、公園で怪我をしたときに小さな男の子が優しさでこのハンカチをくれたんです。返したかったんですけど、名前も知らなくて…コレを持っていれば、また会える気がして。お守りみたいに持ち歩いてるんです。変な話ですけど、その男の子の香りが忘れられなくて…この香りもその時をイメージして作っているんですよ。この色すごい偶然…。」
彼は突然、茜を抱き寄せる。心臓の音が聞こえてしまうほどの距離。
茜の耳元で囁く。
「偶然じゃないかもね。」
「…え?」
「それ、きっと俺だよ。やっと見つけた。もう、二度と逢えないと思ってた。」
抱きしめる腕に力がこもる。
「香原さんが、あの時の男の子…?」
ダークブランで少し癖のある髪の毛。身長もこんなに高くなり、雰囲気も男性へと成長しているなんて、気づくはずもない。
「そうみたいだ。茜さんと俺を香りが導いてくれたんだね。」
ストレートにそんな事を言われると恥ずかしさと嬉しさが入り混じる。
香りの真相を聞ける事、あの時の男の子に逢えた事は、素直に嬉しい。
しかし、茜が今まで頑張ってきた事がここで終わってしまう様な切ない気持ちにもなった。
「どうしよう…。私のしてきた事、香原さんへ聞いたらもう…終わっちゃいます…。」
「そんな事ないよ。おれはあの香水に付いてはよく知らないんだ。でも…嬉しくて、帰したくない。ねぇ。帰っちゃうの?」
甘い声で囁く。
「き、今日は帰ります…明日仕事なので。」
「今日は、ね。まぁいいか。……送るよ。」
パリへ滞在している間泊まるホテルの前へ到着。
「明日から仕事、頑張って。俺も俄然やる気が出てきた。」
「美味しいお食事とこのドレス、ありがとうございます。……昔、名前も知らなかった男の子、ありがとう。また、会えたね。」
茜は、子どもを撫でる様に彼の頭をポンポンと触る。自然と笑顔が溢れる。
「ちょっと、茜さん。…可愛すぎ。でも、もう俺子どもじゃないよ。」
少し視線を逸らし、拗ねているようだった。
「こんなにかっこよくなってるなんて、想像してなかったから、驚きましたけどね。」
「あーもう!…俺を煽ってるの?」
頭を撫でていた手を掴まれ、指を絡め、キスされる。
「んっ…。」
「ほら、もっと口開けて。キスできないでしょ。」
「はぁ…っんん。」
——気持ちいいキス…。名残惜しいな。
「んっ。上手に出来たね。…そんな物足りなそうな顔、しないで。…この続きはまた今度ね。」
少しでもそんな考えに至った自分が、快楽に貪欲で浅ましく思えた。
「この色のドレス…。」
「うん。よく似合ってる。茜さんの香りのイメージだよ。」
「この色…。」
茜は鞄からハンカチを取り出し、彼へ見せる。
「そのハンカチ。どこで?」
「20年くらい前、公園で怪我をしたときに小さな男の子が優しさでこのハンカチをくれたんです。返したかったんですけど、名前も知らなくて…コレを持っていれば、また会える気がして。お守りみたいに持ち歩いてるんです。変な話ですけど、その男の子の香りが忘れられなくて…この香りもその時をイメージして作っているんですよ。この色すごい偶然…。」
彼は突然、茜を抱き寄せる。心臓の音が聞こえてしまうほどの距離。
茜の耳元で囁く。
「偶然じゃないかもね。」
「…え?」
「それ、きっと俺だよ。やっと見つけた。もう、二度と逢えないと思ってた。」
抱きしめる腕に力がこもる。
「香原さんが、あの時の男の子…?」
ダークブランで少し癖のある髪の毛。身長もこんなに高くなり、雰囲気も男性へと成長しているなんて、気づくはずもない。
「そうみたいだ。茜さんと俺を香りが導いてくれたんだね。」
ストレートにそんな事を言われると恥ずかしさと嬉しさが入り混じる。
香りの真相を聞ける事、あの時の男の子に逢えた事は、素直に嬉しい。
しかし、茜が今まで頑張ってきた事がここで終わってしまう様な切ない気持ちにもなった。
「どうしよう…。私のしてきた事、香原さんへ聞いたらもう…終わっちゃいます…。」
「そんな事ないよ。おれはあの香水に付いてはよく知らないんだ。でも…嬉しくて、帰したくない。ねぇ。帰っちゃうの?」
甘い声で囁く。
「き、今日は帰ります…明日仕事なので。」
「今日は、ね。まぁいいか。……送るよ。」
パリへ滞在している間泊まるホテルの前へ到着。
「明日から仕事、頑張って。俺も俄然やる気が出てきた。」
「美味しいお食事とこのドレス、ありがとうございます。……昔、名前も知らなかった男の子、ありがとう。また、会えたね。」
茜は、子どもを撫でる様に彼の頭をポンポンと触る。自然と笑顔が溢れる。
「ちょっと、茜さん。…可愛すぎ。でも、もう俺子どもじゃないよ。」
少し視線を逸らし、拗ねているようだった。
「こんなにかっこよくなってるなんて、想像してなかったから、驚きましたけどね。」
「あーもう!…俺を煽ってるの?」
頭を撫でていた手を掴まれ、指を絡め、キスされる。
「んっ…。」
「ほら、もっと口開けて。キスできないでしょ。」
「はぁ…っんん。」
——気持ちいいキス…。名残惜しいな。
「んっ。上手に出来たね。…そんな物足りなそうな顔、しないで。…この続きはまた今度ね。」
少しでもそんな考えに至った自分が、快楽に貪欲で浅ましく思えた。
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